ざまぁされたので、ざまぁしにきた
ざまぁ系が多いので、ちょっと書いてみようと思いました。
ざまぁ系って難しいですね(。。
俺は剣士だ。
剣王だなんていうやつもいるが、単に体がデカくて、どでかい剣を振り回すしかできない戦闘馬鹿だ。
一人で修行していたら魔族の王を討伐する秘密任務のメンバーに入れられた。
まだ修行の途中だと言っても、聞いてくれなかった。
神の加護を手にした勇者エリアス。
あらゆる属性の魔術を扱う賢者フィーリア。
防御系・補助系・回復系のスペシャリストな聖女ミル。
暴れるのが得意な俺ことガリア。
斥候兼運び屋のトムソン。
この5名で魔族領に突入して、魔族の王を倒せと言うのだとか。
5名だけで敵国に侵入して、城に入りこんで、敵のボスを倒す。
出来るものなのかなと思ったが、みんな乗り気らしい。
ああ、トムソンは否定的だったな。
各国の支援が足りないだとか、軍の兵力を使って戦線を切り開かないと補給もままならないとか、他にも難しいことを色々言っていた。
他のみんなは大丈夫だと笑っていた。
俺には難しいので、放置した。
トムソンは頑張り屋だ。
他のみんなと比べて戦闘力は低く、何時も逃げ回っている。
野営の時は率先して動いているし、危険なものが無いか探し回るのも彼の仕事だ。
俺にはよくわからないが、旅は順調らしい。魔族領に入っても問題ないらしい。
謎だ。
トムソンは毎晩、火が落ちても自分で火を起こして何か悩んでいる。
考え事の邪魔をしては悪いので、大体放置している。
野営の時も、勇者や賢者や聖女は夜番をしない。
俺は寝ていても敵の襲撃には反応できるから、寝ながら夜番をしているが、トムソンは考え事をしながら夜番をしている。
だから何時もフラフラだ。
魔族領に入ってからもトムソンは大変そうだ。
他のみんなは順調に強くなり、魔族を圧倒している。
俺、要らないんじゃないか。
何度も思った。
魔族領に入ってからも食べ物や飲み物は困らなかった。
いつも『無人の村や町』があるから。
トムソンが頑張ったのだろう。
村や町には人っ子一人見かけないが、血の匂いは消せない。
トムソンは村や町に入る前に姿を消し、いつの間にかボロボロになって合流している。
ある日、トムソンが居なくなった。
勇者に聞いても賢者に聞いても聖女に聞いても、返答は同じ。
旅が辛くなったので逃げ出した。
まぁ、いつも辛そうにしていたからしょうがないのだろう。
代わりに入ったのは、魔族のアーロロ。
命を見逃してもらう代わりに、旅の世話や道案内をしてくれるのだとか。
勇者とは仲がいい。
勇者は神の加護をもらうだけあってか、誰とでも仲良くなれる。
賢者も聖女も勇者と仲が良い。
俺?
