臨海君(イメグン)流ケジメの付け方 【その 2】
本日2話目となります。
そんな事を考えながら三人で歩いて捕盗庁についた。普通宮殿に住んでいる王族がテクテク歩いて役所へ行く事はまずない。俺達を最初見た門番は怪訝な顔をしたがパク・シルを見るなり門番の一人が中へ走って行った。
程なく捕盗大将と以前に見たビヤ樽従事官……名前は記憶にない……が走って来た。
俺達三人は捕盗庁の一番良い部屋に通された。若い茶母が高価そうな茶器に高級な花茶を入れて持って来た。お茶請けには薬菓が付いている。正直、凄い歓待を受けている気分だ。俺は薬菓と皿の間に銀両が並んでいないか確認して見たくなった。
パク・シルは静かに花茶に口を付けソン・ヨナは薬菓に目が行っている。
俺は薬菓をソン・ヨナの皿に乗せてやり花茶を一口飲んだ。
薬菓の下には残念ながら銀両は並んでなかった。
二人して直立不動の捕盗大将とビア樽従事官に座るように即す。
「臨海君様、先程よりキム・トンスと三族の者が尋問所で待って降ります」
捕盗大将が言うには、今回の件に付いて三族の者が直接俺に説明したいと言っているとの事だ。要は言い訳を聞いてくれと言っているらしい。
しかし、待たせるにしても凄い場所で待たせたものだ。尋問所は拷問所と取り調べ室を合わせたような場所だ。地面に直接設置された場所で拷問道具も置かれている。
あまり気持ちの良い場所ではない。なんでも相手方からここで待ちたいと言ったそうだ。
バカばかりの一族かと思ったが切れる奴がいるようだ。
仁嬪が親父……宣祖の行幸にくっ付いて行ったタイミングで呼び出したのにババアの代わりをできる位の奴がいるのかもしれない。
花茶で喉も潤したしどんな言い訳を考えたか聞きに行こうか。
捕盗大将に案内されて俺達は尋問所に入って行った。
俺達が入った所は尋問側、普通なら捕盗大将が座る場所だ。
ここから見る尋問所は前世日本の時代劇のお白州に拷問道具を並べたような場所だ。
今夜はご丁寧に拷問吏まで待機している。なるほど相手はイメージ戦略で来るつもりか。
キム一族は全員が地面に座っていた。成人した男達だけだが全員が白のチョゴリにパジを履いている。自分達は「罪人」だと言っているのだ。
キム・トンスも暫く見ない内にやつれて……いないようだな。
最前列の真ん中に初老の男とその息子くらいの男が座っている。初老の男は仁嬪の実父キム・ハンウ(金漢佑)だ。と言う事は隣の若い男は仁嬪の兄弟と言う事になる。
俺達が席につくと、キム・ハンウが額を地面に擦り付けて喋り始めた。
「臨海君様、どうか我々一族を極刑に処して下さい!お願いいたします」
キム・ハンウの言葉に合わせて一族全員が額を擦り付け同じ事を口にする。なんだ、その手で来るのか。もう少し期待していたんだが……しかし、油断は禁物だ。
こいつら全員がバカではない。中に今回の絵を描いた知恵者がいるはずだ。
「キム・ハンウ。お前の言っている意味が理解出来ん。余にも分かる様に説明してくれ」
向こうのシナリオ・ライターはどんなストーリーに仕上げたんだ。早く聞かせてくれ。
……結果から言おう、こいつら全員バカだ。
ここへ全員が白のチョゴリにパジで座っているのも単に捕盗大将に呼びつけられたからだそうだ。尋問所で待つと言ったのも自分達が隠した財産がバレたから、臨海君様(ようは俺の事)が以前の約束を反故にして処刑されると思ったそうだ。
頼りの仁嬪も行幸に行ってすぐには帰って来れない。思い余っての策らしい。
それが証拠に捕盗大将に持たせた隠し資産の一覧表には載せてない仁嬪の実家の財産の証書もある。いや……後三年も収穫できない人参畑なんていらねえよ。
第一これ全部取り上げたら仁嬪になにをされるか分かった物じゃない。
さて困ったぞ……どうやって仁嬪の実家の分だけを切り離すか問題だ。
これが連中の作戦か?いわゆる玉砕作戦。もしそうだとしたらバカはバカだが嫌な奴だよ本当に。同じバレたなら仁嬪と俺の関係を逆手にとって被害を最小限に抑えようと言うことか。仁嬪との関係がこれ以上拗れるのを避ける為に俺が譲歩すると踏んでいる訳。
もし俺の考えが浅く「ラッキー!全部も〜らい」と言ったらどうするつもりなんだよ、こいつら。それは考えなかったのか。
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