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第9回

フォルトだ。

でも、見たことのない回転だった。

意識してやってるわけじゃないだろう。

今の球は、坂本とやってる時にはなかった。

セカンドはどうだ?


!来た。

入れてくるだけだな。

これじゃあ、軽く抜ける!


「アウト!」

なに?ねらいすぎたか?

いや、西山の足を考えてかなり内側を抜いたはずだが。

まあ、切り替えよう。

さあ、ファーストサービス、もう一度見せてくれ。


来た!


その瞬間、平田の視線から球が消えた。

次の瞬間、平田の右腕に激痛が走った。


「平田!大丈夫か!」

「あ、ああ大丈夫。」

平田にはわけがわからなかった。確かにボールのコースを

見切ったはずだった。なのに、ボディに来た。

バウンドしてからが見えなかったのだ。

確かに速いサーブだ。でも、もっと速いのを打つやつはいくらでもいる。

そういうサーブにだって勝って来た。なのに・・・

まだ、腕がしびれている。

くそ、・・・。


どうしたんだ平田は。確かにボディに行った。(たまたま)

でも、俺のサーブなんかどうってことないだろうに。

「大丈夫か。」

「ああ、いいサーブ打つね。」

「そう?平田君に言われるとうそでもうれしいよ。」

「こら、調子にのるな。」

せっかく少しいい気分なのに、坂本が水を差す。

まあ確かに、偶然とは言え、腕にあてちゃったしな。

「そうよ。平田君、これで冷やして。」

佐久本さんが、かいがいしくシップを平田の腕に貼った。

それにしても、なんで平田は受け損なったんだろう。

そんなに、変な回転がかかっていたのだろうか。

もしそうなら、意識して打てるようになれば・・・

俺は、不謹慎にもそんな事を考えていた。


結局、そのまま時間切れになってしまい、解散となった。

俺以外は、みんな同じ方向らしく、いっしょに帰って行った。

親父はなにしてんだ。買い物の帰りによってくれるんじゃなかったのかよ。

休憩所の自販機で飲み物を買って、外のベンチに座って待っていた。

と、その時

「西山君」

振り向くと、「あゆ」が立っていた。

「あれ、なんでいるの?」

「うん。お父さんが迎えに来るから」

「そうなんだ。」

意外な展開に、対応できない。

「西山君、私の名前覚えてない?」

なに?知るわけないだろう?

「え、今日はじめてだろう?」

「K塾の成績表」

K塾?テストの成績表か?

「K塾行ってたの?えと、吉川さんだよね・・・」

K塾の成績表は男子と女子に分かれていた。

俺は女子の成績表はほとんど見ていなかった。

「ごめん、思い出せない。」

「私は西山けんとって名前思い出したよ。テストしか受けに来ない

コースなのにいつも上位にいるって、うわさになってたよ。」

へえ、そうなのか。これは喜ぶところか?

「あ、ありがとう」

「あゆ」はくすりと笑った。

笑うところか?

「ごめん、笑うところじゃないよね。でも、なんでお礼いうの?」

「いや、とりあえず、名前覚えててくれたから。なんとなく」

「ふうん。ところで今日のサーブすごかったね」

「いや、まぐれ。偶然。あれ、意識して打てたらなぁと」

「そっか。でも、そのうち打てるよ。根拠のない応援でした。」

笑ってしまった。

「笑うところ?」

しまった。ミスったか。

「ごめん。お礼をいうところか」

こんどは「あゆ」が笑った。

やれやれ。俺は女子と話すのが苦手だ。何を考えているのかわからない。

「じゃ、またね」

突然、「あゆ」は去った。お迎えが来たのだ。

「じゃ、また」

思わず、返したが「また?」

深く考えるのはよそう。ふつうの挨拶だ。また、電車で会うこともあるだろうしな。

しかし、その日から間もなく、また会うことになるとは思わなかった。






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