修行に忙しいから、勇者とは普通の仲だ。
そうして旅を続け、魔族の王を倒した。
アーロロはどうやら王の側近だったらしい。
勇者たちを捕えたと王の前まで連れてきた後、不意打ちで俺たちは魔族の王を殺した。
焦る側近のうち一人はアーロロが殺した。
そうして、勇者は魔族の王の証である変な宝石を手にした。
俺たちは秘密任務とやらが終わったので、その後は魔族から逃げながら人族の領土へと向かった。
帰ってきた俺たちを迎えたのは、祝勝パレードだった。
みんなが喜んでいたし、みんな笑っていた。
俺は魔族の王をなぜ殺す必要があったのか、結局最後まで分からなかった。
だから夜のパーティで貴族や王が話している内容を聞くことにした。
どうやら、人族と魔族は戦争をしていたらしい。
色々あって邪魔になったので、魔族の王を殺すことにしたのだとか。
魔族の王が、平和を望んでいた。
それでは戦争が始まらず、この国の王は他の同盟国からの援助がもらえない。
今まではお約束の小競り合いをして、同盟国からの援助をもらって楽をしていたらしい。
これからはまた戦争が始まる。
王と貴族は援助金が復活するぞと、笑っていた。
俺は魔族の王の死に様の顔を思い出していた。
彼は最後まで、人族であった俺たちと和解できると思っていた様だった。
すごく悔しそうな顔をして、彼は死んだ。
魔王討伐のパーティやら何やらが終わった後、俺は故郷に帰ろうとした。
だが、俺に軍の兵士たちを鍛えてほしいと言われたので、鍛えることにした。
軍の責任者である将軍は、これから始まる戦争に備えて兵士を鍛えたいと言った。
誰も死なせたくない。
本当なら戦争なんてなければいいのにな、とつぶやいた彼は悲しそうな顔をしていた。
だから俺は兵士を鍛えることにした。
食事は美味いしベッドは柔らかい。
メイドたちに妙に熱烈な奉仕をされたのは困った。
何度かベッドへ襲撃されたこともあった。
あれは怖かった。
仕事を放り出して逃げ出したくなったくらいだ。
魔王討伐から1年が経ち、2年が過ぎた。
2年も兵士の訓練をすれば、やはり何か変わるのだろう。
俺は役職には絶対付きたくないと言い続けていたが、最近では傭兵として雇われるのもいいかもしれないと思い始めていた。
兵士たちは弱い。
鍛え始めの頃に比べると強く成ったが、弱い。
魔族は人族に比べると数は少ないが、その分だけ一人一人の強さは人族のそれを上回る。
俺たち魔王討伐メンバーを除くと、魔族とまともに戦える人族はあまりいない。
普通の人族は、一人の魔族に対して複数人で相手をする。
だから人族の訓練は、何時もグループで行っていた。
俺にはそれが、よくわからなかった。
他人頼りではいつまで経っても弱いままだろう、と。
だから一人一人訓練を付けた。
将軍は最初は止めてくれと叫んでいたが、今では任せてくれている。
手加減が上手くなったからかもしれない。
最近は聖女が傍についていなくても大丈夫になったから。
勇者は多くの女性に囲まれている。
近々、この国の姫と結婚するらしい。
第二夫人が聖女で、第三夫人が賢者になるらしい。
他人事だから詳しく知らないが、3人同時の結婚をするという不思議な話を聞いた。
そういうの、ありなのか。
世の中には不思議なことがたくさんある。
俺は剣を振ることしか能がない。
難しいことは難しい事を考えるのが得意な人に任せよう。
今日も兵士たちの訓練が終わった。
去年はボロボロでご飯も喉が通らなかった兵士が、今年は酒を飲みながらどんちゃん騒ぎをしている。
将軍と一緒に酒を飲んで、肉を食べて、熱々のスープにこんがり焼けたパンを浸して食べる。
最初は尊敬されて、次には恐怖されていた俺も、今じゃみんなと同じように酒を飲んで笑っている。
一人で修行している時は、無心で強さを求め続けていた。
もし城に残らなかったら、この楽しい時間は死ぬまで知らなかっただろう。
魔王討伐して以来、とんとん拍子に上手く事が進んでいる。
戦争が始まるというのに。
殺し合いが沢山生まれるというのに。
俺は今の時間が来てくれてよかったと思っている。
聖女に聞いたことがある。
戦争が始まるきっかけを生み出した俺たちが、魔王討伐を喜んでいいのかと。
