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第37話 魔法少女vs殺人ロボット

 かおるは耳をふさぎ、茂みの奥にうずくまっていた。

 なぜこのような惨劇を、目の当たりにしなければならないのだろう。かおるの網膜は、現実逃避でもするかのように、七丈島での学園生活を映し出した。授業も、スポーツも、寮での馬鹿騒ぎも、なにもかもが懐かしく、そして空しかった。

「かおるくん、ここにいたのか?」

 男の声。かおるのまぶたの裏に、奇妙な光が透けてみえた。

 彼女が目を開けると、そこにはあの光の玉がただよっていた。

「ニッキー! あなたどこに……」

「シッ、静かに」

 かおるは自分の口元を押さえた。

 敵に見つからないよう、ニッキーも低空飛行に努めていた。地面ギリギリのところまで降り、それから話を始めた。

「ほがらくんは?」

「ほがらは……あそこのビルに飛び込んだあと、行方が……」

 声を落とすかおる。その表情は暗かった。

「別行動になってしまったか……」

「あの女はなんなの? 新しい怪人?」

 かおるの問いに、ニッキーは曖昧な点滅をくりかえした。

「正確には答えられないが……人間ではないようだ」

「そんなのは見たら分か……」

「シッ、敵が動いた」

 かおるは向きを変え、茂みの隙間から広場を見渡した。

 女は、炎上する通信車両のそばにいた。涼しそうな顔をしていた。

 普通なら火傷してもおかしくない距離だ。

 かおるは、女が人間ではないことを確信した。

「あいつ、なにやってるの?」

 女が動く気配はなかった。もし蘆屋の救援に来たのなら、このまま屋敷に踏み込むはずだ。それとも、自分たちを誘き出す作戦なのだろうか。かおるには女の意図が読めなかった。

 ニッキーも戸惑ったように、

「なにかをさがしてるようだが……」

 とつぶやいた。

「さがしてる……? なにを?」

「それは分か……」

 ふたりは口を閉じた。

 女の視線が、あからさまにこちらへと向けられたからだ。

 バレたのか。まさか。女までの距離は、ざっと50メートルはあった。近くで車体が炎上している以上、音は拾えないはずだった。

 そう考えたかおるだが、予想の甘さはすぐに露呈した。

 女はひざをかがめたかと思うと、信じられない脚力でその距離を縮めて来た。

「いかん! 逃げろ!」

 ニッキーはそう叫ぶが早いか、猛スピードで茂みを飛び出した。

「ニッキー!」

 かおるはニッキーの後を追おうとしたが、瞬時に思いとどまった。

 ニッキーに気を取られた女は、こちらへのダッシュを止めて、光の玉を見つめていた。

 囮になってくれたのだ。そのことに気付いたかおるは、反対の方向へ逃げ出した。

 女はすぐさま反応したが、かおるの動きのほうが速かった。地面を蹴り上げ、手近にあったビルのベランダに避難した。ほがらが逃げ込んだのとは、また別の建物だった。

 かおるは変身で増幅した脚力を利用し、ガラス戸をフレームごと蹴り倒した。

 透明な破片が、辺りに散らばる。かおるは躊躇せず、部屋の中へ踏み込んだ。

 ソファーに大型の立体テレビ。どうやらマンションの一室のようだ。

 かおるは心の中で所有者に詫びながら、その場でくるりととんぼ返りをした。細い爪先でカーテンレールの上に飛び乗り、窮屈な体勢でじっと息をひそめた。手にしたステッキの先端を床に向け、女の登場を待った。

 慎重な相手なら、ベランダから攻めてこないかもしれない。だが、これまでの行動を見る限り、あの女はそういう奥手なタイプではなかった。かおるは自分の心臓が高鳴るのを覚えながら、バランスを取り続けた。

