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第22回

東光学院は2回戦の城南中にも勝った。

エースの長谷川が不調でシングルス1を落としたにも

かかわらず、あとを全部とった。

どの試合も接戦にはなったが、押し切った。

西山と鈴木は1回戦突破で無駄な力が抜け、

スコアこそ6−4だったが相手にブレイクを

許さなかった。


甲北大付属の監督、水沢は自校の試合は見ず、

東光と城南の試合を見ていた。

長谷川以外はマークしていなかった。

おそらく次の相手は城南とふんでいた。

ところが・・・


シングルスで2つは絶対とらなければまずい。

あのダブルス2は危険だ。

あのサーブが今の調子決まり続けるとおそらく勝てない。

何か策が必要だ。

何とか、リズムを狂わせる必要がある。

気持ちよく打たせていてはだめだ。

さて、どうするか・・・

水沢の頭はフル回転していた。


甲北大付属は1回戦、2回戦と圧勝していた。

あまりに相手との差がありすぎた。

あまり体力を消耗することなく勝ち上がったことは

好ましいことではある。

ただ、接戦を制して自信をつけて来た相手とやる時に

受身になってしまわなければ、の話だ。


さて、どうなるのか?


その頃、小さなアクシデントが起こっていた。

長谷川は右手首に違和感を感じていた。

城南中との試合中、バックハンドで返した時に一瞬だが

電気が走った。

長谷川のバックはシングルハンドだ。

城南中のシングル1、川崎のフォアからの強打を

その後バックでは返せなくなっていた。

他のメンバーの頑張りで勝ちあがることはできたが、

もう勝てない。

いや、それどころか、試合に出ることも無理だろう・・・

「先生、すいません・・・」

橘はうなだれる長谷川に言った。

「まったくだ。なんで、そうなるまで、無理をしたんだ。

 まあ、お前に負担がかかりすぎだった。

 すまなかったな。

 しかし、大丈夫。みんな頑張るさ。

 まだまだこれからだ。みんなを応援しに行くぞ。」

しかし、橘は悩んでいた。

どうチームを構成するのか。

何より、あきらめてはいなかった。

どうすれば甲北大付属から3つ取れるのか・・・


シングルス1は捨てるしかないか・・・

と、考えた瞬間、「捨てる」という言葉が心に浮かんだ

自分に対して怒りがこみ上げて来た。

負けるために試合する人間なんかいない。

なんて失礼なことを考えたんだ、俺は。

よし、勝つのが厳しいのは間違いないが、

絶対冷や汗を流させてやるぞ。

不適な笑みを浮かべる橘だった。


メンバー交換表を見た水沢は少し驚いた。

シングル1、西山。

ダブルス2の選手じゃないか。

いいサーブを打つ。東光で、勝ちが読めるダブルスだろう。

それをあえて・・・なぜ・・・

しょせん、ダブルス向きの選手だ。どう見ても、

うちの角田の相手ではない。

橘はいったい何を考えている?

「角田、まあサーブだけの選手だ。しかし、油断はするな」

「はい、どんなサーブか楽しみですよ」

しかし、その余裕は、消し飛んだ。


見えない。

確かに速い。しかも、バウンドしてからが見えない。

なんだ、これは?

角田は、テニスの試合で初めて恐怖を感じた。

もし、このサーブを続けられたら・・・

ブレイクするのは難しいかも知れない。


あっという間にファーストゲームが終わった。

西山は、コートチェンジをしながら笑いをこらえるのに苦労していた。

橘はこう言った。

「いいか、とにかくファーストを入れろ。

 ブレイクなんか考えるな。

 とにかく、キープし続けろ。

 相手のサービスゲームは、適当にやれ。」

適当にか。なんて指示だ。

まあ、まともにラリーなんかしようとすれば

振り回されて消耗するだけだもな。

というわけで、角田のファーストサーブが入った時は

動かないことにした。

セカンドの場合にだけ、思い切って打ち込むことにした。

すると・・・


角田は、絶対にキープしなければという思いから

慎重になりすぎていた。

それでも普通にやれば何と言うことはなかったはずだ。

しかし、精神状態がそれを許さなかった。

それに、西山のプレーにも戸惑った。

とにかく、ファーストは全くレシーブしない。

なんだ?何を考えている?


40−0。

とりあえず、あと1本決めればいい。

しかし、ファーストをわずかにはずした。

すると、西山が少し前に出た。

ふん。セカンドだからってなめんなよ。


西山は当たればラッキーくらいに考えていた。

きた!

速さはないが、高くはねる。

しかし、西山は自分の身長に感謝した。

届く!

手首の開放だ!

フォアハンドでストレートに返した。

入れ!


西山のレシーブは、ネットにつめた角田のサイドを見事に抜いた。

しかし、わずかにアウト。

「ゲーム、角田」

これで、1−1。


ただ、自分のセカンドは打ちこまれる・・・

いよいよプレッシャーを感じる角田だった。












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