聖女は語った。
魔族とは魔に犯された罪深き者たち。
その魂を解放するためにも、滅ぼさなければいけないのだと。
呆れた。
俺としては聖女の詭弁に、言葉が出なかった。
俺は知っている。
第四夫人である村娘の正体が、魔族のアーロロであるという事を。
アーロロについての事を聞くと、神の加護を受けた勇者に身も心も捧げたため浄化されたのだと。
ならば、他の魔族も同じようにすればいいのだが、加護にも限りがあると言われた。
詭弁に詭弁を重ねている。
だから俺はあいつらと距離を置くことにした。
結婚したいならば好きにすればいい。
俺も好きにするだけだ。
城が焼けている。
無論、比喩だ。
丸焼けになった様に一変した、と言うべきだ。
俺は今、逃げている。
人々の喧騒を逃れて、降り注ぐ雨の様な矢から逃れ、兵士たちの槍から逃れ。
どうしてこうなったのかわからない。
ただ、あの兵士たちはこの国の兵士たちではない。
鎧兜の隙間から見える黒い毛皮。
恐らくはコボルトだろう。
つまり魔族だ。
魔族領でも精鋭に当たるコボルトと同じ気迫を感じる。
襲撃は突然だった。
陰から生まれたかのように兵士たちが現れ、俺たちに襲い掛かった。
武装放棄した物は殺されなかったが、武器を持って抵抗した者は殺された。
犠牲になった兵士数名。
その仇を取ろうとした他の兵士たちを昏倒させた。
兵士たちの隊長が語ったのだ。
抵抗しなければ殺さない。
もっとも、俺はその言葉を鵜呑みにしたわけではない。
単に全滅するのは目に見えていたため、奴らの言葉が真実である方に賭けただけだ。
そして、俺自身は逃げている。
俺たち魔族の王を殺した討伐メンバーについては、無抵抗でも殺すと言った。
ならば逃亡するだけだ。
抵抗するために暴れれば、周りの被害が増えるだけだ。
勇者たちがどうなったかは不明だ。
ただ、俺は逃げるだけだ。
やがてこの場所に舞い戻るために。
旅をした。
旅をしていた。
あの襲撃の日から、もう1年が経過した。
俺はあの日から、追われる身になっていた。
不出来な頭を使い、あの日に何が起きたのか、今何が起こっているのかを考えた。
情報も集めた。
その結果、今あの城の玉座に座っているのは、とある人間だとわかった。
元人間、と言えなくもない。
魔王トムソン。
彼がなぜ魔王になっているのか、何故城を乗っ取ったのか。
細かな事情は不明だが、勇者たちの安否は分かっている。
そろそろ処刑されるとのことだ。
トムソンが逃げだしたという一件。
あの時に何があったのかはわからない。
苦労人のトムソンが魔王になるほどの何かがあったのだろう。
あいつは何時だって苦労ばかりしていた。
また無理難題でも言われたのだろう。
懐かしい城の姿は、感慨深さと悔恨と喜びと、他にも様々な感情が沸き起こった。
言葉に出来ない感情全てに蓋をして、俺は城の門をくぐる。
今日は処刑の日だ。
あいつは、どんな顔をしてかつての仲間の処刑をするのだろう。
俺には分からない。
処刑は城の中庭で行われる。
この日のために、中庭の花は全て真っ赤な薔薇に変えられていたようだ。
参列者は魔族が多く、一部の王族貴族も縄で縛られた状態で並んでいる。
王が姫の救命を叫んでいる。
貴族たちは、自分たちの命だけは助けてほしいと叫んでいる。
縄で縛られ連れられてくる人物たちは、どうなのだろう。
勇者は自分を殺してもいいから、妻たちの命は助けてほしいと叫んでいる。
驚いた。
勇者はもっと我が儘で自分勝手だと思っていたが、その印象は捨てたほうが良いようだ。
どんな拷問でも受ける、頼むから、頼むから。
何度も繰り返す勇者の隣に、賢者が連れられた。
賢者はひたすら謝罪していた。
あの時、見捨てて悪かったと。
何でもするから助けてほしい、償わせてほしいと。
俺としても当時何があったのか知りたかったが、今ここで尋ねるわけにもいかない。
聖女は泣きはらした顔のまま、何も語らない。
見る人を和ませる笑顔は既になく、ゴーストを彷彿させる死者の顔に近づいている。
聖女もトムソンを見捨てたのだろうか。
処刑が終われば、それを尋ねることも出来なくなる。
姫は、少々見苦しいとも言えた。
自分以外はどうなってもいいから助けてほしい。