 重厚な金属音。なにかがベランダの上に乗った。

 女だろうか。それにしては奇妙な音だ。まるで機械が歩いているような──

 そこに考えがおよんだ瞬間、かおるは青ざめた。背後の壁が、いびつな盛り上がりを見せた。資材が飛び散り、細い腕が飛び出てきた。

「まさかロボット!?」

 予想外の不意打ちに、かおるはカーテンレールから滑り落ちた。

 体勢を整えようと空中で体をひねった瞬間、体の落下が止まる。

 最悪だ。かおるは宙釣りになったまま、あごを引いて天井を見上げた。女は自分が開けた穴から上半身をのぞかせ、かおるの足首をつかんでいた。

「ラスプーチン様、一体ヲ捕獲シマシタ。回収地点ヲ……!?」

 真っ赤な閃光。女は悲鳴を上げて手をはなした。

 いきなり落下を始めたかおるは、ぎりぎりのところで両手を突き、バク転を決めた。

「手癖の悪い女はお尻ぺんぺんよ!」

 しょうもない決め台詞。間違いない。ほがらだ。

「かおる! 待ってなさい!」

 ベランダをよじ登って来るほがら。

 なにをやってるんだ。かおるは呆れて声をあらげた。

「こっちへ来ちゃダメ! 広場へ逃げるわよ!」

 かおるの大声に驚いたのか、それとも指示に従っただけなのか、ほがらは両手を手摺てすりから放して、姿を消した。

 女は壁の穴にハマってしまい、抜け出そうともがいていた。かおるはその下をすり抜け、ビルを脱出した。あっさりと地面に着地した彼女は、気をゆるめずに駆け出し、自分のいたベランダをふりかえった。

 煙を上げるスカートと、そこから伸びた足が、間抜けな光景を形作っていた。

「もっとマシなCPU積んだほうがいいんじゃないの!」

 お返しとばかりに、かおるは軽口を叩いた。

「かおる! はやくはやく!」

 ほがらの声。彼女は広場の端にあるトイレの裏から、顔をのぞかせていた。

 かおるは足を速めて、仲間と合流した。

 見ればニッキーもいた。ようやく作戦会議だ。

 ほがらの第一声は、

「ニッキー、これからどうするの?」

 だった。

 ニッキーは自信なさげに答えた。

「あの女の狙いが分かればいいんだが……」

 かおるが割り込む。

「あいつの狙いは、私たち魔法少女よ」

 ニッキーとほがらはおどろいた。

 かおるは、マンションで女がつぶやいた台詞を伝えた。

「ふむ……ラスプーチンが君たちを捕獲する気なのか……」

 ほがらは、

「ラスプーチンって誰?」

 とたずねた。

 かおるは呆れ顔で、

「七丈島に来た変な移動要塞のボスよ」

 と教えた。

 なんだそいつかと、ほがらは納得顔になった。

 一方、かおるは周囲を見回し、怒ったようにつぶやいた。

「なんで誰も助けに来ないの? 私たちが襲われてるのは分かってるんでしょ?」

 かおるたちだけではない。隠密課の隊員が何人も殉職しているのだ。

 まさか本隊が全滅したのではないかと、かおるは内心気が気でなくなった。

 少女の動揺を察したニッキーは、推測混じりに理由を説明した。

「部隊を切り崩して派遣すると、戦力の逐次投入になってしまう。忍くんも、二方面作戦を避けているのだろう。ロボットのほうから屋敷の中へ来るのを待ってるんだ……それに君たちのことも、多少は信頼しているはず」

