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東西南北、世界は広いよ大きいよ

あの後、私は討ち取った敵の首を軍の担当官に渡すとそれに相当する報酬を貰い戦場を後にした。本来ならもっと稼いで一山挙げたいところだったが私には別の目的ができた。そう、私の長年の夢。夢見るだけで決して手にする事はできないと思っていた憧れの願いが探し当てさえすれば手に入ることになったのだ!ならばぐずぐずとはしていられない。当座の路銀は手に入った。いざ、出発よ!


「とは言ってもどこをどう探せばいいものやら・・。」

私は軍の宿営地を出たところで途方に暮れる。この世界に私が望むベットがある事は神さまが保証してくれた。でも世界は広いよ、大きいよ。しらみ潰しに探していたんでは何十年掛かるか分かったもんじゃない。まぁ、私が望んだのはベット単体ではなくベット上での快適生活だから、草原にぽつんとベットがあるなんてシチュエーションはまずない。雨でも降られたらずぶ濡れになってしまう。そんなことでは快適生活という希望要綱を満たせない。神さまはちょっと意地悪だったがその辺のことは守るはずだ。となれば目的のベットは人間の側にあるはずだ。しかも私の願いは快適生活である。申し訳ないが貧乏人にはこの条件を満たす事は難しい。故に私が探すべきは金持ちである。


「ここいらで一番の金持ちと言えばやっぱりグラミリア国王かしら。」

グラミリア国王はさっきまで私の雇い主だったグラミリア軍の親玉だ。つまりここはグラミリア国の地元である。もう少し先に行けば隣国のザガリア王国だけど国力としてはグラミリアより数段劣る。だから魔物の討伐も碌に行えない為、グラミリア軍がこうして越境してくる魔物に備えているのだ。

「でもあいつってもういい歳よねぇ。そんな将来のないやつに囲って貰っても私の望むベットライフは安定しないはずだわ。となると王子あたりが持っている可能性の方が強いか。」

私が神さまに願ったのはベット上での快適な生活だ。生活とは生きている限り続くものである。途中で瓦解してしまっては願いを叶えたことにはならない。神さまだってそこら辺は分かっているはずだ。となれば老い先短い現国王より次期国王たる王子が私のターゲットのはずだ。


「よし、いっちょ確認してみるか。まっ、いきなり上がりになることはないだろうから気楽にいこう。」

そう、すごろくだって一回目の賽の目で上がりになることはない。というかそんなつまらないすごろくは誰もやらないだろう。ましてや、神さまは試練を乗り越えろとおっしゃった。だからこの国のお金持ちたちが私のベットを持っている可能性は薄い。だけど逆に言えば神さまの試練もここにはないと言うことだ。となればここで練習をしておくのも悪くはない。


「ぬふふふっ、さて、王子ちゃんはどこにいるのかなぁ。お姉さんがいい子いい子してあげるわよ~。」

私は考えをまとめ、取り敢えずグラミリア国王のいる王都に向かった。でも歩くのがかったるかったので王都と宿営地を行き来する軍の連絡用馬車に便乗することにする。私は宿営地でも結構顔が知れていたから連絡将校も黙認してくれた。まぁ、ちょっと胸元をチラチラさせたのだがこれくらいのご褒美はあげなきゃね。童貞って扱いが楽だわ。


さて、王の住まう城『グラミリア城』はいつ見てもでかかった。でもでかいだけで戦になったら一溜まりもないな。一応、城壁は高いけど堀もないし門も多すぎる。もっともこの城の周りまで敵が押し寄せてくるような時は負けが決定したようなものだからわざわざ暮らし辛い戦闘用の城にすることはないのか。王の居城とは見た目重視、つまりは宮殿である。威厳と荘厳さがあれば事足りるのだろう。


私は門番に王、もしくは皇太子への面通りを願う。

「私は剣士アイシャ・ゴルデニウム。王、もしくは皇太子にお目通りを申し仕上げる。」

事前のアポイントなしにいきなり王様に会わせろと言われても、門番としては、はいどうぞとは言えるわけがない。門番はマニュアルに沿って私に問い掛ける。

「どなたかからの紹介状をお持ちですか、剣士アイシャ・ゴルデニウム。」

おおっ、初めて聞いたはずの名前をちゃんと言い返したよ、こいつ。中々やるな。しかも応対もしっかりしている。さすがは王が住まう城の門番だ。


「いや、招待状はない。私はある件で王、もしくは皇太子に確かめねばならぬ事があるのだ。時間は取らせぬ。取り次いでくれ。」

う~ん、我ながらアホな言い分だ。これで取り次いだらこの門番上司に怒られちゃうよ。

「剣士アイシャ・ゴルデニウムよ、残念だがそのようなあやふやな理由では取り次ぐ訳にはいかん。どうしてもと言うのならどなたか高位の方に説明し、その方から招待状を貰ってきて下さい。」

ほら、やっぱりこいつはプロだ。しかも門前払いしないとこなんか逆に怖いよ。礼を失した行動なんかしたら一撃で首が飛ぶかもしれない。まぁ、私だってそこそこやるから初手で沈められることはないと思うけどね。


「貴公の言うことはもっともだ。では私ももう一度願おう。私は神からある啓示を受けた。それを確かめる為に王、もしくは皇太子に会わねばならぬ。残念ながら啓示の内容を貴公に話すことはできぬ。私の行動は神の意思に基づいている。それを断ることは神のご意思に仇なすことに等しい。如何に賢王と民に慕われる王であっても神の前では一介の赤子である。如何なる災いが降りかかるやも知れぬぞ。」


私は持っていた剣を相手に差し出し恭順の意を表しながら言葉では相手を崖っぷちに追い込む。何てったって神さまを出しちゃったからね。相手も私をぞんざいには扱えなくなったはずだ。その証拠にいきなり門番から殺気が立ち上った。さっきまでの温厚な雰囲気はすでにない。どうやって知らせたのか分からないが門の中から数人の武装した兵士も集まってきた。


「剣士アイシャ・ゴルデニウムよ、場合によっては今日の夕日を眺められなくなりますぞ。お覚悟のほどが?」

うわ~ん、なにこいつ。かっこよすぎるわ。門番ってもっと抜けているもんじゃないの?

「御意。」

私は短く返答する。というか門番の殺気に押されてそれどころじゃないのよ。ぺらぺら喋っている余裕なんかないわ。こぇ~よ、この門番。

私からの返事を聞いて門番は私の剣を受け取り門の中へ招き入れてくれた。もちろん回りには兵士が取り囲んでいる。そして壁際に置いてある椅子を勧めて暫し待つように言った。門番は兵士に何か囁いた後、城の中に消えてゆく。

椅子かぁ。成る程、座らせて初動にワンクッション置かせるせるのね。多分この椅子も固定されているんだろうなぁ。いやはや、さすがは王の城。警戒がハンパないわ。

私、ネット環境を自前で持ってないので月1回のネカフェでの予約投稿になります。

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