何でもする、誰かを殺せと言うならいつでも殺す、だから自分の命は見逃してほしい。
ある意味で天晴だ。
人は生きるために日々過ごす。
彼女は最後まで、あらゆる手を使ってでも生きようとしている。
その点だけは尊敬に値するだろう。
そして、魔族としての姿を現したアーロロは、悲惨だった。
他の4名の人族はボロボロの身なりではあったが、五体満足だった。
アーロロは違う。
半死半生と言った有り様だ。
そのアーロロ目がけて、参列した魔族は物を投げつける。
果物、野菜、石。
中には刃物さえ混じっていた。
処刑の前に死んでしまいそうなほど、アーロロが受けている被害は相当だった。
隣を見る。
フードで顔を隠した、俺の同行者は震えている。
落ち着けとフードごと頭を押さえつける。
今ここで動いても意味がない。
俺は、トムソンを見に来たのだ。
トムソンが現れた。
王の様な立派な服装の、自信に満ちた姿だ。
トムソンは語った。
かつて、自分は魔王討伐の一員だった。
だが冷遇され、便利な道具扱いをされ、人間扱いをされていなかった。
勇者たちの旅を過ごしやすくするためなら、あらゆる汚れ仕事に手を染めた。
最後には汚れ仕事をしたことさえ理由にして、文字通り切り捨てられた。
半死半生のまま魔族領を彷徨い、少しでも気を抜けば食い殺される中で生き延びた。
そうして生きる力を身につけ、復讐の牙を研ぎ続けた。
仲間を増やし、準備を整え、1年前に人間への反撃を開始した。
今日この日、人間への反撃1年目の記念として、この戦争を始める切っ掛けとなった罪人の処刑を行う。
トムソンは、笑いながら宣言をした。
これは報いなのだと、笑っていた。
彼の姿を見て、覚悟が決まった。
俺は一歩、前に出る。
一歩ずつ、処刑の場に近づく。
魔族たちが騒めいている。
勇者たちは、俺の背負っている剣を見て驚いている。
トムソンは、笑っている。
最後の一人が来たと、笑っている。
俺は一度だけ、後ろに視線を向ける。
不安と期待を込めた、フードに隠れた眼差し。
かつて魔族を裏切った姉のせいで迫害されていた、それでも姉の命を救ってほしいと頼み込んできた幼い少女の期待に応えるべく。
俺は剣を手にする。
「あんたも俺を笑っていたよなぁ? 俺を蔑んでいたよなぁ? はっ。今じゃ立場は逆だ。そのぼろっちいナリで、俺の前に立つのかよ?」
「俺はお前を笑っていなかった。苦労ばかりかけていたと申し訳が無かった。だがそれも過去の話だ。その金で紡いだみすぼらしい姿で、俺の前に立つのか」
かつて、この国は魔族の襲撃を受けていた。
人族は奴隷となり、魔族は平和を甘受していた。
だがそれも過去の話。
今は人族の平和を取り戻し、魔族が奴隷となっている。
もっとも、俺の強権で不必要に酷いことをさせないようにしている。
俺の相棒は人の嘘を見抜く魔法の目を持っている。
嘘つきは俺が切り捨てる。
魔族は人族の仕打ちを恐れ、人族は俺の仕打ちを恐れる。
これが今のこの国の在り方だ。
これが正しいのかどうかは分からない。
かつての仲間であった勇者たちは、今は療養している。
再び活力を取り戻した時に何をするのかはわからない。
なるべく無茶なことを言わないでほしいと願っている。
一度はこの国を陥落させた魔王は、地下牢で過ごしている。
『食べた魔物の力を発現させる』特技は凶悪だが、複雑に編まれた封印や結界のために無力化されている。
彼とは一日一度、会話をしている。
成果は芳しくない。
ただ、一度だけ。
なぜ殺さないんだと尋ねた時に、仲間だからだと答えた時、彼は昔の苦労人だった頃の顔をしていた。
勇者たちに黙って、また酒でも飲もう。
彼の返事は無かったが、あれ以来彼の態度が少しだけ軟化した様だ。
アーロロは俺の相方の献身な世話もあって、会話できるくらいには回復している。
未だに誰も彼もが怖いようで、発作が起きると悲鳴が止まらなくなる。
さて。
俺は元国王に尋ねる。
「これからどうしたらいいのだろう」
「あなたの好きにすると良い。今は貴方がこの国の主なのだから」
「勘弁してほしい」
俺はただ、あの馬鹿の顔を殴りたかっただけだったのに。
どうして俺は玉座に座っているのだろう。
早く誰かに代わってほしい。




