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第18回

その頃、坂本と西山は市ジュニア大会会場にようやく到着していた。

どうせ平田は勝ち進むに決まっているだろう。

そんなに早く行く必要ないだろう。

などと、適当に時間を決めて来たのだが、次が

もう決勝戦とは思っていなかった。

「おい、やばかったな。」

「ああ、でもやっぱり平田すごいな。」

自分たちのいい加減さの反省もせず、決勝の行われる

センターコートに向かった。


センターコートだけは立派だ。

何年か前に国際大会が行われたため、改装されていた。

観客席がぐるっと取り囲んだコートは主役の登場を待っていた。

ほぼ満員の観客の中には、今から試合をする2人に敗れた選手も

多くいた。

その中には、準決勝で平田に敗れた佐藤もいた。

あまりの完敗に、自分のどこがいけなかったのかさえわからなかった。

このまま帰るわけには行かない、と思った。

平田のプレーを冷静に、客観的に見たかったのだ。納得したかったのだ。


そんな真剣に見つめる人間もいるというのに、お気楽な2人は

(もちろん、SとNだが)

お互いに気づかれないように、亜由美の姿を目で探していた。

「あ、佐久本がいるぞ」

坂本が見つけた。

けっ、何が佐久本だと。探してたのはその隣だろうが。

などと心中で毒づきながら、先に発見されたことがくやしい西山だった。

「どこ?」

「あれ、スコアボードの真下の席」

「お、いいとこ座ってんなあ」

「そりゃ、早くから来てたんだろう。お前のせいだぞ」

「なんで、お前が早くから行っても暑いだけだ、なんて言うからだろうが」

「うるさい。出てきたぞ!」

平田が先に出てきた。小柄だ。

その後、出てきたのは、なんと東光の先輩だった。

「なんで?石川さん、準決勝で負けたはずだろう?」

坂本が言うと、隣の席にいたおじさんが言った。

「準決勝の相手が、体調不良で辞退したんだ。特例で石川が進んだ。」

「そうなんですか、ラッキーだなあ」

「人の不幸をラッキーなどというな!」

いきなり、しかられた。よく見ると、東光の物理の先生、澤田だった。

「あ、先生でしたか」

「坂本、お前、注意散漫なやつだなあ。気づかんか、普通。」

先生、違うんだよ、こいつ吉川亜由美を探すの必死だったからですよ。

「す、すいませんでした。

 でも、面白いことになりましたね」

「ああ、石川のことだから、ただでは負けんだろう。何かやるぞ」

「負けますか」

「ああ、普通にやれば勝ち目ないな」

そうだろうなあ。石川さんは3年でトップだが、相手が悪い。

でも、頭が良くて勉強でもトップクラスだ。何か考えているい違いない。

西山も期待していた。


が、期待は見事に裏切られた。

平田が強すぎた。

石川は色々しかけるのだが、まったく通用しない。

逆に平田は実にオーソドックスな攻め方で通した。

ラリーでも、ネットでも主導権を譲らなかった。

6−3。

石川だってつまらないミスもなく、よく戦った。

しかし、スコア以上の差があった。

西山はあらためてシングルスのトッププレーヤーのすごさを感じていた。

しかし、もしダブルスなら、とも考えていた。

平田の良さを消す攻め方があるのではないか、などど厚かましいことを

考えてもいた。

「おい、出ようぜ。じゃ、先生、失礼します。」

「お、まっすぐ帰れよ」

どういう意味だよ。ガキあつかいだな。

ま、ガキだけど。


坂本は、佐久本美紀は絶対の平田のところへ行くと読んでいた。

すなわち、平田のところへ行けば、そこに亜由美もいるはずだと。

西山も読んでいた。坂本について行けば、その先に亜由美がいるはずだと。


目的だけは共通の2人は、すぐに結果を得ることができた。

案の定、美紀は平田が着替えて控え室から出てくるのを待ち構えていた。

そして、その隣には所在なげに亜由美が立っていた。


「お前ら、来てたんだな」坂本は声をかける。

なんとしらじらしい、と西山は思ったが。

先に亜由美が気づいた。

西山君。会った。何かがおきる・・・かな?

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