臨海君(イメグン)流ケジメの付け方 【その 3】
本日4話中、3話目になります
キム・ハンウは自分が尋問所を下から見上げる事になるとは思っても見なかった。
妻の家門のおかげもあって娘が仁嬪まで出世した。生まれるのが少々遅かった為に孫は王世子には柵封されてはいない。しかし国王陛下は孫を大層気に入っている。もし王世子の柵封を受けたら娘は国母になる。
そんな大事な時に事もあろうか甥のキム・トンスがとんでも無い問題を引き起こしてくれた。国王だけではなく開祖、太祖にまで不敬な発言をして証拠まで取られてしまった。
相手が臨海君ではなく他の王子に付く両班であったら間違いなく三族全員が処刑されていただろう。臨海君は幾ら神童のように頭が良くても所詮は子供、考えが甘い。
財産を差し出せば見逃してやると言われ最初は全て差し出すつもりだった。
しかし、息子に諭されて漢陽にあるもの以外は差し出さなかった。
しかし、今日、捕盗大将がやって来て臨海君からだと言われた一覧をみて、正直背筋が凍るかと思った。一族の者を呼んで確認させたが自身が漢陽以外に持っている財産以外全てが記されてあった。息子もこれにはビックリした様だ。
そして急に弱気になって全て差し出さないと何をされるか分からないと言い出し、一覧からは抜かれてあった人参畑と妓房の権利証も合わせて差し出した。
見上げる位置に座っている、8歳の王子が途轍もなく恐ろしいモノに感じる。両目を閉じて何かを考えている様に見えているがいきなり剣を抜いて首をはねられるかもしれない。
この王子と争ってはいけない、キム・ハンウは只々それだけを考えていた。娘でもある仁嬪は孫を王世子にするつもりなのかも知れないが相手が悪い。下手に逆らえば殺されるよりも酷い結果を招きかねない。
キム・ハンウの勘は臨海君と言う王子をその様に評価していた。
いかんいかん!
目をつぶって考えている振りをしていたら寝てしまいそうになった。中身は別でも身体はまだ8歳だ、そろそろ眠気が増して来た。早く終わらせて帰って寝よう。
「キム・トンスに問う。三族の資産を全て国家の為に投げ出す。ついては余に預かって欲しいと言うのは偽りであったのか」
いきなり自分に振られて豚は額を地面に擦り付け豚語でしゃべっている。
最前列にいたキム・ハンウもキム・トンスが問われるとは思っていなかったのか言葉に詰まっている。
「キム・トンスよ、王族を愚弄するとは「不敬罪」の罪状を更に増やしたいのか。心して答えよ!」
「滅相も御座いません、臨海君様。どうか、お許し下さい!漏れ落ちが出てしまったのは偏にこのキム・ハンウの責。どうか私を罰して下さい!」
豚語を聞くよりかはましだけど、またそれかよ……いや待てよ。
いいアイデアを思いついた。
「大監、その覚悟や良し。分かった。捕盗大将よ、大監の首を跳ねよ」
キム一族全員に緊張が走ったのが分かった。……どこまで猿芝居が持つかな、じいさん。
捕盗大将が躊躇しているのが分かる。仮にも仁嬪の実父だ、斬首を実行した日には後からどんな災いが来るか分からない。そら、戸惑うわな。じゃ、こっちの役者で芝居を進めるぜ。
「パク・シル、捕盗大将は首の落とし方を忘れたようだ。お前が見本を見せてやれ」
「御意」
パク・シルは同田貫の鯉口を切って刀を抜き去った。
さすがパク・シルだ、とっさのアドリブにも付いて来てくれる。
パク・シルがキム・ハンウへ向かって一歩、足を進めるとキム・ハンウは頭をあげ、腰を抜かし後ずさり始めた。
「お……お許しを……臨海君様、どうかお許しを!」
なんだもう終わりか面白くない。せめて髷落とされるまで我慢しろよ。
俺は片手をあげてパク・シルを制する。パク・シルは刀を背にして跪く。
じいさん股ぐらから湯気が上がってるぜ、着替えは持って来たか?
「大監、許せ。余はまだ子供でな、言葉の意味通りにしか理解できぬ。「助けて欲しい」なら先にそのように申してくれ、良いな」
じいさんが頭をカクカクさせて頷いている。さて仕上げにかかるか。
「大監、大監は余の義母君たる仁嬪様のお父上。余にとっては義祖父と同じ。どうだ、そこの資産一切を大監が預かってくれるぬか。子供の余が預かるより余程、国家の為に役立ててくれるであろう。どうだ大監、この通り余からお願いする」
一瞬惚けていたじいさん……キム・ハンウがまたカクカクと頷いた。ハイ、じゃよろしく。
漢陽以外の資産なんて監理するだけ手間だから丁度よかった。
後は毎年、帳簿を出させて儲けを国庫に入れさせれば誰も文句を言わないだろう。
朝鮮王国は貧しいんだ。しっかり納めてくれよ。キム・ハンウに誓約書を書かせて今夜はお開きとなった。早く帰って寝よ。
ソン・ヨナは餅屋が閉まったとブチブチと言ってるし……餅屋は明日もやってるよ。
文句を言うな。
儂や仁嬪様はなんと言う恐ろしい者を敵に回してしまったのだ。臨海君が見開いた目を見た時に底知れぬ恐怖を感じた。あれは断じて子供の目などではない。
政争に長けた官僚や腕の立つ刺客の目とも違う。比べ物に為らぬ程に恐ろしい目をしている。儂はその恐ろしさに負けて資産全てを差し出すよりも厳しい誓約書を書いてしまった。漢陽以外の資産を全て管理し儲けは国に差し出す内容だ。
我が一族はこれで末代まで国の財産管理人に成り下がった。いやそれ以下だ。
管理に失敗したら負債は全て我らが負う事になる……仁嬪様になんと言えば良いのだ。
ここまでお読み頂き感謝致します。
頂いた評価、ブックマークが大変励みになっています。
今後ともよろしくお願い致します。




