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タウゼント〜筋肉×魔法=破壊力〜  作者: 冬木ユート
筋肉×魔法=破壊力
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少女危機

 円環大陸(トーラス)

 どこからでも水平線が見えるほど広大な湖を中心に、ぐるりと囲うように陸の広がる大陸。その形状がまるで円環のようである事からいつしかそう呼ばれるようになったこの大陸には、三つの名物がある。

 一つはその湖。湖でありながら魔海と呼ばれるほど広大な湖の中心には、天を衝く巨大な塔が存在する。この大陸に居ればどこからでも見えるほど巨大な塔なのだが、この塔の正体を知るものは誰も居ない。何故なら、この塔に近づこうとすれば、塔の周囲に生息する強大で凶悪な化け物……魔獣に襲われるからだ。過去にその時代の勇士達が、何度か塔の調査に向かったそうなのだが、誰一人塔には辿り着いていない。この情報も、命からがら逃げ出した一人が語ったものだ。海のように広大であり、魔界のように恐ろしい。故にこの湖は、魔海と呼ばれている。

 この塔が原因なのか、沿岸部こそほぼ安全だが、それ以外には時折魔獣が出没し船を襲うため、湖を渡る事は不可能とされている。

 二つ目は円環鉄道。十年ほど前にようやく完成した、円環大陸(トーラス)全域を結ぶ環状の鉄道である。魔力を糧に動く、魔導列車と呼ばれる乗り物を用いて運行されており、その完成は世界を変えたと言っても過言では無いだろう。

 今まで魔海のせいで多大な労力が必要だった対岸地域との運送、交流は、この鉄道によりかなり楽になった。ここ十年間の円環大陸(トーラス)の著しい発展は、円環鉄道の力が大きいだろう。

 最後はある一つの組織。人々を襲う魔獣が存在するのは、何も魔海だけではない。大陸の山地にも、平原にもどこにだって存在する。

 人の住む場所の近くには、各町の自警組織でも勝てる程の弱い魔獣しか存在しないが、人の立ち入らない山の奥深くには強大な魔獣も多く潜んでいる。そして、稀にではあるが……これらの強大な魔獣が人里に降りてくる事がある。

 常人には立ち向かえない、生きた災害であるこれらの魔獣に立ち向かうのは、人を超えた力を持つ者達。魔獣の力の源でもある魔力を使い、魔術を用いて災害を討つ超越者。太古の時代から、魔術師と呼ばれる者達により結成された、国家を超えた魔獣討伐の為の組織。

 彼らの名は『バスターズ』。対魔獣のスペシャリストであり、円環大陸(トーラス)の守護者である。


 暗い裏路地を、一人の少女が駆ける。裏路地に似合わぬ、仕立ての良いワンピースを着たブロンドの髪の少女が、涙を堪えながらも裏路地を駆ける。何度か転び擦りむいたのか、その膝や腕には痛々しい痕が残っているが、彼女は立ち止まらない。例えどんなに痛くても、立ち止まってしまえば、更に恐ろしい事になるのを知っているからだ。

「待てぇこのガキ!」

「絶対逃すんじゃねぇぞ!」

 少女を追いかけるのは、荒事で生計を立てているであろう風貌の男達。いわゆるチンピラと呼ばれる人種だ。

 大の男が複数で少女を追いかける。どちらが悪役か、説明せずとも分かりそうな光景だが、この場においては無意味だろう。

 例え男らが悪でも、少女を救う正義の味方が、こんな裏路地に都合よく現れる訳がないのだから。

 そして、大の男が集まって、何故未だに追いついて居ないのか。これは少女の足が速いわけでも、運が良いわけでもない。男達は裏路地に関しては人一倍詳しい人種である。そんな男達が、裏路地に慣れていない少女を捕まえられない訳がない。

 遊んでいるのだ。少女が恐怖に怯えながら、必死に逃げている様を嘲笑っているのだ。少女は必死に逃げていたが、男達の方に地の利はある。男達から逃げ続けた少女は、まだ助かる望みのある表の路地からどんどんと追い込まれ……。

