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第42話 隠密課の執念

「誠にもうしわけございません……」

 アスファルトの上に膝をつき、しのぶは深々と頭を下げた。

 彼女の前に立っているのは隠密課課長、柳生(やぎゅう)影勝(かげかつ)だった。影勝は胸ポケットからライターを取り出し、口にくわえた煙草に火をつけた。

 昼前に差しかかり、太陽がビルの谷間を明るく照らし始めていた。

「かくなる上は腹を切ってお詫びを……」

 忍の覚悟に、影勝はなにも答えなかった。

 一息に煙をくゆらせ、それからくちびるを動かした。

蘆屋(あしや)道遥(みちはる)が脱出したのは、間違いないのだな?」

「ハッ……赤羽(あかばね)ゲンキ殿の目撃によれば……死体も見つかっておらず……」

 影勝は煙草をつまんだまま、じっとその場にたたずんだ。赤く燃える灰が、時折ひらひらと宙を舞った。忍はうなだれたように、地面を見つめるばかりだった。

 一羽のカラスが空をよぎったところで、ようやく影勝が言葉を発した。

「敵の行方は京都だ……すでに京都支部から、式神飛来の報告があった。おまえには今からヘリで大阪へ飛んでもらう」

 処罰の代わりに指示を言い渡された忍は、ハッと顔を上げた。

 いくばくかの安堵と、いくばくかの緊張が、眼鏡の奥で混じり合った。

「大阪へ……ですか?」

「そうだ。蘆屋を京都へ運ぶ経路は色々考えられる……成田あるいは羽田から関空、陸路ならリニアで信州を通過するか、それとも裏をかいて東海道新幹線を使うか……高速道を乗り継ぐという手もある。いずれにせよ、もはや捕捉できん。この時間帯からの交通規制は不可能だ。おまえは関空から大阪経由を押さえろ。私はリニアで陸路を追う」

 あまり納得のいかない顔で、忍はうなずいた。

 その仕草に、影勝は眉をひそめた。

「どうした……? なにか言いたいことがあるなら言え」

「い、いえ……ご指示通りに……ただ……」

 忍は言葉をにごした。

 影勝は携帯用の灰皿を取り出し、その中に吸いさしを放り込んだ。

「なんだ? 作戦遂行上、有益と思う意見は率直に述べろ。いつもそう言っている」

「思うに……京都の一点読みは、少々危険ではないかと……」

 京都に蘆屋の旧邸があるということ。そのことは忍も承知していた。隠密課が事前に行ったシミュレーションでも、敵が京都へ逃亡するパターンは把握済みだった。影勝の指示は、思いつきではなく、そのシミュレーションの結果をなぞったものに過ぎない。

 けれども忍は、前線に立った者として、ある違和感を覚えていた。予定が予定通りに行かない。そんな状況に立たされている気がしてならないのだ。

 言葉にできない迷いを感じる忍。彼女が迷っていると、影勝が先に口をひらいた。

「これは事前に決定されていたことだ。隊の編制を今から変えることはできん。それに、行き当たりばったりの作戦変更がタブーであることは、おまえも承知しているだろう」

 影勝の言う通りだ。忍は自分を無理矢理納得させようとした。

 京都でないとすれば、どこだと言うのか。地方都市まで合わせれば、日本には百を超える自治体があるのだ。今からケアできるはずもなかった。

 忍が反論できないでいると、影勝はさらに言葉を継いだ。

「では当初の作戦通り、私が陸路、おまえが空路で蘆屋を追う。羽田、成田ともに手配書は回してあるが、どう通過されるか分からん。関空では厳重に警戒しろ」

「ハッ」

 忍は迷いを振り払うかのように頭を下げ、その場を離れようとした。

「待て」

 影勝に呼び止められ、消えかかっていた忍の不安がもどった。

「……なにか?」

双性者(ヘテロイド)は3体が行方不明なのだな?」

 ほがらたちに話が及び、忍の顔はくもった。

「ハッ……監督が行き届いておらず、もうしわけございません……」

「かまわん。2、3人やられることは、あらかじめ予想済みだ。だが、誘拐されたとなると話は別……」

 誘拐。忍はかおるについても報告を終えていた。ラスプーチンが派遣したロボットにさらわれるなど、シミュレーション段階では弾き出されなかった出来事だった。そもそも影勝が今回の作戦に参加できなかったのは、ラスプーチンの参戦を予想して都内に待機していたからだ。

