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稲作への挑戦

何とか「年末」に間に合いました。

再開させて頂きます。

 俺は10歳になった。10歳を目前にする頃から王世子ワンセジャ問題が五月蝿くなって来た。

親父……国王宣祖ソンジョはまだまだ若いが、周りが王世子ワンセジャが必要だと言うのだ。


何よりも王后ワンフ様にお子が無いのが大きい。

まあ、三十歳になっていないのでお子が生まれる可能性はある。

しかし、お身体が弱い事もあって前世ではお子が無かった。

今世でも期待は出来ないだろう。


俺が臨海君イメグンの身体に宿った頃は仁嬪インビン信城君シンソングン王世子ワンセジャにとかなり運動していた。親父……宣祖ソンジョもそのつもりだったようだ。

事実、前世ではチョン・チョルが光海君カンヘグン冊封チャッポンを建議して左遷され配流された。

そんな曰く付きの王世子ワンセジャ選びだが現世では俺が先頭を走っている。


ライバルは信城君シンソングンだが前世と違い、奴のアドバンテージは無いに等しい。母親、仁嬪インビンへの寵愛は健在だが、親父……宣祖ソンジョは前世以上に王権を回復している。そのお陰でストレスが少ないのか、治世が上手く行っているのか……仁嬪(インビン)の元へ通うにしてもケジメをしっかりと付けているようだ。

前世では仁嬪インビンへの寵愛がそのまま、信城君シンソングンへの愛情になっていたようだが今世は違う。

親父……宣祖ソンジョのお気に入りは俺、臨海君イメグンだ。

そして、宮廷で俺を認めてくれている有力者がイ・イとチョン・チョルだ。

特に人徳者であり、派閥争いの仲裁役でもあるイ・イの支持を得ているのが大きい。


この時代、士林サリムと呼ばれる官僚達は組織の常で派閥に分かれている。

王后ワンフ様の弟、シム・ウィギョム(沈義謙)シム・チョンギョム(沈忠謙)は西人セインと呼ばれる派閥で、西人セインに対する派閥は東人トインと呼ばれる連中だ。

東人トインの中心は仁嬪インビンの息がかかったキム・ヒョンウォン(金孝元)。

当然に支持するのは信城君シンソングン。しかし、東人トインの勢力は落ちている。


仁嬪インビンの一族が財産の殆どを失った事が大きく関係している。

まあ、その原因は俺だけどね。



王宮と名の付く所で生きて行くだけなら財産が無くても問題は少ない。

しかし、王世子ワンセジャレースを勝ち抜こうとすれば、それ相応の力がいる。


勝ち抜くには、人脈、金脈が必要だ。

俺が臨海君イメグンの身体の宿った頃は仁嬪インビンの権勢は凄まじかった。

鬼神付き騒ぎやなんちゃって科挙で俺が潰れないと分かると刺客まで差し向けて来やがった。

だが、結果オーライ。


カウンターで仁嬪インビンと一族の財産を殆ど奪いとってやった。

「金の切れ目は縁の切れ目」とはよく言ったもので、仁嬪インビンの権勢は瞬く間に落ちた。

親父……国王宣祖ソンジョの寵愛はまだ十分に掴んでいるものの、見るからに力は落ちている。

それが証拠にあれ以来、何も仕掛けては来なくなった。


俺は仁嬪インビン一族から()()()()財産を元に資産形成に励んでいる。

主に「低利貸し」と言う形で漢陽ハニョンに金を流している。

朝鮮王国は貨幣経済が発展していないので王都たる漢陽ハニョンでも物々交換が多い。


そこへ金を流し込む事で経済の循環を図ろうとした。

最初は細々としたものだったが、商団サンダンへの貸付が広がり出して弾みがついた。

商売人達が俺から借りた金を資金として商売を広げて行ったからだ。

元々経済が滞留していた所に弾みがつくと経済の成長は飛躍的に伸びる。

親父……宣祖ソンジョ()()()()を気にするぐらいにはね。


前世では朝鮮王国のこの時期に経済的発展は起こっていない。むしろ、停滞気味であったはずだ。それを俺が変えた。すでに歴史は変わり始めている。

今はまだ、湖に小石を投げた程度の波紋だが波紋は必ず広がって行く。

小さな波紋はやがて大きなうねりになるはずだ。


俺はソン・ヨナが増やしてくれている資産を使って次のステップに進む事にした。

この国の弱点の一つ食料問題だ。農業改革無くして、国は強くなれない。


 俺は控えている事があった。それは、俺の持つ「知識」を使う事だ。

自身の身に降りかかる事柄なら、身を守るために控える気なんてない。


しかし、俺の知識にある技術……所謂「オーバーテクノロジー」を使うを躊躇していた。

余りに高度な技術は時として使う人間が翻弄されてしまう事がある。

例えば、原子力技術。

人類には過ぎた技術であった事は間違い無い。結果、前世では多くの悲劇を生み出した。

今でも「人類全滅」の危機と隣り合わせで生きているのだろう。

きっと、後世の誰かが見つけ出すだろうが俺は「E=mc2」を封印する。


農業は技術の塊だ。

見た目は「勘と経験」のようだがその実、人類の歴史は農業技術の歴史に等しい。


何が言いたいか……俺は農業技術を開示することに躊躇はしない。

まあ、遺伝子操作には手を出す事は無いが。技術的にも無理だが。


何をするか。まず、稲作の技術改革だ。

この時代、食料は世界的に不足している。戦争の原因の多くは食料絡みだ。


この朝鮮でも食料不足は変わらない。

生産量と消費量がほぼ同数の状態になっている。

当然に「平年並み」の作柄の場合である。


朝鮮の主食でもある米は単位当たり収量が多く連作が可能な作物だ。

米作は日本では、江戸期から明治、昭和にかけて大きく技術が進歩した。

それに合わせて、単位当たり収量も10倍近くに躍進したと言われている。


当然に工業化によらなければ、再現不可能な技術も多い。

内燃機関の成長によるものもそれに含まれる。


俺は工業化の恩恵によるものは保留として、

工業化の恩恵が無くても再現可能な「営農技術」を導入する事にした。

「塩水選」「育苗」「正田法」などだ。


水稲は夏至を過ぎ、陽が短くなり始めると穂を付けようとする。

この為、分げつの終息が早まり茎の数が少なくなってしまう。

この時代、単位当たり収量の少ない原因の一つだ。


この点を改良して、俺は「単位当たり収量10倍」を実現しようと考えた。














ここまでお読み頂き感謝いたします。

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今後とも宜しくお願い致します。

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