第15回
二学期が始まった。
中学1年というのは、まだまだ子供だ。
と、言う人がほとんどだろう。
それは、単に先に生まれただけの者に言う資格はないのだ。
誰でも、14歳を通る。その時の過ごし方が問題なのだ。
うまく行かないのが普通だ。もんもんとするのが普通だ。
怠けてしまいたくなるのが普通だ。逃げてしまいたくなるのが普通だ。
でも、結果として、何とかくぐり抜ける。
自分の生きた14歳に自信をもてない大人が、14歳を子供扱いする。
長く生きればいいわけじゃない。どう生きたか。
校長の話は長い。いい話だが、何回目だ?
覚えてないんだろうか?
こういう時は、山を見る。
校舎の裏はすぐ山だ。生物部の連中は時々いろんなものを採集しに入る。
俺らも時々ランニングで登る。
頂上まで登ると、実は桜花女子の校舎が見える。
双眼鏡持って登るやつもいる。
俺も、今ならそうするかもな。
あれから、なんだか気になる。
道で桜花女子の制服見ると、ドキッとする。
俺も、ようやく芽生えたか?
でもなあ、なんかなあ。
今、俺が一番したいことはなんなんだろう?
よくわからなくなって来た、今日この頃だ。
しかし、ああ、まあいいや。中学生なんて、非現実的なものだ。
それより!新人大会だ。
俺は気の合う坂本と組みたかったが、あいつ。
「俺はダブルスなんて、やだね。」
などと、あっさり言いやがった。
そうなると、あとのメンバーからすると
4位、内山。6位、佐々木。7位、鈴木。
たぶん、内山とのペアが一番いいんだろうな。
すばらしく粘り強い。少々のことでは、抜かれない。
相手が根負けするのだ。
内山が後ろにいると安心だ。
ま、俺が選べるわけじゃないんだけどな。
ああ、早く本格的にダブルスの練習がしたい。
お、やっと話が終わった。
その頃、亜由美は少し困っていた。
昨日、平田と坂本から電話を受けていたのだ。
それも、同じ内容の。
「吉川さん、今度、市のジュニア大会に出るんだ。見にきてくれないかな。」
「おう、吉川、今度さ、平田が出る大会があるんだ。よかったらいっしょに
見に行かないか?」
坂本君と行けば、平田君はどう思うだろう?
一人で行って、坂本君と会ったら、どうなる?
どっちも、友達だ。私には。
でも、二人はそうは思ってないよね・・・
と、そこへ、カバンの奥で携帯が震えた。
「平田君の試合、見に行かない?」美紀だ。
これだ!救世主!
美紀に誘われて先に約束してたから、と言えば
どちらも仕方ないと思ってくれるだろう。
て、なんでこんなに気をつかわなきゃいけないのかな。
だから、感情ってめんどくさい。
それより、西山君は見に行くのかな・・・
なんか、気になる男子。んん、なんでかな。
よく知らないのに。だいたい、向こうはどう思ってるんだろう?
私のことなんか、全然気にしてなかったら・・・
ま、いいわ。14歳の女の子なら普通よね。
花より、男子ってか。
本当に何かおきるなら、また偶然会ったりするよね。
平田君の出る大会、見に来るかどうか。
そこで、また会えば、何かおきる。
そういうことにしておこう。
なんか、楽しくなってきた。