「そん……な……っ」

「おーっと嬢ちゃん。残念ながらここまでみてぇだな!」

「ひゃははは! 行き止まりとは運がねぇなぁ!」

 男達に追い込まれ、辿り着いたのは行き止まり。例え全力で叫んだ所で表の通りには届かない程に離れた場所に、知らず知らずの内に追い詰められていたのだ。

「ゃ…………来ないで」

「ははは、来ないだろうよ、俺たち以外はな!」

 怯えきった少女を、更に怯えさせる為に男は言う。それが堪らないとでもいうかのように。

「ここは裏路地の更に奥! こんな所、普通誰もうろつく訳ねぇからな! 叫んだ所で、誰の声も届かねぇだろうよ! ひゃははは!」

「そんな…………誰か、誰か……助けてッ!!」

「だーかーらー、叫んだ所で無駄無駄無駄だっつってんの。恨むんなら力のない自分を恨むんだなぁ?」

 下品な笑い声を上げ、その性格が滲み出たような顔つきの男達は少女に迫る。

 少女の命運が尽きたかと思われたその時、男達の背後に、巨大な影が現れた。

「……そこで何をしている」

「あん、今いいとこなんだよ。あっち行けよ!」

「そうだそうだ! そもそもこんな所に何しに…………誰だテメェ?」

 巨大な影は男だった。

 二メートル近い長身。男達二人分はありそうな肩幅。フード付きの黒いコートを目深に被ってはいるが、その鋭い眼光と、はち切れんばかりの筋肉を隠しきれてはいない。そしてその足には……右と左で別々の、金属製のグリーブを履いている。

 フードの男がカチャ、とグリーブから足音を立てて歩くと、下卑た顔の男達は思わず一歩下がってしまった。それだけの威圧感が、フードの男からは放たれていた。

「もう一度聞こう。そこで何をしている?」

 フードの男から放たれる威圧感に一度は退いたチンピラの男達は、しかしながら無謀にもフードの男に立ち向かう事に決めた。

「そっちこそ何しに来たんだよ! 部外者は引っ込んでな!」

「そうそう、今から俺たちはお楽しみなんでなぁ! ひゃははは!」

「……そうか、ならば……遠慮しなくても良いな?」

「な、なんだテメェ、やる気か?」

「こっちは魔導銃だってあるんだ! やっちまおうぜ!」

 ……この時、何も言わずにフードの男に襲いかかっていれば、あるいは未来は変わっていたかもしれない。

 少なくとも一撃を喰らわせることができた、という未来に。

「では……行くぞ」

 行くぞ、という言葉の直後に男に聞こえたのは、何かが猛スピードで衝突した時のような音だった。

「ひゃはは……は?」

ふと隣を見ると、さっきまで居たはずのもう一人の男が居ない。……いや、居た。さっきまで隣に居たはずの人間が、空から降って来た。

 ぐしゃっ、という鈍い音と共に降って来た相棒。男には何が起きたか全くわからなかった。

 そして、わからないまま

「終わりだ」

 相棒の男と同じ末路を辿った。

「……助けを呼んだのは、君だな」

 フードの男は、できる限り優しい声で少女に尋ねた。その努力に効果があったかどうかは不明だが、恐る恐るながらも少女は答えた。

「……は、はい。あの、助けていただき、ありがとうございます!」

 まだ少し怯えながらも、少女は礼を言い、頭を下げた。その姿は少女の礼儀の良さを感じさせるものだった。

「……困った時はお互い様というものだ。それに、君が諦めずにいたから、私はここに来る事ができた。それは、誇って良い」

 それは、威圧的な外見からは想像もできないほどに、優しげな声だった。

「え、えーと、あなたの名前は……の前に、わたしの名前からですよね。わたしはクレア。クレア・プトレマイオスです!」

「クレアか……いい名だ」

「そ、それで、あの、あなたの名前を教えてください!」

 少女は緊張しながらも、フードの男に名前を聞いた。するとフードの男は少し困惑したような顔をして――顔はフードに隠れて見えないため、あくまでそんな気がした――名前を告げた。

「私の名は……タウゼントだ」

 タウゼント。それが、彼女を救った恩人の名だった。

目標は完結。今の所中編くらいの分量を目指しています。

短くも、長くもない間ですが、よろしくお願いします。

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