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闘銭房乗っ取り 【その 3】

本日、五話投稿予定です


今後の投稿について:原則、毎日投稿を目指します。

1〜2日で一話を終える予定です。

 俺が闘銭房トウジョンバンに行っている間にソン・ヨナに街で調べさせたら、彼奴らは高利貸しもやっている。利子は十日で2割が最低の相場と言う事だ。貸し付ける金の出所は闘銭房トウジョンバンの上がりと件の「両班」から出ているのだろう。闘銭房トウジョンバンの上がりは毎月大体二千両そこそこ。


高利貸しの資金を含めても彼奴らの総資産は一万両が限界だ。闘銭房トウジョンバンにしても高利貸しにしても「現金」商売。莫大な借金を背負ってしまうと両手足を縛られたのと同じ事になる。おまけに手元に一定の現金がなかったら商売にならない。万が一、現金が尽きてしまうと一瞬にして商売は終わる。


 俺の狙いはそこだ。

奴らに莫大な借金を背負わせた上で「俺のために」稼がせる。逆らえば借金をたてに奴らの資金をショートさせる。明日彼奴らは今日以上の手練れを揃えて待っているはずだ。

それしか方法がないからな。

 俺達を尾行して居たゴロツキは五人だったそうだ。その五人とも手足の骨をへし折って賭場の近くに投げ出して置いたそうだ。俺は甘さを捨てた積りだ。脅し程度では終わらせない。必ず実行に移す。彼奴らには心の底から「恐怖」と言う物を焼き付けてやる。


 奴は手下を五人も潰されて黙っているはずはない。明日はそれなりの人数を隠しているだろう。しかし所詮は喧嘩が強いだけのゴロツキだ。

この3年の間、パク・シルを通して訓練を受けた俺の護衛の相手ではない。ただし、荒事は最後の手段だ。あくまで「ビジネス」に行く。


 俺は3年の間に何やかんやと理由をつけて王室のファン()()()()()貯めて置いた。一枚千両のファンが十数枚、〆めて1万両を超えている。

 賭場の帰りに尚衣院サンウィウォンへ寄って今日の稼ぎを全て銀両に両替して置いた。銀両一つで50両になる。尚衣院サンウィウォンの役人が俺の出した金額を見て怪訝な顔をしたので「魚心あれば水心ってな…フォフォフォ」と前世の時代劇で見た悪徳商人と代官の真似をしたら納得して居た。彼奴ら、一体全体俺の事をどんな目で見ているんだ?一度問いただしたいものだ。パク・シルも横で黙って頷くんじゃねえよ。

俺の明日の狙いは奴らに総資産以上の借金を背わせる事。さてさて明日がどうなるか、楽しみだ。


朝の恒例行事を終えて、朝食を食べていると光海君カンヘグンが話しかけて来た。


「兄上、最近よくお出かけになっていますね」


危うく漬物を落とす所だった。よく知っているなお前、学問はどうした。


「ソン・ヨナが街で買って来た餅を女官達と食べておりましたので」


やっぱりあいつか……仲間に分けてやるのは良いが人目を気にしろよ。


「私やお前が口にする餅より、味は落ちるがよければ今度用意しておこう」

「兄上、ありがとうございます……」


分かっている、今回の件が片付いて落ち着いたら街に連れて行ってやるから……

そんな目をするな、罪悪感が半端じゃない。

そんな事を考えながら返事を光海君カンヘグンに返そうとすると殺気を感じた。

光海君カンヘグン付きの女官だ。大丈夫だ、大事な弟を悪の道には引き込まないから。


「……学問がきっちりと進んでいるなら、一度街へ連れて行こう」

「はい!頑張ります。「中庸」も後少しで全て覚えれそうです」

「そうか、よく頑張っているな」


殺気が薄れて行く。確かこの女官はキム女官と言ったか……

あの歴史で有名なキム尚宮、キム・ゲシか?

