地の果てへ
…
……
………
……………………がた……ん……。
何かに乗り上げたような大きな揺れ。轍の軋る、硬質な音。
唐突に高鳴った車輪の喧しさに、俺は眠りから急速に覚醒してゆく。
……がたん。
さっきよりも深く鋭い揺れ。
つい先だってまで静謐に満ちていた車内が、なぜざわめきはじめたのか
――その理由を、瞼を閉ざしたまま考えてみる。
……そうか。
汽車がトンネルへ入ったのだ。
かたん、ことん、と残響と共に減衰してゆく音に耳を傾けて、
自分の脳髄が完全に眠りから醒めるのを待っていると、
次第に一ツの名状しがたい感覚が嘔気のようにせり上がってきた。
それが一体何に由来するものなのか、まだ漠然としていてわからない。
ただ、一定のリズムをもって繰り返される轍の音に共鳴しながら、
俺の予感はそれ自身の輪郭を鮮明にしてゆく。
トンネル……トンネル……ここは?
自分が乗っている汽車の路線図を瞼の裏に思い描く。
思い出せない……何も思い出せないが……。
ようやく意識が冴え渡る――その時。
「ジッ……ジジッ……間もなく……ぐぜ、やま……コウドウ、具世山、坑道……ジ……終点……ジジジッ」
磁気テープで録音した念仏のような声が、旅の終わりを告げた。