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~苦心惨憺~

僕の名前は平坂稑、17歳。

この世で最も愛する妹に捧げるアイはご主人様に仕える忠犬、いや、それ以上かもしれない。


そんな僕は、いま、禁断のコイを始める。


『僕はオトコの娘にコイをしてしまっている…』


合法とは言えども、やはり許されることでは無いであろう。

なにしろ、僕の想い他人とは、僕のいる学校で最も可愛い。(いや、妹には敵わないが…)


「ねえ、りくぅ〜♪」

「な、なんだよ。」

「むぅ。機嫌悪いの?」

「そ、そんなことない。ただ、さっきはちょっと強引すぎた事をしたかもって。。」

「あぁ…そゆことか。」


そう、この想い他人こそ学園一の可愛さを誇るオトコの娘。弥生充希だ。

彼は確かに魅力的。その魅力は勿論全ての人類を引きつける。


僕は彼のその魅力に一目惚れだった。

もちろん、彼が男の子だという事を僕は知っているし、付き合えることなどはなから考えてなどいなかった。


「あの時はほんとごめん。」

「ううん、いいよ。稑はそんなに謝ってるけど実はちょっと、ほんのちょっとだけ嬉しかったんだよ?」

「そ、それなら良かった。」

「次はもうちょっと、優しくしてね?」

「次があるのか…」


僕がこんなに引き気味なのも仕方がない。

彼は学校内でとても有名であるが故にクラスメイトの視線が痛いほど向けられていることも重々承知の上でこんな会話をしている。


彼は人気者ではあったが、彼はそれを望んでいるかというとそうではない。

彼はいまの学校生活に苦痛を感じている部分があるのだ。従来人と話すのが苦手な彼だったが高校になって稑と友人関係を結んで以来、誰ともまともに会話をこなせていなかったのだ。

その可憐なるルックスのせいで周囲の人間を虜にしてしまう、最強で最弱な能力(アビリティ)を生まれつき習得していたのだから。


8時45分。授業開始のチャイムが校内に鳴り響く。


「そろそろ、授業だね。座ろう」

「そうだな」


4限目の授業が終わり、給食の時間は班ごとに食事をする事になっている。

しかし僕と彼は放送委員である。つまりクラスで食事をとるのではなく、放送室で委員としての務めをこなしながら給食の時間を楽しむのが2人の楽しみでもあった。


「ふぅ〜。稑、放送室先行ってるからね」

「分かった、気をつけろよ」

「...?あ、うん。気をつける。」

「俺もすぐ行くからな」


充希の周りには常に人が集中している。

特に放送室は一階にありクラスがそこから最も遠い位置に在する。つまり、全ての生徒、先生に遭遇する確率がある。

中には彼を悪く見る輩もいる上に逆に告白を受けたりして放送室へたどり着けなかったという事例も少なくなかった。


「充希…」


その上、妙に過度な過保護精神を持っている。ある意味、稑が一番の厄介者かもしれない。


とあるラブコメ主人公の様に、オトコの娘に過保護精神を抱く男の子。僕は彼を追いかける様にして放送室へと向かう。


「はぁ…はぁ…充希〜〜!」


彼の目線には地獄しか映っていなかった。


「稑!たっ、助けてっ!」

「今行く!」


人の山、いや、人の大群は充希を中心とした楕円形を描き、虫けらの様に(たか)っている。


ここにいるヒトはもう人ではない。


人として抑えきれるはずの理性を保ちきれなくなったヒト科の物体だ。


日差しのさす明るい廊下で形成された蟻地獄にただがむしゃらに突っ込んでいく勇敢な青年がそこにあった。


「ふぅ〜、やっと連れ戻せた」

「ご、ごめんなさい…」

「お前は悪くない。悪いのはお前自身だ。」

「それ、結局ボクが悪いって言いたいんだよね?」

「いいや、断じて違う!」


言いたい事は通じるであろうが、残念ながら鈍感な充希にはそれを察する力は無かった。


「さあ、放送の時間だ。放送室に向かおう」

「う、うんっ!」

「(なんでこの子はこんなに可愛いのかな。)」

「ん?なんかボクの顔についてる?」

「あぁ、いやっ、何にもない。さあ急ごう!」

「…やっぱり、変な人だね♪」

「嬉しくない!」


ようやく放送室にたどり着いた2人。


「時間もないし、今日はボクがやるよ」

「悪いな。俺は飯の準備をしておく」

「ありがと。」


そして、全校生徒を魅力するオトコの娘が全校に響き渡る放送活動をし、またしても事件は起こる。


「えっとぉ…ただいまからお昼の放送を始めますっ。皆さん、きちんと手を洗って、おいしく頂きましょう。」


「…はーいっ!!!!!」


聴こえるはずのない3階のクラスメイトの声が聞こえてきた。

ここまでくると正直キモい。


「充希、俺らもそろそろ食事を楽しまないか?」

「う、うん。そうだね。」


いつもはとても楽しい時間を過ごしていたが、今日はなんだか気まづそうな雰囲気の中、時が過ぎる。


「ふぅ〜お腹いっぱい。稑はどう?」

「そうだな。今日はやけに多かったな」


なぜなのかはわからない。今日はいつもよりも給食の量が多くよそられていたのだ。

腹を膨らませてクラスの連中は何かを企んでいるのか?


-考えすぎかな…


「ところで、終わりの放送はどっちがやろうか?」

「なら、俺がやろうかな。始まりはやってもらったし」

「うん、ありがと。」


先程の放送ほど期待されるようなヒトではない稑の低めのトーンで給食の終わりの校内放送で告げる。


「えーっ、皆さん美味しく頂けましたか?片付けは急いで行いましょう。ご馳走様でした。」


「………」


やはり沈黙が走る。クラスで大して目立っているわけでも無い僕は、彼と違って周囲の人間を虜にしたりといった特徴もなく、ただ普通の男子中学生なのだ。


「稑、お疲れ様。ありがとね」

「いや、いいんだ」


その後、先ほどとは雰囲気の違う妙な沈黙が2人の間を流れた。

その違和感に間違いはなく、彼は突然自分の髪を掻き毟り、血の涙を流し始めている。

そして、、彼は僕に妙な質問を僕に問いかけてくるのであった。


僕のセカイは、とても日常的で明るい生活が続くはずだった。


「ねぇ、稑。」

「ん?」


彼からこのコトバを聞くまでは…


「……ヲ………ル?」

「ん?ごめん、聞きとれなかった。もっかいいいか?」




「ボクヲコロセル?」




そして、僕のセカイが狂い始めた。。。。。

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