 対ラスプーチン。これ自体は、隠密課の既定路線だった。七丈島に双性者(ヘテロイド)がいることをリークしたのは、そもそも隠密課自身なのだ。蘆屋とラスプーチンが共闘する可能性は、最初から考慮に入れられていた。

 しかし現実は、予想と異なる展開を見せていた。

「しかも安倍(あべ)清明(せいめい)に関する情報が漏れたとなっては……」

「もうしわけございません。なんとか誤摩化そうとしたのですが……」

 ふたたび頭を下げる忍。彼女はこれを、自分の失態だと認識していた。あのときの演技さえ見破られなければ……そんな思いが、忍の中に渦巻いた。

「まあいい……いずれはバレる嘘だ。それよりもラスプーチンめ、蘆屋を見捨てて双性者(ヘテロイド)の回収に走ったか」

「いえ、それは違います」

 じぶんの推理を否定され、影勝は視線をもどした。

「……なにが違う?」

「ほがらさんの……今はゲンキさんですが、彼の話では、ラスプーチンは魔法少女に関心を持ったようなのです」

「魔法少女……? あの宇宙人の技術か? 彼はどこにいる?」

「ここだ」

 頭上をふりあおぐ影勝と忍。

 昼間の太陽よりもまばゆい光の玉が、青空の下で浮遊していた。

 影勝はひたいに手をかざしながら、

「貴殿がニッキーか?」

 とたずねた。

「ああ、私がニッキーだ……あだ名だがね」

 ニッキーはそう言うと、影勝の目線まで降下した。

 味方同士にもかかわらず、微妙な間の取り合いが始まった。

「ニッキー殿、この度は援軍に感謝する。吸血鬼の頭領を撃退してくれたとか……」

「撃退というよりは、勝手に逃げ出したというところかな……まあそれはいいとして、これからどうするのか、私にも教えて欲しいのだが」

 影勝は、忍に出した指示と同じことを説明した。

 ニッキーは黙ってそれを聞き終えた後、唐突に口をはさんだ。

「作戦として荒過ぎるように思う」

 部外者にしては、出過ぎた意見だ。忍は内心そう思った。

 影勝もすぐに反論を返した。

「お言葉ですが、ニッキー殿は我々の事前準備に関与されていない。戦力的に考えて、日本全土をカバーすることは不可能なのです。東京には蘆屋一族だけでなく、ラスプーチンと(おう)傑紂(けっちゅう)、それに吸血鬼の一味もいる。その中で蘆屋一族の拠点を潰せただけでも、望外の戦果なのですよ」

「別に非難しているわけではない。ただ君たちが京都に目を付けることを、相手も予測できるはずだ。そのような状況で、果たして京都へ向かうだろうか?」

 尤もな反論。忍も同意しかけたが、すぐさま疑問に突き当たった。

 忍は口をはさんだ。

「お待ちください……ニッキー殿は確か、ステッキで相手の居場所が分かるとか? だとすれば、安倍清明様の行き先もトレースできるのでは?」

 忍の台詞に、影勝もニッキーを見やった。

 話は簡単ではないか。そう思った彼らに、ニッキーは期待はずれな返事をした。

「それはできない。私は魔法少女の居場所が分かるのではなく、ステッキのエネルギーを追えるだけだ。エネルギーは、本人がステッキに触れている状態で発動する。もし清美くんが意識不明なら、当分追跡は無理だ……いずれにせよ、京都は疑わしいと思う」

