汝、望むがよい。されば授けん
あの時、神さまは私にこう告げた。
「汝、望むがよい。されば授けん。」
うん、神さまの言葉って難しいよね。まぁ、簡単に訳せばこうなる。
「お前、可愛いじゃん!よし、特別に望みを叶えてやろう。あっ、でも他のやつには内緒だぞ。お前だけだからな。」
てな感じかな。いやほんとだってばさ。誇張や修正は入ってないわよ。
「本当ですか!本当にほんとなんですか!」
突然引いた当たりくじを神さま相手に確認してしまう駄目な私。でも、今まで良い事なんかひとつもなかったからね。まずは疑っちゃうのよ。
「是非もない。」
おっと、神さまって織田信長ファンだったの?なんかイメージが狂っちゃうな。
「なら、私。昔から憧れていた生活があるんです。それを望んでもいいですか?」
「是非もない。」
あれ?神さまって語彙がちょっと少なくない?あんまりぺらぺら喋ると威厳が無くなっちゃうから抑えているのかなぁ。
「私、ベットの上で暮らすのが夢なんです。お願いします!叶えて下さい!」
「・・・。」
おっと、神さま黙っちゃったよ。ん~っ、いくら神さまでも無理なお願いだったのかなぁ。
「汝、望むがよい。されば授けん。」
あっ、神さまったら聞こえなかったことにしやがったよ。それって神さまとしてどうなの?ちょっとがっかりだな。でも私だって必死よ。ここで妥協なんかしたら絶対後で後悔するからね。
「え~っとですね、神さま、ベットって知ってます?あのふわふわで柔らかくてまったりしていて暖かい、この世の至宝、誰もが憧れる究極の寝具のことなんですけど。」
「・・・。」
ん~っ、手強いな。ここは、一回話題を逸らすか。
「そう言えばこの前のエジトプトでの件。神さま大活躍でしたねぇ。さすがは本家本元。なんちゃって神様もどきの王様なんか手も足も出なかったそうじゃないですか。もう、あの場にいた女の子たちなんて感極まって失神しちゃう娘が続出したそうですよ。キャーっ、神さま抱いてぇ~!てな感じで、実際想像妊娠しちゃった娘もいたらしいじゃないですか。このこのぉ!神さまのくせして罪作りなんだから!」
「ふっ、是非もない。」
おっと、乗ってきたな。よ~し、まくるわよ。
「さすがは全知全能、全てを知り全てを叶える神さまです。この世で神さまに出来ぬ事なし。あの想像妊娠で出産しちゃったお子だって、きっといづれは神さまの威光を世界にあまねく行き渡らせる為尽力されることでしょう。あっ、でもベットの願いを叶え渋ったなんて噂がたったら汚点ですよねぇ。なまじ他が完璧だから余計に目立っちゃうかもしれないなぁ。」
「うぐっ・・。」
おおっ、効いてる、効いてる。やっぱり神さまでも世間体を気になさるのね。よしよし、もう一押しか。
「あっ、でも逆に是非もないっと叶えてくれたなんてことになれば、それこそ我も我もと民衆たちが、神さまのお言葉を聞ける事を信じて朝昼晩お祈りしちゃうこと間違いなしです!」
私の煽りに考え込む神さま。いや、神さまなんだから考えちゃ駄目でしょう。ほら、可愛いか弱い女の子の願いくらいぽいっと叶えなさいよ。
「我は全能の神なり、汝の願いを叶えよう。」
とうとう神さまは観念したらしい。腕を一振りするとざわっとした空気があたりを嘗め回し、西の空に飛んでいった、・・気がする。いや南かな?
「汝の願いは叶えられた。されど願いには試練が付き物である。汝の求める物は用意した。行け!汝の求めるものを探す旅に出よ!求めよ!されば見つからん!」
見つかんないのかよ!ほんと神さまの言葉ってあやふやだわ。後、神さまのくせに意地悪するんじゃないわよ!何よ、探せって!神さまったらいつもそんなだから神神詐欺の片棒を担がされるのよ。ここは気前よくぽーんと出しなさいよ!もしくはどこそこに用意したからそこに行けくらい言いなさい!
まったくいつの時代でも神さまはまだるっこしい。そんなんで良く人民たちの信仰を得られるもんだわ。やっぱりあれかしら、ある程度のストレスを常に与え続けてそれを時々解消してやることで手元において置くのかしら。やぁねぇ、そんな事ではいずれ自立した人間たちにそっぽ向かれちゃうわよ。
私が心の中で突っ込みを入れていると、現れた時と同様に神さまは突然私の前から姿を消した。う~ん、神さま相手に突っ込みはまずかったかしら。なんたって神さまだからね。心の中まで見透かされていたかも。ごめんね神さま。さっきのは本心ではありません。神さまサイコー!だからヒントください。
「・・。応答なしか。」
私はちょっとがっかりする。でも今までは夢でしかなかった私の憧れが神さまの登場で俄然真実味を帯びてくる。神さまはおっしゃった。探せと。つまり、私の望んだベットライフが世界のどこかに用意されたはずなのだ。神さまは嘘がつけない。故に神さまの言葉は神聖となる。嘘をつくのは生き物だけだ。私は神さまの言葉を思い出し内から湧き出る喜びに身震いする。
「ヒャッホー!やった!やったわ!とうとう私の夢が叶う時が来た!神さまありがとう!明日からは毎日お祈りします!忘れなければ!」
神さまに感謝の言葉を述べた後、私は神さまの出現で途中になっていた敵兵の討伐を再開する。といっても殆どのやつらは逃げてしまっていた。残っているのは手傷を負って動けなくなっているやつらばかりだ。ん~っ、ちょっと今日の稼ぎが少なくなっちゃったな。まっ、いいか。今日は神さまから最高の贈り物を頂いたし、この辺で勘弁してやろう。私は戦利品となる敵の首をかき切って雇い主であるグラミリア軍のところに持って帰る作業を始めた。
私、ネット環境を自前で持ってないので月1回のネカフェでの予約投稿になります。
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