2020/4/1:さらば安寧、されど安寧。
「好きです!!付き合ってください!!!!」
「へ?」
春風に煽られ舞い散る花びらは、春の訪れを告げた。
「ええええええええーーー!!!!!」
驚きの奇声を上げたのは、告白された冴えない男子高校生じゃ無く春花だった。
「さ、さっさ、さく!!あんたいつの間に知り合ったの?!!」
春花同様、ビックリした顔をしてこちらを見る拓人。
そんな目で見るな。俺が聞きたい。
「し、知らん!」
嘘じゃない。
こんな綺麗なご令嬢、会ったことも喋ったことも無い。
「やったじゃんか佐久!!」
拓人が笑顔を向けこちらに歩いてきた。
「こんな美少女そうそう居ないぜ。
さっきの集会体育館で見たんだが、彼女は恐らく学年で一位や二位の美少女だと思うぜ」
「相変わらず学年の女子把握するの早すぎだろタク」
「何を言う。人生において目標とは最初に立てる物だ」
名言っぽいことをサラッと言って勘違いしそうになるけど、俺は騙されない。
お前のは「気になった子は、最初に目星を付けておく」ハイエナ思考。
ていうかこの状況何?!マジで嫌なんだが!!
大勢の前で美少女を目の前に、頭がショートする佐久。
「行けよ佐久」
拓人に背を押される。
周視の中、前に躍り出る俺。
おい、親指立ててグッドポーズするの辞めろ。
くだらないことなど考えずに少女の気持ちを受け取ってこいと前に出させる拓人。
嫌だな。違和感がすんごい。
「あ、あの…それで」
もじもじしながら頬を赤らめ、上向きで俺を見てくる少女。
少し見ると恥ずかしくなったのか、彼女は目線をそらす。
この微かな熱にめまいがする。
俺もつられそうに顔を赤らめてしまう。
彼女に犯されつつ、破られそうになる俺の自意識は歯がゆい感情に勢いよく警鐘を鳴らす。
「あの…」
「はい!!」
「ええ、とその…、探したんだけど、正直告白されるいわれが見つからない」
「そう、ですよね」
シュンと顔が下がる少女。
「おい佐久!!」
何考えてるんだ、早まるなと拓人の声が聞こえる。
同様に周りの視線が痛い。
「告白だってよ!」
「え!!凄い美人!!相手はあれ?」
集まり出す人々。
マズイ!なんだこの状況。
浮かぶ解答で、この場合の対応が一つしか見当たらないことに頭を抱える佐久。
「最悪だ。」
見ろ。
周囲の目線が実に痛い。
地味な奴に告白する美少女。
この状況だけでもかなりエグいのに、俺が振ったらどうなる?
考えるまでもなく即刻死刑。
振ればいい物の振れないこの状況。
仕方ない…。
俺は、誘導されるようになめらかに一つの解にたどり着く。
「友達からでよければよろしくお願いします」
目の前の少女の顔がパーーっと明るくなる。
「はい!」
周りから拍手喝采が巻き起こる。
少し涙を浮かべ、笑う少女。
対照的に少年の顔は盛大に引き攣っている。
くそ…平穏な非モテ生活を誰よりも望んでいた筈なのにどうしてこうなった。
周囲に合わせなければいけない人間関係。
他人が何を望むかで決めなければいけない選択。
あの時と何ら変わっていないのかもしれない。
俺が陰キャで非モテな比茂手佐久だからこそ変えられない現実。
この状況に押し入られた時点で、彼女と俺のお友達からよろしく道筋は確定していたのだ。
変えられ、戻れなくなる俺の安寧の日々。
ああ^、言いたくない。
しかし、このどうしようもないもやもや感に結論を付けるなら一つしか無い。
だから俺はあえて言おう。
――――恋愛など俺には必要ないと。
睨み付けた俺の目には無慈悲なほどに美しい笑顔が浮かぶ。
美少女の笑みだ。
実にかわいらしく、実に愛らしく、実に穢らわしい。
盛大に告白され、盛大に注目を浴びた俺の高校生活はあらぬ方向へ進み始めた。
遅くなってすみませんした―――!!(ダイビング土下座)
よかったらブクマよろしくお願いします。励みになります!!
※遅くなりました!訂正しました---!!