 影勝はしばらく目を閉じ、それから質問をはなった。

「ではどうすればよいのか、ニッキー殿のご意見をうかがいたい。これは皮肉ではなく、本心からだ」

 腰の低い影勝に、ニッキーも態度をやわらげた。

「作戦変更を求めているわけではない……ただ私は、別行動を取らせてもらう」

「別行動……? どのように?」

「私に赤羽くんと黄山(きやま)くんを任せて欲しい」

 場を覆う沈黙。忍は純粋に、ニッキーの言っていることが理解できなかった。

 一方、影勝はその真意を察した。

「つまり、魔法少女を別働隊にすると?」

「そうだ。現状の赤羽くんたちは、ヒーローよりも魔法少女として活躍している。それならば、私が監督した方がよいだろう。清美くんとて、永遠に意識不明なはずはない。彼女が京都へ連れ去られなかった場合、私が探知機代わりに関東へ残る方がいいと思うのだが。それに、ともえくんのこともある」

「……それは承服致しかねますな。双性者(ヘテロイド)は、我々にとっても貴重な戦力。いくら赤羽くんしか行動できないとはいえ、手放せません」

「では、どうやって赤羽くんを説得するのかね? 彼は青海(おうみ)くんと緑川(みどりかわ)くんを探しに行くと言って聞かないのだが……」

 影勝は新たに煙草を取り出し、それをくちびるの手前で止めた。

「とりあえず安倍清美を救出するという名目で、京都に来てもらいましょう。青海かおるについては、彼女が真相を知ってしまった以上、接触させるのは危険です。自衛隊が捜索中とでも言えば、あの少年なら納得してくれるはず」

 あらかじめ考えていたのか、影勝はあっさりとそう答えた。

 ところがニッキーは、これに異をとなえた。

「清美くんに接触させるのも、同じくらい危険だと思うがね……ゲンキくんの話では、彼女は式神に連れられて、どこかへ行ってしまったそうじゃないか。ということは、彼女はまだ生きているということになる。清美くんをもう一度騙すのは不可能だ。かおるくんにはまだ説得のチャンスがある。だからここは、かおるくんの捜索をしてはどうだろう。ステッキも回収しなければならない」

 影勝は煙草にようやく火を点け、一服した。

 吐き出された煙が、ニッキーの光を曇らせた。

「ステッキの一件は、そちらの都合です。こちらにはこちらの都合がある」

「それはこちらの台詞だ。ゲンキくんたちがバラバラになったのは、私の責任ではない。君たちが清美くんを騙すから、嘘に嘘を重ねることになるのだよ。それに、ステッキを万が一分析された場合、敵戦力の大幅な増加ということもありうる。蘆屋一族があの技術を解明することはありえないだろうが、ラスプーチンなら……」

 忍の中で天秤が揺れ動く。どちらにも言い分があった。

 だがこうして無駄に時間を過ごすわけにもいかない。今は議論するときではないのだ。忍は思考をフル回転させ、両皿の均衡点を見つけ出した。

 睨み合うふたりのあいだに、忍はそっと割り込んだ。

「こうしてはいかがでしょうか……ニッキー殿の目的は、悪の組織の撲滅。我々のそれは日本国の治安維持……日本近海にラスプーチンの一味が潜伏していることは確実です。隠密課が京都へ移動すれば、東京で暴れ始める可能性もあるかと。それならば、ニッキー殿に赤羽さんたちをお任せし、ラスプーチンを牽制してもらっては……」

 その場の空気が、一瞬にして氷解した。

 ふたりとも即座に納得したようだ。影勝はすぐにGOサインを出した。

「うむ、そうしよう。これ以上は時間がさけん」

 影勝はニッキーに視線を移した。

「ではニッキー殿、双性者(ヘテロイド)の方は頼みました」

「了解。私は東京に留まり、青海くんたちを探しながらラスプーチンを牽制しよう」

 ニッキーもきらきらと輝きをはなった。

 そこで忍は腰を上げ、彼に歩み寄った。懐から通信機のようなものを取り出す。

「ニッキー殿、これをお使いください」

「ん……? これはなんだね?」

「ロボットの衣服に、発信器を取り付けておきました。これで追跡できます」

 忍の説明が終わる前に、ニッキーは煙を立てて人間の姿に変わった。

 手を伸ばし、通信機を受け取った。

 それを見届けた影勝は、この場を締めくくった。

「それでは、万事打ち合わせ通りに」


  ○

   。

    .


