表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/30

第4回

7月も半ばをすぎ、ハードコートの照り返しはいよいよ強くなっていた。

進学校などというと、夏休みも宿題がたくさん出され、

部活動なんてろくにやらない。と、思う人がほとんどだろう。

ところが、高校受験がなく、6年間同じ学校で過ごすというのは

ある意味ゆとりがある。

大学受験なんて、中学1年の俺たちにははるか彼方のように思えた。

みんな高校2年の秋の大会まではしっかり続ける。

週に3日しか練習できないけれど、その時間の集中力はなかなかのものだ。


俺の所属するAチームは、夏休みも半日だがほぼ毎日練習がある。

両親は意外だったようだが、運動の苦手な息子が

はじめて認められて楽しくやっている様子にうれしそうだった。

まあ、1学期の成績もそこそこ良かったからだが。


成績と言えば、坂本もすごい。数学はいつも満点近くとる。

数学だけはかなわない。数学が大好きだという。

まあ、これも向き不向き。


ところで、中学、高校の団体戦というのはシングルス3名、ダブルス2組で

1チームを組む。つまり、3勝すれば勝ち。

シングルスは、サーブ、ストローク、レシーブ、ボレーのすべてが

平均以上でなければならない。その上で、エースがとれる武器がいる。

さらに、当然のことながら、広いコートを素早く動ける足もいる。

つまり、チーム内の上位3人が務めることになる。


中学1年でも秋には新人戦がある。小さな大会だが、デビュー戦だ。

8月の合宿でレギュラー7名を決めるらしい。

俺はとてもシングルスでは太刀打ちできない。はじめからダブルスを狙っていた。

問題は、誰と組むかなんだ。というよりも、誰が組んでくれるかだ。

そのためには、俺も何か武器が必要なんだ。ダブルスでこそ活きる武器が。


先生に言われて、まず原口さんを観察した。原口さんは高2でダブルス1。

つまり、1つ勝ちが計算できるペアだ。相方は吉村さん。小柄だが、とても機敏に動く。

原口さんがドーンとサーブを打ち込み、かえってくるへろへろ球を吉村さんが

スパッとボレーで決める。美しい。

吉村さんのサーブは原口さんのようなスピードはない。

しかし、かなりの回転のかかった球で相手も強くは打ち込めないことが多い。

何回かラリーになることが多いが、吉村さんが左右に素早く動き返しまくる。

そのうち、浮いた球が返ってくる。それを背の高い原口さんがなんなくボレー、スマッシュで決める。

すごい。


極端な言い方をすれば、シングルスは本当の力勝負。

でも、ダブルスは各人がオールマイティである必要はない。

お互いの長所を活かせる組み合わせであれば戦える。


しかし・・・とりあえずチーム内での順位戦なるものがある。

先生は言った。

「順位戦上位7名で団体戦に出る」

やばい。シングルスでは、誰に勝てるか?

2名には勝たなければならない。

長谷川、こいつには絶対に勝てない。中2のレギュラークラスといい勝負する。

高木、うーんこいつもうまい。体は大きくないが、ミスしない。

内山、足が速い。小柄だが、バネがある。拾いまくる。

佐々木、気が弱いのがたまに傷で、うまいのにミス連発することがある。う〜ん、微妙。

坂本、強い球打ちやがる。ベースラインで打ち合ったら勝てない。

武田、一回勝ったことがある。でも一回だけ。50回位負けてる。

川村、こいつとは五分五分かな。可能性はある。でも川村も思ってるだろうな。

上村、物静かな男だが、持久力抜群。多分一番だろう。サーブが弱いのが狙い目だが。

鈴木、いい球打つんだけどミスが多い。チャンスボールほど力んでしまう。

まあ、確立からすると川村と鈴木と上村、それに俺の4人から2人が補欠に回る可能性が高い。

いや!それでは、物語にならんだろう!

面白くないだろう!


面白くしてみせる!と、根拠のない雄たけびを心の中でつぶやいた俺でした。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