この頃から光海君一筋って……どんだけ一途なのだよ。

そのくせ、この間ソン・ヨナと餅を食っていたのはお前だろ。

もう少し、ソン・ヨナを使って餌付けでもしとかないと俺が殺されるよな。


野史では同腹の兄を殺す事を嫌がる光海君を説得して俺を殺す様にしたのは、

キム尚宮…キム・ゲシだと言われている。

キム尚宮は光海君の為なら明の皇帝でも殺しかねないと言われた女だからな。

クワバラクワバラ。

女の事は女に任せるのが一番だよな。ソン・ヨナに餅代を多めに渡しておこう。


 そんな冷や汗物の朝食を終えて俺はパク・シルとソン・ヨナを部屋に呼んだ。

二人の目の前で今日の軍資金を開帳する。ソン・ヨナは大げさにパク・シルでさえ少し表情を動かした。


臨海君イメグン様、一体いくらあるのですか!?」


ソン・ヨナが興奮気味に聞いてくる。


「そうだな、銀両が7つ、千両のファンが十三枚だ」

「え〜と……銀両が一つ50両だから…」


ソン・ヨナが指で数えている間にパク・シルが答えを言ってしまう。


「……〆て一万三千三百五十両だ」

「え?」


ソン・ヨナが固まってしまった。それはそうだろう。

庶民では……いや、ちょっとした両班でも一生お目にかかる事のない金額だ。


「それだけお金持っておられるって……臨海君イメグン様って王様とか偉いお役人とかとお知り合いなのですか?」


ヲイ!お前は本当にバカか!俺は実の息子だよ!その「王様」のな!


「……ソン・ヨナ、落ち着け。愚か者に見える」


 パク・シル、もっと言ってやれ。「見える」んじゃなくて本当のバカだよ。


「……臨海君イメグン様、闘銭房トウジョンバンに持ち込むにしては金額が多すぎるのでは」


パク・シルの疑問でやっと今日の作戦の説明ができる。


「彼奴らも漢城ハニョン一の闘銭房トウジョンバンを自負しているのだ、昨日の負けでは終われんだろう。今日はもっと大きな勝負を持ちかけても乗ってくる」

「しかし、さすがに一万両は無理では……」

「これは彼奴らを縛る為の道具だ。勝負は場代に銀両一つ、一勝負に換を一枚。これなら乗ってくるだろう」

「それでも奴らにとってはギリギリの選択のはず。どの様になさるおつもりですか」

「勝負は三本勝負、さっさと片をつける。まあ最後は楽しみにしていろ」

「……分かりました。ただ、護衛は全員連れて行きますが宜しいですね」


俺はパク・シルの提案に頷く事で了解する。ただし、ソン・ヨナには一人護衛を付ける様に指示した。


「ソン・ヨナはキム何某の屋敷を見張っていてくれ、誰が出入りするか確認を頼む」

「分かりました、そういえばあの屋敷が見える所に餅屋がありましたよね」


 わかっているって、だから一人護衛を付けるんだよ。

餅に気を取られて見逃さない為にな。餅代は弾んでやるからしっかり見張っていろよ。

俺の勘ではある人物が尋ねて来るはずだからそいつをしっかり確認してくれ。


「いや〜さすが臨海君イメグン様、あそこの餅屋はゲシもお気に入りなのですよね」


別にその餅屋の為にお前を派遣するわけじゃないから。大丈夫かよ……


「パク・シル、闘銭房トウジョンバンから出てくる奴はネズミ一匹逃すなと命じておけ。ただし後で口が開ける程度にはしておけとな」

「御意、肝に刻んで置く様に伝えます」


 いや、本当に釘をさして置かないと。俺の護衛達なら捕まえても縛るのが面倒臭いからと切り捨ててしましそうだからな。どんな小者でも何を知っているか分からない。

第一、俺の予定ではあそこの闘銭房の人間は死ぬまで『俺の為に』働いてもらう積りだ。

殺しちゃったら予定が狂うから。そこんとこよろしく。

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