 隊員たちに保護されたゲンキは、車両の中で暴れていた。

「放せッ! 放せーッ!」

 隊員のひとりがうしろから羽交い絞めにした。

「外出は禁止されています! 指示が出るまでお待ちを!」

「かおると清美がさらわれたんだぞッ! さっさと助けに行かせろッ!」

 暴れ回る少年と、それを取り押さえる複数の隠密課の隊員たち。

 変身を解いているからいいようなものの、ヒーローモードならあっさり脱出されてしまいそうな勢いだ。隊員たちは仮設テントの中へ、なんとかゲンキを押しもどした。

「忍ちゃんはなにやってるんだ!? 直談判してやるッ!」

「忍様は課長とお話中です! お通しできません!」

 もう一度ゲンキが外に飛び出そうとしたところで、テントに一人の男が現れた。

 ゲンキはその男の顔に、どこかしら見覚えがあった。

 じっと相手を見つめ、それから口を大きくひらいた。

「ニ、ニッキーじゃねえか!?」

「待たせてすまない」

 驚き戸惑う隊員たちを他所に、ゲンキはその苛立ちをニッキーへと向け始めた。

「ニッキー! なにやってんだ! さっさとかおるたちを助けに行くぞ!」

「それについては、さっき了承を取った。私と君でかおるくんの捜索に向かう。清美くんに関しては、隠密課が担当することになった……ともえくんも忍ちゃんと一緒だ」

 ゲンキはその場で飛び上がり、パチンと指を鳴らした。

「そうこなくっちゃな! さすがはニッキーだぜ!」

 ゲンキは隊員たちの手を振りほどき、リストウォッチを嵌めた右腕をかがげた。

「赤羽ゲンキ、へんし……」

「おいおい、気が早過ぎるぞ。敵の居場所も分からないのに、どうする気だ?」

 ニッキーの呆れ声に、さすがのゲンキも変身を中断した。

 じれったそうにニッキーを見つめ返した。

「じゃあさっさと、かおるの後を追うぜッ! ……どうすれば居場所が分かる?」

「私はステッキのエネルギーを追えるが……残念ながら関東にはもういないらしい」

 関東にはもういない。ゲンキは隊員たちに向かって、怒りの声を上げる。

「ほらみろ! おまえたちがぐずぐずしてるから……」

「ゲンキくん、君はちょっと感情的になり過ぎだ。少し落ち着きたまえ」

 学校の先生に注意されたような、そんな気まずさが流れた。

 ゲンキはグッと歯を食いしばり、反論を押し殺した。

 ニッキーは先をつづけた。

「関東にいないとなると、クレムリンに連行された可能性が高い」

「クレムリン……? あの変な空中要塞か?」

 ゲンキは七丈島で見た光景を思い出した。あのときクレムリンは、煙のように空中へ消えてしまった。シベリアから七丈島沖まで移動してきたということは、なんらかの迷彩が可能ということだ。ゲンキは事態が思わしくないことを悟った。

「どうすればクレムリンを見つけられる? 潜入はどうするんだ?」

「ひとつずつ解決しよう。まずはこれを……」

 ニッキーはポケットから通信機を取り出した。それを覗き込んだゲンキの目の前に、日本近辺の地図が映し出された。日本海上空に、点滅するポイントが見えた。

「もしかして、クレムリンか?」

「正確に言うと、ロボットの位置だ。忍くんが発信器を取り付けたらしい。無論、ロボットが回収されたとなれば、当然に行き先はクレムリンということになるだろう。海上にいるのがなによりの証拠だ」

