002.デォール街
やや古めかしい雰囲気の時計塔を中心にして円を描くようにそびえ立つ外壁。中はは沢山の人で溢れかえり、そこらかしこで喧騒が聴こえてくる。規則的に建ち並んでいる家々は現代的な混凝土を使ったものではない、煉瓦を使った西洋風の造りである。
此処は〈デォール街〉、PWOの最初の街だ。
* * * * *
「これがVRMMOなのか………」
思わず感嘆の声を漏らしてしまう。まるで異世界に迷い込んだのではないかと思うほどにこの世界はよくできていたのだ。こうなると好奇心を抑えきることはできない。
「……少し街の探索してみようかな?」
僕はVRMMOというものを初めてやってみたので定石というものは知らないが、いきなり戦闘というのもどうかと思ったので先ずは街の探索からやっていこうと思ったのだ。
「マップ機能があるからそうそう迷子になることもないよねっ!」
* * * * *
やっぱりフラグでした。
「此処何処だろう………」
今は何故か路地裏のような場所にいる。本当にどうやって僕はこんな所に迷い込んだんだ?因みにマップ機能では流石に脇道や路地裏までは載ってない。
すると目の前にこじんまりとした家が見えてくる。文字は大分掠れていて読みづらいが、看板らしきものも立て掛けてある。
「あっ、これってお店かな?」
此処の人に聞けばもしかすると戻る道がわかるかもしれない。
「すいません、誰かいらっしゃいますか〜?」
「あ、はいー。少し待っててくださいー」
女性の声が聞こえてくる。しばらくしてから一人の女性が出てきた。
「はいー、どなたでしょうかー?」
「えっと……大通りに出る道を知りたいのですが……」
道を尋ねると女性は見るからに気を落とした顔をする。
「お客様じゃなかったですかー(´・ω・`)」
「えっと………何の店なのかわからないんですが……」
「あれ?看板が立て掛けてありましたよね?」
「看板らしき物の文字は掠れていて理解できませんよ」
女性は驚いた顔をして一度外へ出て、看板を確認したらすぐに戻ってきた。
「本当ですねー。気づきませんでしたよー」
「で、結局此処は何の店ですか?」
「はい。此処はスキルショップですよー」
* * * * *
「ありがとうございました」
女性から道を尋ね終えてこの場を離れる。
「にしても、思わぬ収穫があったな………」
ステータスウインドウを開く。
キャラネーム:〈銀竜草〉
性別:男性 種族:〈変幻妖族〉
[HP]136/136
[MP]136/136
[STR]10+1
[VIT]16+1
[DEX]30
[AGI]15
[INT]10+1
[POW]16+1
[LUC]10
スキル:【千変万化】【呪術】【】【】【】【】【】【】【】【】
装備:不壊の服(VIT+1,POW+1)、不壊の枝(STR+1,INT+1)
アイテムボックス:0/10 所持金:0G
新しく増えたスキル【呪術】は先程の女性、NPCの〈マリン〉さんから在庫処分と言われて貰ったスキルである。代金を払おうと思ったがまだエネミーを狩ったり依頼を受けたりした訳ではないので無一文。なので気は重いが有り難く貰ったのである。
「………狩りに行くか」