君が居てくれるから僕は
貴方に、僕はどぅ見えているんですか?
「ハァー…」
僕は、少しため息をつきながらレストランの窓から外の景色を眺めた。
煌びやかに、光が散りばめられて綺麗だった。
「あの、お客様…申し訳ございませんがお連れの方からご連絡がありまして…」
「そぅですか、モゥイイデス」
ウェイターは、頭を下げて注文を届けに厨房へと向かった。
僕は、携帯の画面を見て一言呟いた。
「嘘つき…」
メールをもう一度開き、内容を振り返った。
『集、久しぶりだな…今夜飯でも食いに行かねぇか?予約はしてるから、先に待っててくれ』
僕は、スーツのジャケットをピシッと伸ばし鞄を持ち何も注文されていない綺麗なままのテーブルを後に立ち去った。
「……寒…」
春なのに、まだ肌寒い感覚がある。
風が冷たく、いつもよりも冷える。
「………」
広い街、ビルの隙間に見える夜空は月の光が届かない新月でいつも以上に暗く感じた。
「集…?」
気がつくと、僕はここに居た。
「咲…」
BAR「Drizzle」
幼馴染の「木村咲」がここで働いているからいつもここに通い続けた。
「どうしたの?今日は来なかったみたいだけど…店長が心配してたよ」
「……うん、ごめん今日は予定があって…」
咲は、僕をジッと見て何かが分かったように言った。
「…会えなかったんでしょ?」
「!」
「おじさんに、会えなかったんでしょ?」
流石は咲だ、3年も離れていても僕のことをよく分かっている。
「うん…会えなかった」
「はぁ、やっぱりね集の事だからそんな事だと思った」
「咲…僕、僕さ…」
咲は僕のそばに駆け寄り、そっと頭に触れた。
「本当は、会いたかった…お父さんに…グズッ…」
「全く、男なんだから泣いてちゃダメだよ」
「うん…ごめん…」
「……家来る?」
僕は黙って頷き、咲に手を引かれるままに向かった。
「落ち着いた?」
「うん、心配かけてごめんね」
「別に大丈夫、なにか飲む?作るけど」
「じゃあ、いつものお願いしていい?」
「ブラッディ・バング」
咲は、飲み物を作りながら僕に話しかけてくる。
「まさかとは思うけど、死にたいとか思ってないでしょ?」
「思わないよ、思ってたら今頃死体になってるよ」
「まぁ、集だけで死ぬわけないと思うけど」
「なっ…そ、それは咲だって同じじゃんか…」
僕も咲も、少し顔を赤らめ飲み物が完成するのを待った。
「はい、出来たよ」
「ありがとう、咲」
僕は完成したブラッディ・バングを少し飲み、話した。
「咲…ありがとうね」
「何が?」
「何でもないよ、飲み終わったら…寝よ?僕はソファで寝るから…」
咲は、スーツの袖を掴んで言う。
「……一緒に居て」
「良いの?」
「うん、良いの…集だって辛かったんだから」
(…本当、よく見てるなぁ今日だけは甘えても良いのかな…)
「ベッド、行く?」
「ん…」
咲は、半分眠りながら受け答えをした。
「…着替えは?どうするの?」
「んー……良いの、このままで…」
僕は、そっと咲の頭を撫でた。
「咲、ありがとうね」
「スーッ…スーッ…」
咲は、安心しきった顔を見せて眠り始めた。
「おやすみ、咲」
僕もまた、咲に腕枕をして眠りについた。
その数時間後
「……なぁ、クシナダさんさぁ」
「なんでございましょうか黄泉神さん」
「こいつらって、何故に付き合ってないわけよ?」
「んー…お互いに好きなんですけどねぇ」
集と同じ姿を模した黄泉神と咲と同じ姿をしたクシナダが話し合っていた。
「俺は、クシナダが好きだぞ」
「ふふっ、知ってますよでも、主達が会う時しか会えないから不便ですね」
「…財団でよく会ってるだろうが」
「それもそぅですけど、ほんの1分くらいじゃないですか!」
黄泉神はヤレヤレと呆れた顔をしたが、クシナダの頭を撫で済まないなと言った。
「でも、このまま朝が来なけりゃ良いのにな」
「どうしてですか?」
「だって、幸せそうな顔してんだから…時間が止まっちまえば良いのになって」
「それも、そぅですね」
2人はそっとそれぞれの主の元に寄り。
「貴方達が、ずっとそばに居られますように」
そっと囁き、主の肉体へと戻っていった。
そして、翌朝
「ん…?朝?」
先に起きたのは集だった。
「あ、そっか…昨日泊まりに来たんだった」
隣で寝ている咲に気づき、起こさないようにベッドから出て、朝食を作り始める。
「おいおい、良いのかよ?勝手に料理とかして」
「おはよう、黄泉神いいんだよ何かしらのお礼はしたいし」
「礼って言ったってよぉ…」
「良いの、もしかしたらまた泊まりに来るかもだしって言うか具現化出来るなら手伝って」
黄泉神は分かったよと小言を吐き捨てるように言い。
集の手伝いを始める。
「…いい匂い」
しばらくして、咲が起床してベッドから起き上がる。
「あ、おはよう咲」
「……集?」
集は咲の近くに駆け寄り
「昨日はありがとう…ってちょっ」
「ん…」
チュッ
咲は、集が来ていたネクタイを掴み自分の方へ引き寄せてキスをした。
「!!」
黄泉神、集、そして咲の肉体へと戻っていたクシナダも具現化して、全員が全員少しのあいだ固まった。
更に、咲も目を開き…寝ぼけていたとは言え自分がしてしまった事に赤面した。
「い、今…」
「ご、ごめん集!ち、違うの…」
「う、ううん…咲、大丈夫!大丈夫だから!」
まともに顔を見れなかった。
お互いにファーストキスなのだ。
(さ、咲にファーストキス奪われちゃた…)
(し、集のファーストキス奪っちゃった…)
恥ずかしさがこみ上げて来て、集は衝撃的な事を言い始めた。
「さ、咲…」
「な、何?集」
「あ、あのさ…もぅ一回キスして良い?」
「い、良いよ?」
だが、流石にファーストキスをしたすぐ後に2回目ともなると流石に心臓がドキドキしてしまいなかなかできないのだ。
「なぁ、クシナダ」
「はい、黄泉神」
クシナダと黄泉神はコソコソと話し合いをしてある考えを浮かべた。
「主!」
2人が同時に呼んだので、集も咲も同時に呼ばれた方を見る。
「こぅやればいいんですよ」
そぅいうが早いか、キスの手本を見せつけた。
「分かりましたか?主!」
「わ、分かった…」
そしてこちらも、咲は集に身を預け2度目のキスを貰った。
「…ご飯、食べようか」
「うん…」
ちなみにこの後、出勤したがどっちにしろ財団で働いていることが多い為になかなか集中出来なかったとか何とか。