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終末世界、ふたりきりスローライフ  作者: 海月崎まつり
5/10

05 ガチャを回すたった一つの理由

この滅びかけた世界にだって、あるところには娯楽があるのだ。例えばソーシャルゲーム、これがなかなかハマる代物で、ボクは最近ゆーさんに黙ってソーシャルゲームにがっつり貢いでいる。

正確にいうと、ソシャゲに貢いでいるというよりは、ガチャに貢いでいるんだけれども。

古いスマートフォンという小型端末を拾ってきてちょっと改造してゲームにイン。きらびやかな演出と、魅力的なキャラクターが織りなす物語。ボクのハマっているゲームは武器の擬人化ゲーで、武器がきらきらした美少女や、美青年として画面の向こうから語りかけてくる。面白いし実益もある、最高だ。


ただし、ゆーさんには秘密だ。この趣味はちょっとゆーさんには言いづらいのだ、ほら、ちょっとこのソシャゲの仕様とかゆーさん嫌いかもしれないし。武器の擬人化とか顔をしかめるかもだし。

と思っていたら、野営の準備をしていたゆーさんがボクのところまでやってきて、スマホを覗き込んできた。

「最近いつもその……すまほ?とかいう機械ばっかり見てるけど、リリは何やってるの」

ぱちぱちと焚き火に照らされているゆーさんは怪訝そうだ。

「えっ、あー……情報の収集ですよ!」

「そうなの?それに最近、外に出ていくと帰りも遅いし……」

「ちょっと色々事情が……」

ゆーさんは顔をしかめて後ろを向いた。よし、これでまたソシャゲができるぞ。

と思ったら、ぱっと振り返って手から取り上げられてしまう。画面に映っているゆーさん似の美人がにっこりと微笑んでいる図をばっちり見られてしまった。

「あっあっ、こ、これはその……」

「ゲーム?」

「…………そうです……」

「最近、リリは好きなお菓子も買ってないし、何に稼ぎを使っているのかと思ったら……これ?」

「そうです……」

「……ゲームくらいなら、好きにすれば」


ボクは少しだけ息を止めて、吐いた。ちょっと口元が笑ってしまう。そうだよな、これはただのゲーム。ゆーさんにとっては、ただのゲーム。


「娯楽の少ない世界だから。ゲームにはメリットもあるし……メンタルにいいらしいから」

「そうですよね!うん、……実益もありますし」

実益、という言葉にゆーさんはちょっと首を捻ったが、ボクが美少女キャラクターを見せて笑顔に癒されるということを主張すると、複雑そうにしながらも黙った。





深夜。焚き火の番をしながら、ボクはまたガチャを回す。ガチャの代金は実際のお金で、そのお金はとある密輸組織のところに飛んでいく。

「やった、SSR!」

きらきらした虹回転から飛び出してきたのは、——巨大な対人ライフル、の擬人化の女の子。ニコニコとボクに向かって微笑んでいるその子に向かって、手を伸ばす。

ボクのスマホに繋がっている魔導回路、そこに送信されてきた武器の構造データをその場で実体化。

手にずっしりと金属の重みを感じる。魔力で編まれた巨大な武器をくるくると回して、手触りを確かめる。


徐に後ろに向かって撃つ。人の肉が潰れる音がした。

魔力で編まれているので、全く音がしない。サイレンサーがいらない、素晴らしい。

獲物が断末魔を上げる。見知らぬ男だ。永遠にさようなら。

「……ッ、がっ、ぁあ……!?どうして、分かっ……」

「昼間、街でボクたちをジロジロ見てたよね、わかるさ。伊達にこの世界で旅しちゃいない。ゆーさんは気づかないかもしれないけど、ボクは違うよ」

体の半分が吹っ飛んだ男の、後に残った半身が倒れた。赤い血が夜の草地を汚していく。テントの中で眠っているであろうゆーさんは何も気づかない。


ゆーさんは気付いてないかもしれないけど、この滅びかけた世界でボクたちのような子供がのんびり旅ができるわけがないのだ。物資は常に足りず、魔力が高い人間は人身売買だってある。常に他人から襲われる可能性は警戒すべきだ。

だからボクは、禁じられた武器のデータをガチャに見せかけて世界各地にばらまいているソシャゲに、度々お世話になる。

前にネクロノミコンとか当てた時にはびっくりしてしまったけれど、いつか使えるだろうと思って即死魔法とかを温存している。


編んだ武器を魔力に戻すと、夜の静寂が戻ってくる。男の死体は、簡単に火で燃やし尽くしておいた。今は少し焦げ臭いが、朝になる頃までには臭いも風がさらってくれるだろう。

ガチャ画面に向き直る。


「今日のSSRピックアップは何かなー……」


ゲームの体裁を取って禁じられた武器の構造データばかりを排出するガチャ画面、眺めているだけでわくわくしてくるし、楽しい。


SSRの数をもっと充実させたら、ドラゴンが来ようと、魔王が来ようと、のんびりゆーさんと旅ができるぐらいまでは強くなれるだろうか。

ゆーさんと安全に、楽しく旅が続けられるということが、ボクにとっては最高のメリットなのだ。


ほら、実益、ちゃんとあるでしょう?



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