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終末世界、ふたりきりスローライフ  作者: 海月崎まつり
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01 おとぎ話二束三文

「ゆーさんは本当にボクのこと好きなんですか?」


真っ白な氷の上に空いた小さな穴に向かって釣り針を垂らしながら、リリが言った。もふもふの赤いコートを着て、手袋をはめたリリはとてもあったかそうで、でも鼻の頭だけがうっすら赤いので寒いんだなと分かる。

わたしはリリと同じように、氷に空いた穴に釣り糸を垂らしながら目を伏せた。


「……分からない」

「分からないって、そんなぁ」

「わたしが君を好きでも嫌いでも、わたしたちの行動が何か変わるわけじゃないから。こんなに生物の減った世界では、わたしたちは寄り添って生きるしかない」

「まあそうですけどね……」


針の先に魚はかからない。糸は微動だにしない。当たり前だ。生物の八割が滅びたこの世界で、釣り糸に引っかかってくる魚なんてほとんどいないだろう。それでもわたしたちは氷の上で釣り糸を垂らすし、銀色の釣り針は何かを釣り上げようと冷えたサファイアの海の中をふわふわ漂う。何か金目のものがかからないかと釣りをしているのだ、わたしたちは。

この生命の少なくなった世界には今も確かに人間が生き残っていて、海から採れる漂流物なんかは結構金になったりするのだ。


そう、世界は数年前、戦争で滅んでいた。

そして、戦争で滅んだ世界には、変な生き物が大量発生した。よくある話だ。二束三文で古本屋でまとめて売ってる本みたいな話である。それは確かにわたしたちにとっては現実なので、わたしたちもひょっとしたら物語の中の住人なのかもしれない。

そんなことを考えていたら、リリがいつの間にかすぐそばまでやってきていた。

手に、釣り上げたものをぶら下げている。こんな獲物が手に入るなんて今日は運がいいかもしれない。


「ゆーさん」

「何」


リリはにこにこした。


「なんでもひとつ願いが叶うならボク、ゆーさんがボクのこと大好きになって、依存しまくって、闇堕ちするぐらいヤンデレになってくれないかなって思うんですけど。そのために魔法のランプ使っちゃおうかなってぐらい」

「やめて」

「じゃあゆーさんにあげましょうか?」

「ランプを?」

「そうです。何を願いますか?」

「……お腹が減ったから、ステーキが食べたい」

「即物的ぃ。そういうとこ好きです」

「ありがとう」

「告白を流すのやめてくださーい!」


リリの手元で、不意に金色がきらきらと爆ぜた。

青い煙がリリの手にまとわりついてから、ふわっと白い地面をなぞって消える。煙の消えた後には、おいしそうな湯気をたてるステーキが2皿。


リリが、氷の間から釣り上げた錆のついた魔法のランプは、それきり沈黙した。願い事を使い果たしたらしい。


数年前に、魔法が飛び交う大国同士の戦争で滅びた世界。

そこに大量発生した半端なおとぎばなしの残骸をわたしは取り上げて、容赦なくぺしゃんこにする。この世界には片方だけ消えるガラスの靴だとか、つやつやに美しい毒入り自生林檎だとか、変なものが大量発生している。全て数年前、魔力をぶつけあって大国同士が戦争をしまくったせいだ。

わたしは潰したランプの成れの果てを見る。金色のぺったりと潰れた金属もどきは街に持っていったら幾らで売れるだろうか。

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