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第24回

もちろん、亜由美も見ていた。

最初は、角田のファーストをまったくレシーブ

しようとしない西山にあきれていた。

なんか、感じ悪いなどと思っていた。

しかし、一緒に見ていた平田はこう言った。

「やるなあ、西山君。」にやにやしながら。

「なんで?相手に失礼じゃない?」

「まあ、そう見えるかもね。

 でもね、相手に勝つために、いや、負けないために

 全力をつくす、てのはいろんな形があると思うよ。」

「どういうこと?」

「西山君には悪いけど、多分まともにラリーしたら勝ち目ないよ。

 じゃあ、どうするか、だよね。

 とりあえず、ファーストサーブは通用する。

 なら、キープはできる可能性が高い。

 キープできるってことは、負けないってことだよね。」

「そ、そうかな。」

「そうだよ。キープしてたらチャンスは来るもんさ。」

なるほどね。そういうものか。

そう言われれば、何かそれらしく見えてくる。

正直、西山がシングルス1と聞いた時は、かわいそうにと思ったのだ。

多分、こてんぱんにやられるんじゃないか。

ところが、小憎らしいくらいの態度でプレーしている。

スコアは接戦なのだが、全然手に汗握るという感じではない。

西山君て・・・天然?


結局、角田の自滅のような形で勝負がついた。

角田が気の毒に思えてきた亜由美だった。

一方的に、西山に軽い失望を覚えた亜由美だった。


そんなこととも知らず、西山は目だけ動かして

亜由美の姿を探していた。

いたんだけどなあ・・・

けっこう俺、やったと思うんだけどなあ・・・

「こら西山。」

なんだよ、坂本かよ。

「なに」

「お前、またシングルスかな?」

「知るかよ。でもかんべんしてほしいよ。

 もう無理。」

「なんで、角田に勝ったんだぞ。」

「あほ。あれはな、たまたまファーストがよく入って、

 たまたまタッチが俺をだまして、たまたま角田がプレッシャーに

 負けたからだ。」

「たまたまの3乗か」

「そうだよ。でないと、俺が角田に勝てるわけないだろうが。」

「まあなあ。でもレシーブもけっこういけてたぞ。」

「そうなんだ。なんか、力がうまく抜けてさあ。まああれもたまたまだな。

 それより、長谷川どうなんよ。」


長谷川の手首はテーピングでぐるぐる巻きになっていた。

「今回は無理だな、長谷川、残念だがな」

「いえ、しょうがないです。それよりまた西山でいくんですか?」

「いや、いかん。修実はたぶんシングルス1は捨ててくる。

 今の試合見てたからな。やばいと思ってるはずだ。あのやろう」

あのやろう、とはもちろん修実の顧問、柳沢のことだ。

「西山はな、シングルス2で使う。」

「シングルス2?」

「ああ。多分、柳沢はエースである自分の息子をシングルス2に使うだろう。

 西山とはあてたくないはずだ。だから、あててやるのさ。」

「よくわからないんですが。」

「あのな、エースが負ける、あるいは、大苦戦するってのはな、

 チームの士気にかかわるんだ。うちに対する苦手意識を植えつけてやるんだ。

 これから、何回もぶつかる相手だからな。今回だけの勝負じゃないんだ。」

「はあ、そういうもんですか」

「お前な、うちのエースなんだぞ。同じだぞ。

 まあ、今回はお前のいない東光に負ける、負けないにしても

 苦戦するってのは修実にとって屈辱なはずだ。」

「先生、大丈夫ですか?柳沢先生と何かあったんですか?」

別に何かあったわけじゃない。ただ、気に入らない。

修実は確かに強い。それは、生徒が頑張っているからだ。生徒が偉いんだ。

それをあいつは、自分と学校のステータスとしか考えていない。

それが許せん。頭に血が上っている橘には、自分も西山を利用していることにまでは

気が付けなかった。

結果的にはそれが、とんでもない事態を招くことになるとも知らず・・・





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