「よしッ! それじゃ早速潜入だッ!」

 気勢を上げてテントを出ようとしたゲンキを、ニッキーは冷静に引き止めた。

「待ちたまえ……どうやってあの空中要塞に乗り込む気だ?」

「そんなのはヘリでも飛行機でも使えばいいじゃねーか」

「撃ち落とされるに決まっているだろう。あれは兵器でもあるんだ」

 ゲンキの顔が青ざめる。七丈島での砲撃を、彼はまだ覚えていた。

「それじゃどうしようもないじゃねーかッ!?」

「事実は事実だ。それを否定してもしょうがない」

 ニッキーは焦るゲンキをたしなめ、その場を歩き回った。どうやら光の玉になっているときの、ふらつく癖が抜けないらしかった。

 自分もアイデアを出そうと、ゲンキも脳髄をふりしぼった。しかし、かおるたちのことが心配になるばかりで、なにも思い浮かばなかった。

 仕方なくゲンキは、ニッキーの名案を待つことにした。

「……誘拐されたのがかおるくんだったのは、案外良かったかもしれないな」

 作戦とはほど遠い台詞に、ゲンキは顔をしかめた。

「誘拐されていいわけないだろ」

「そういう意味ではない。かおるくんなら、クレムリン内部でもうまく立ち回ってくれるかもしれないということだ。おそらくラスプーチンの目的は、魔法少女の仕組みを解明することだろう。そうなると、彼女に危害を加えるとも思えない」

 なるほどと、ゲンキはニッキーの考えに賛成した。

 万年赤点候補の彼から見れば、学園トップを走り続けるかおるは、当然のことながら雲の上の存在に等しい。スポーツなら負ける気はしないが、頭の回転では張り合う気も起こらないほどだった。

「そっか……ってことは、案外自力で脱出できるかもしれねえな……」

「それは楽観的過ぎるが……とにかく焦っても始まらない。ここは慎重に……」

 そこでふと、ニッキーの舌が止まった。

 あまり感情を表に出さないニッキーだが、動揺しているのが手に取るように分かった。

「どうした? なんかいいアイデアが浮かんだのか?」

「どういうことだ……なぜいきなり……」

 曖昧な物言いをするニッキー。ゲンキは拳を握り、ニッキーに詰め寄った。

「どうしたんだ? なにかあったのか?」

「成田空港だ……成田空港に魔法少女がいる……!」


  ○

   。

    .


 回転するプロペラの音。

 ショートヘアをなびかせながら、忍は近づいてくるリムジンに手をふった。

 自動運転のリムジンは目のまえで止まり、後部座席のドアがひらいた。

 忍は景勝にむかって、

「課長、どうぞ。わたくしはヘリで品川に向かいます」

 と、いんぎんに会釈した。

 景勝はそれを無視して、ヘリのタラップに足を掛けた。

 それを見た忍は、思わず声を上げた。

「か、課長、どうなさいました?」

 影勝はタラップの途中でふりかえり、言葉を返した。

「関空へは私が行く。おまえはここに残れ」

 打ち合わせと違うではないか。忍が抗議する前に、影勝は先を続けた。

「おまえはあの宇宙人を監視しろ」

「……ニッキー殿をですか?」

「そうだ……あの男、どうも行動が怪しい。今のところ協力してはいるが、もしかすると双性者(ヘテロイド)を横取りするつもりかもしれん……安倍清明が隠れ家を抜けるときも、手助けしていたと言うではないか……清明が敵の手に落ちたのも、元を辿ればあの男に原因があるとも言える」

 そうだろうか。忍は答えを躊躇した。安倍清明を自爆させる作戦は、奥の手とは言え最初からプランにあったのだ。ニッキーが蘆屋と清美の逢い引きを手伝っていたとしても、それは付随的な出来事に過ぎない。忍はそう思った。

 忍が黙っていると、影勝はタラップを上り切り、ヘリの後部座席に身を投げ出した。

黒金(くろがね)ともえの件についても、信用していいのかどうか……関東にいないと思わせて、かくまっている可能性もある。都内を徹底的にさがせ。ここで内側から裏切られては、作戦に支障をきたすからな……それにおまえは負傷している。少しは休め」

 忍は右腕の包帯に手を添える。

 銃弾を受けた傷口が、まだうずいていた。

「……かしこまりました」

「蘆屋一族。環境保護と称して、我が国の経済に打撃を与えてきた存在だ……今度こそ必ず葬ってやる。日本の未来と、この村正に賭けて」

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