表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/84

稲作への挑戦 【その5】

大変、遅くなりました。

本日、一話の投稿です。

稲作で大切な事の一つが病気の対策だ。この時代では凶作の原因でもある。

この時代、朝鮮王国では赤灼けや枯れを「蝿点、蝿尿」と呼び病気の症状として知られていた。

前世で言うところのイモチ病や胡麻葉枯病の事だろう。


俺は対策としての薬剤は知っているが当然にこの時代には存在しない。

だが、イモチ病などの細菌やカビには温湯消毒が有効だ。

問題は温度管理を如何にして実施するかだ。


物質は温度によって変化する。もっとも身近でわかりやすいのが水だ。

水は0℃で個体になり100℃で気体になる。

しかし、水の沸点では温度が高すぎる。

温湯消毒は60℃で10分、58℃なら15分だ。

これ以上、温度を上げたり時間が長くなると発芽が悪くなる。


温湯消毒には温度管理をする道具、温度計が必要だがこの世界ではまだ誕生していない。

そこで俺はソン・ヨナが零した油を見て、油……獣脂を使う事を思いつた。

油に限らず、物質は融点と沸点を持っている。その中でなぜ、獣脂か。


答えは簡単だ。豚脂で59℃弱、牛脂で61℃オーバー。これが理由だ。

この二つを使い分けることによって温度管理が可能となる。

さて、何とか課題の解決が見えてきた。


「ソン・ヨナ、蝋燭は手に入るか」

「え??臨海君樣、手に入るも何も今も使っておられますよね」

「あ……内殿ネジョンで使っている様な蝋燭では無く獣脂、豚や牛の油を使った物だ」

「獣脂……燃やすとキツイ臭いのする蝋燭ですよね」


王宮や両班の邸宅ではすでに植物性の蝋燭を使っている。

逆に庶民は蝋燭は使わずに油皿を使う。

獣脂蝋燭は少なくなってはいるが、作ってはいるはずだ。


「その臭い蝋燭を手に入れて欲しい、豚と牛両方だ」

「分かりました、手配致します」

「頼む」

「心得ております、後、それらの農具もですよね」

「ああ」


ソン・ヨナは俺の描いた図面の墨が乾いているのを確認すると、店の者に何かを指示している。

鍛冶屋に道具の依頼をするのだろう。

そんな、ソン・ヨナの働く様を見ながら俺は先ほどの出来事を思い返していた。

チョヌと言う小作人……


「臨海君様、少し宜しいでしょうか」


いつの間にか近付いていたソン・ヨナが声をかけてくる。


「構わん、どうした」

「先程の小作人ですが……」

「気になるか」

「……はい、臨海君様に類が及ばないかと」


その点は俺も気にはなっている。奴婢ノビの逃亡は犯罪だ。

そして、地主と小作人の関係であるならば何らかの弊害が起こり得る。

確かにあのタプの地主は氷雨商団ヨナ・サンダンだが俺は頻繁に顔を出すつもりだ。

そこでのリスクは御免被りたいのだが……


その時、パク・シルが氷雨商団ヨナ・サンダンへ帰ってきた。

俺が頼んだ用件を早々に片付けてきたようだ。


「臨海君様、ただいま戻りました」

「ご苦労だった。首尾はどうだった」

「……逃亡奴婢ノビにあの小作人らしい者はいないようです」

「そうか……」


俺は先程、氷雨商団ヨナ・サンダンに帰るとパク・シルに用事を頼んだ。

掌隷院チャンニェウォンへ行って逃亡奴婢ノビの情報を仕入れてきて貰ったのだ。

結果、チョヌらしい逃亡奴婢ノビはいないと言う事だ。


「……いかが致しましょう。新しいタプを探しましょうか」

「いや、それには及ばぬ」


ソン・ヨナが気遣ってくれるが問題無い。

事実、あのタプは場所も良いし何より俺はあのチョヌと言う小作人に興味が湧いた。

俺は当面、付き合ってみる事に決めた。




10日ほどして、「はねくり備中」が出来上がって来た。

中々に腕のいい鍛冶屋だったらしく、出来上がりは満足の行くものだった。

早速、他の道具とともに届けに行く事にした。ついでに使い方もレクチャーする必要がある。


パク・シルに乗せてもらい俺は例の村に着いた。

そして、氷雨商団ヨナ・サンダンタプを見て、驚かされた。

10ユイあるタプの内の一つが綺麗に耕起されていたのである。

そのタプではチョヌが木製の鋤で耕起作業を続けている。

俺は思わず声をかけた。


「……このタプはお前一人で起こしたのか」


こちらに気付いたチョヌが作業の手を止めた。


「ソン・ジン様か……ああ、俺が起こした。日数が少ないので早い目にと思ってな」


この男は信用に足る。俺はこの時に確信した。

命じられるまでも無く、仕事量を把握して作業を始める。

言うのは簡単だが、実行は難しい。

それをチョヌは実行に移した。


「今日は約束した道具を持ってきた。使って見てくれ」


俺はそう言うと「はねくり備中」の使い方をレクチャーする。

チョヌの顔色が変わった。


「こんなものがあるのか……」


理解力が高いのか俺が使ってみると、それを見てすぐに使い方が理解できたようだ。


「軽い、こんなに軽いのか」

「これで作業が捗るな」

「間違い無い、作業は捗る」


俺はもう一人の小作人にも「はねくり備中」を貸し与えて使い方をレクチャーした。

こちらは予想通りの反応で普通の小作人だ。

チョヌが飛び抜けているのだ。これで第一段階はクリアだ。


本来なら肥料を加えて土作りを行いたいのだが、肝心の肥料が無い。

下肥も緑肥も腐葉土も無い。

俺は次は肥料の生産だと決めて、帰る事にした。

さて……面白くなってきた。

ここまでお読みいただき、感謝いたします。

頂けました、ご評価、ご感想そしてブックマークが

励みとなっております。


今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