第1回
第一回
「受験の神様」なんていない。
特に中学受験なんて、向き、不向きでほとんど決まる。
俺は塾に行かなかった。家庭教師もいなかった。
親は熱心だったけど、普通のリーマン家庭としては
高いお金払うのは嫌だったんだろうな。
なんと虫のいい話だろうと、今は思う。
でも、かなり熱心に勉強はみてくれた。
高校や大学受験じゃないんだから、何とかなった。とは思う。
とはいうものの、今大学生の俺は、結局塾や予備校には
行かなかった。でも第1志望に現役合格だ。
向き、不向きがあるんだ。自慢しているつもりはない。
何にでもある。
俺は、足が遅い。
だからサッカーやったら、後ろの方でデフェンスしか
やらせてもらえない。
しょうがないよね。不向きなんだ。
「頭がいい」なんてのは幻想だ。
合格したんだから、みんなそれなりに「頭」はいいはずだろう。
でも、やっぱり向き、不向きがあるんだ。
順番がついてしまう。
がんばっても、やり方間違えば結果は出ない。
でもやり方教えてもらっても、結局向き不向きがある。
親は子供を、子供は自分を知らなければならないんだ。多分。
少しでも早く。
とにかく、俺は全国でも有数の私立男子校に入学した。
それなりに誇らしかったし、うれしかった。
なにせ子供だから、男だけで6年間てことも深く考えなかった。
入学してすぐに友達はできた。
授業やはじめての定期試験も、別にどうということもなかった。
宿題はけっこう多かったけど、それもなんとかこなせた。
相変わらず、足はおそかったけど。
そんなこんなで、1学期が終わるころ、クラブ活動に参加する時期が来た。
男子だけだからか、とりあえず全員が運動部に入る決まりだった。
実は、内心、野球部はどうかと思っていた。
足は遅かったけど、投げたり打ったりは得意だと思っていた。(特に根拠はなかったが)
しかし、野球部希望の連中を見て、すぐにやめた。
スポーツやらせたら、何でもOKというやつらばかりだ。
これはいけない。
そんな時、一番気の合う坂本が言った。
「テニスやらないか?」
「てにす?」
「いや、テニス」
何で、テニス。と思ったが、すぐに気が付いた。
テニスなんて、小学生の頃からやってるやつなんて、そうはいない。
ましてや、受験勉強ばかりやってきたやつばっかりだ。
テニスならみんな同じスタートラインだろう。
足がおそいのも関係ないだろう。(これは大変な間違いだった・・・)
即断した。
「やろう」
こうして、俺の本当の十代の物語が始まった。