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第14回

いよいよだ。

今日まで、サーブとボレーを必死で練習してきた。

ストローク戦では絶対に不利になる。

いいポジションで打てればそこそこやれる自信はある。

しかし、その自分がうまく打てるポジションに入る

足が俺にはない。

サーブで崩して、ネットダッシュ、そしてボレーで決める。

抜かれたらあきらめる。これしかない。

ただ、それはファーストが入った時だ。セカンドの時にはどうする?

ラリーになる。相手を左右に振れるか?深い球が打てるか?

ああ、悩んでもしょうがない。やるしかないんだ。

それにしても、初戦が長谷川とは。ま、考えようだ。

負けて当然。ひきずる事はない。最初に一番強いやつとやるほうがいい。


橘は楽しみにしていた。

今年は、面白いのがそろった。それぞれ個性がある。

実は、団体戦のメンバー構成の案はできていた。

番狂わせはあるか?

あるとすれば・・・


長谷川は考えていた。手ごわいのはいるが負けるとは思っていなかった。

どう勝つかを考えていた。特に初戦の西山には圧勝しなければ。

俺の強さを、全メンバーに見せ付けてやるんだ。

俺がエースなんだ。

これは、傲慢でも、自信過剰でもなかった。事実、他を寄せ付けない強さがあった。

長谷川のシングルス1は規定路線だった。


そして、全員が注目する中、長谷川の初戦が始まった。

1ゲーム、6ゲーム先取。橘も西山が1ゲーム取れるかどうか、と思っていた。


しかし、予想外の出来事がおきた。

まず、サーブを取った西山がいきなりゲームを取ったのだ。

それも、サービスエース4本で。ありえない事だった。

西山が最初に打ったサーブに、長谷川がまったく反応できなかった。


いつのまに・・・

橘は自分の不明にあきれていた。確かに西山はよくサーブの練習をしていた。

なかなか速いサーブを打つようになっていたようだった。

しかし、普段の練習ではみんな普通に返していた。

それが、今、目の前で見たサーブは全然違う。

速い上に、バウンドしてからのコースがとんでもなく変化する。

長谷川といえども、1ゲームの中では対応できなかったのだ。


よしよし、みんな驚いてやがる。本邦初公開だからな。

なんせ、あの平田が受け損ねたんだからな。

とにかく、慣れられるまでにできるだけファーストを入れ続けるしかない。

長谷川は動揺してる。今のうちに、もしブレイクできたらなあ。

「フォルト!」

案の定、長谷川のやつ、サーブが狂ってる。セカンドを深くリターンするぞ。


こうして、大方、いや、全員の予想を裏切って、西山がリードする展開になった。

さすがに長谷川も、途中からは気を取り直して、自分のサービスゲームは何とかキープしていた。

しかし、西山がこのサービスゲームを取れば終わる。

まだ、西山のファーストサーブを一度も返せていない。そして・・・


「ゲーム、西山!6−3!」

なんと!勝ったぞ!長谷川に勝ったぞ!

まさか、ここまで通用するとは思っていなかった。

秘密兵器にするつもりだったので、全員練習では打っていなかった。

逆に、どれくらい通用するのかもわからなかった。ぶっつけ本番だったのだ。

結果的には、大成功だった。

まあ、次はやられるだろうけどな。


ただ、そううまくいくわけがないのであって、結局順位は10人中5番だった。

けっこう負けた。疲れてくると、ファーストの入りも悪くなる。

それに、あとから当たるやつは、みんなかなり下がって待つようになった。

坂本なんか、なんとか当てて返してくる。まあ、それを俺が決めればいいんだが、

これがミスるんだな。

でもまあ、上出来だった。とりあえず、7人のレギュラー枠に入ったんだからな。

大満足だった。

長谷川もたいしたもんだ。結局、俺以外には全部勝った。文句なく1番だ。


「西山」

タッチが、全試合終了後、俺に声をかけてきた。

「はい」

「よくがんばったなあ」

「はい。秘密兵器ってのは姑息でしたが」

「いや、そんなことはない。今日にかける気持ちの勝利だと思うぞ。

 それより、お前、あのサーブ、誰に教わったんだ?」

「原口さんにヒントをもらいました。それで、たまたま、一度打てたんです。

 それを何とか意識して打てないかと練習してました。」

「そうか。原口ね。きのう帰った市村と原口にも見せてやりたかったな。」

「ですね。でも、俺は他がまだまだですから。

 サーブなんて慣れられたら返されますから。」

「そうだな。あとは、セカンドを磨くことだな。

 とにかく、お前にはダブルスやってもらうつもりだ。

 夏休み明けには、誰と組むのがいいか、試してみるつもりだ。

 とりあえず、ダブルスの勉強しといてくれ。」

「わかりました。」

よし、思い描いていた通りの展開だ。

しばらく学校での練習はないけど、また坂本とでも練習しとかないとな。


「西山!」坂本だ。

「おう。」

「お前、やるな。平田に打ったやつ、マスターしたんだな?」

「ああ。俺はお前みたいに足速くないし、長いラリーじゃ勝ち目ないからな」

「なるほどなあ。自分をよくわかってるってことか。」

「そういうこと。それより、また竜王山で練習しようや。」

「そうだな。お前のサーブ受ける練習したいし。」

「ああ、1本100円で打ってやるよ」

「けっ、ならリターンエースとったら200円とるぞ。」

こうして合宿は終わった。

帰ったら、宿題だあ。

 



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