表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/30

第2回

学校は小高い丘の上にある。

電車を降りてから、ゆるやかな坂道を

15分くらい歩く。

中学部、高等部の生徒がまじりながら

ぞろぞろと歩いている。


男子校なので、はなやかさは全くない。

甲高い笑い声や、会話もない。

静かなものだ。


夏を迎えて、早く登校するようになっていた。

少しは涼しいからだ。

すると、毎日同じ電車になる上級生に気が付いた。

同じ制服だが、あきらかに高等部だ。

テニスバッグを担いでいる。


俺は中1としては背が高い方だ。170cmはある。

身長は負けていないが、厚みが違う。

なんか、かしこそうにも見える。

それよりなにより、いつも決まった女子高生といる。


俺は俗に言う「晩生おくて」で、女の子にはほぼ無関心だった。

それでも、可愛い子だと思った。

ただ、彼氏と彼女という風には見えなかった。

時々、小声で話しはしていたが笑顔がない。

特に当の上級生の態度はよろしくない。

自分からはほとんど話しかけない。話す時も

めんどくさそうだ。


俺たちは先に降りるのだが、彼女?に会釈もしない。

さすがに、いかがなものかとは思っていた。

が、俺には関係ない。

ただ、何となく気になっていた。


そのうち、その上級生の名前が市村だと知った。

テニス部の説明会に、キャプテンとして来ていたのだ。

その上、実は県大会でも上位に入る実力者と知った。

そんな人もいるのか。

なめていた俺は少し驚いた。

「お前、市村さん知らないのか?」

坂本があきれたように言った。

「いや、前から知ってるよ。」うそじゃない。

「じゃ何でビックリしてんだよ。この前、朝礼で紹介されてたろうが。

 市の大会優勝。」

俺は何をしていたんだ?立ったまま寝ていたのか?

「おお、そうだったよな。遠くてよくみえなかったのかも」

そういうと、坂本はフンと鼻を鳴らして

「俺が背が低くて、列の先頭なんでよく見えた、と言いたいのか」

気にしてるんだ。

「まあそうだ。」

「けっ。卒業する頃には見下ろしてやるからな」

無理だろう。お前の両親、今の俺より背が低かったぞ。

しかし、部活始まったら、間違いなく見下される。

運動に関しては、すべてにおいて坂本に勝てない。

でも、いいやつだ。正直でわかりやすい男だ。

それに、俺よりも女子への関心がはるかに高い。

一度、聞いたことがある。

「何で、男子校に来た?国立の付属に行けば良かったのに」

「言うな。抽選で落ちた。」

「そうか。」

「でもな、うちの学校、同じ系列の女子校があるだろう。

 交流があるらしいぞ。テニス部もあるはずだ。」

そうか。野球やサッカーだと交流はないよな。

「それが動機か?」

「もちろん、それもある。でも、親がテニスやってるんだ。

 俺も少しやらされた。けっこう面白かったよ。」

なるほどなあ。正直な男だ。

「そういうお前は何で?」

「お前が誘ってくれたから」

そう答えると、坂本はうれしそうな顔してくれた。いいやつだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