第7回
まず、平田くんと坂本が打つことになった。
ウォーミングアップだというのに、坂本はバンバン打つ。
軽く打つという事ができないのだ。
あああ、と思って見ていたが、気が付いた。
平田くんは、苦笑いしながら難なく、軽く返している。
俺の学校じゃみんな苦労するのに。
力が違うんだ。
平田くんが本気で打ったらどうなるんだろう?
「よし、じゃあ4ゲーム先取でもやろうか」
平田くんが言った。
あっという間だった。
平田くんのサービスゲームは、すべてファーストサービスで終わり。
4本打ったら、ラリーはなし。坂本は足が速いから、何とか
返すのだがネットさえ越えない。
逆に坂本のサービスゲームは、平田くんのリターンエースで終わり。
4−0。
「やっぱり、強すぎ。お前。」
「ん〜。まだまだだね。」
どこかで聞いたようなセリフだが、これは自分に言ったんだな。
平田くんと坂本は飲み物を買いに行った。
あとには、女子二人と俺だけになった。
「西山君も東光?」
「あゆ」ではない女子が話しかけてきた。
「ああ、うん。あんたらは?」
「桜花女子。あ、あたしは佐久本 美紀。こっちは吉川亜由美。」
「俺、西山けんと。」
「けんとぉ?」
ああ、いやだいやだ。何でこん名前つけたんだよ。
「スーパーマンだね。」
はじめて、「あゆ」が口をきいた。
こういう時は開き直るに限る。
「まあね。今の俺は仮の姿だ。」
くすっと「あゆ」が笑った。
「さむぅ。」
さくもとぉ。
と、その時、坂本たちが戻ってきた。
「あれ、何してんの?打てよ。時間もったいないよ。」
「そうだよ。今度は女子、やったら?」
俺はいつやるんだよ。
「平田くん、教えてよ。球出ししてよ。うちら二人打つからさ。」
ふん。そういうことか。
「え、まあいいけど。」
と、言いながら、平田くんは「あゆ」をちらちら見てる。
ふん。そういうことか。
「よし、さあやろっ。あゆ。いくよ!」
いけいけ。
そんなこんなで、目の前で臨時テニススクールが始まった。
女子二人も、けっこうやる。力で打つんじゃなくてスイングで打つって感じだ。
それにしても、平田くんの球出しはうまい。
タイミングといい、強さといい。
うちの先生より絶対うまいぞ。ほんとにラケットが腕の一部という感じだ。
「西山。平田はな、吉川のこと好きなんだぞ。」
わかってるよ。
「へえ、そうなんだ。」
「ああ。でもな、平田のこと好きなのは吉川じゃなくて佐久本なんだ。」
わかってるって。
「へえ、うまくいかないなあ。」
「そうだ。」
「で、お前もあゆが好きなのか」
「あゆってなれなれしく呼ぶな!」
おうおう。図星かよ。
ということは、ここには、片思いのすれ違いばかりが集まってるわけか。
それはそれで面白いな。
「じゃ、俺はどうすればいいいんだ?」
「お前?知るかよ、そんなこと。お前、好きな女子いないのか?」
「いない。だいいち、女子と知り合う機会ないし。関心ないし。関心もたれないし。」
「はあ?ばかか。お前。俺たち男子校だぞ。それも6年間。
このまま大学生になってのいいのか?えらいことにになるぞ。」
えらいことってなんだんよ。わけわからん。
と、不毛な会話をしていたら、臨時テニススクールが終わったようだ。
「お待たせ、西山君。坂本と打てば?」
「ああ、坂本、やろうぜ。」
「よっしゃ」
軽くラリーした後、といっても、坂本相手はつかれるけど。
4ゲーム先取をやることにした。
まずは、俺のサービスからだ。
いくぞ、手首の開放だ!