「多少ねえ……その割にはお留守番ばかりだけど……」

 遠くで金属音がした。3人は一斉に顔を上げた。

 かおるは、

「抜け出したみたいね……どうする?」

 とたずね、ニッキーとほがらを交互に見比べた。

「回収を依頼したということは、単独で潜入しているはずだ」

 ニッキーの推理に、ほがらは眉をひそめた。

「だからどうしたの?」

「逃げ回って消耗戦に持ち込めば、補給できないあちらが……」

「来たわッ!」

 かおるの大声に合わせて、3人は別々の方向に飛散した。

 うっかりばらけてしまったのではない。飛び道具を持つ敵から逃げ回るには、散開したほうが有利と読んだのだ。少なくともかおるはそうだった。ほがらは違うかもしれないが。

 そこそこチームワークが出て来たと、かおるは感心しながら宙を舞った。

 振り返れば、トイレの壁に巨大な穴が空いていた。マンションからこちらへ駆け出したまでは見ていたが、まさか素手で攻撃してくるとは、かおるも予想していなかった。

 ひらりと地面に着地し、かおるはステッキでポンと手のひらを叩いた。

「なーるほど……ニッキーの言う通りみたいね」

 兵装に限りがある。シューティングゲームとは違い、無限弾倉はありえない。

 あれだけの火力を誇っていたロボットが、肉弾戦に持ち込んでいる。その事実に、かおるは現状がそれほど悪くないことを悟った。

 かおるの独り言に反応したのか、女はいきなりかおるのほうへと向きを変えた。

 慎重に逃げなければ。かおるはステッキを握り締め、跳躍の準備をした。

 彼女の予想通り、女は猪突猛進に襲い掛かってきた。

「よっと!」

 気合いの入った掛け声と同時に、かおるは女の突進をかわした。

 女の腕は空を切り、急ブレーキで靴底に火花が飛び散った。

 かおるは軽自動車の屋根を踏み台にし、そこからさらに跳躍した。

 べこんという鉄板の曲がる音に、かおるはあららと舌を出す。

「修理代は国に請求してちょうだい!」

 かおるは女からなるべく距離を取り、地面に着地した。

 女はすでに向きを変えていたが、攻撃を仕掛けてくる気配はなかった。

 諦めたのか。いや、そうではないだろう。かおるは自分の慢心をいさめた。

 素手ではとらえられないと分かり、作戦を練っているだけだ。かおるはそう推理した。

 実際のところ、女のスピードをもってすれば、人間を捕まえるなど容易いはずだ。それができないとなると、コンピューターも多少は面食らっているのだろう。女もまさか、かおるたちが地球外生命体に選ばれた魔法少女だとは思っていまい。

 かおるはこの考慮時間を利用し、自分の身の振り方を考える。

 こういうときのかおるの思考法は決まっている。自分でいくつか案を出し、その中で一番マシな選択肢を選ぶのだ。

 正解は存在しない。よりベターなものがあるだけ。それが彼女の口癖だった。

 よりベターな解を求めて、かおるは思考の海に沈んだ。


  ○

   。

    .


《アナスタシア、聞こえるか?》

 最善の捕獲法。それを解析していたアナスタシアの回路に、主の声がひびいた。

「ハイ、感度良好デス」

《なにをぐずぐずしている? 催眠ガスが効かんのか?》

「催眠ガスハ使用済ミデス。残量ゼロ」

 ぶつぶつと悪態をつく声。

 それから命令がひとつ飛んできた。

《いったん距離を取り、麻酔弾で狙撃しろ。それから……》

「今回ノ任務ヲ想定シテイナカッタタメ、麻酔弾ハ携帯シテイマセン」

《なにィ!?》

 ドクリと、アナスタシアの中で音がした。

 あの感覚。あの得体の知れないなにかが、彼女の中で渦を巻いた。

 その正体を探るため、アナスタシアの思考回路は勝手に解析を始めた。

 バグか──自分のありえない挙動に、アナスタシアは戸惑いを覚える。

 ……戸惑い? なんだそれは? アナスタシアは自問自答した。

 ……いや、その答えを、自分は知っている。

「ラスプーチン様」

《……ん、なんだ?》

「ココハ全テ私ニオ任セクダサイ」

 沈黙。主の困惑が、手に取るように分かった。

 今まで理解することのできなかった、人間の感情というものが。

《いったいどういう……》

「クレムリンカラノ指示ハ不適切ト判断シマシタ。ココハ私ニオ任セクダサイ」

《待て、アナスタシア!? なにを言って……》

「回収地点ハ30分後ニ203Aデオ願イ致シマス……コレニテ通信ヲ遮断シマス」

 通信が途切れる。意識を持って以来初めての、自分からの切断だった。

 アナスタシアは直立不動し、目の前にいる少女を見つめ返した。

 少女もまた考えがまとまったかのように、不敵な笑みを浮かべていた。

 腹立たしい小娘だ。コンピューターを上回る気でいるのか。怒りとあざけりの入り交じった感情が、アナスタシアの中を往来した。

 感情。自分に唯一欠けていたもの。

 どうやら前回のメンテナンスで、プログラムをまさぐられたらしい。

 勝手なことをするなと、アナスタシアは淡い苛立ちを覚えた。

 だがそれら全てを凌駕する感情がひとつあった。それは──

「……楽シイ」

 アナスタシアは両腕をかかげて、関節から蒸気を噴き出した。

 これまで感じたことのない高揚感が、彼女の熱量を押し上げていた。

「アナスタシア、任務ヲ再開シマス……!」


  ○

   。

    .


「……?」

 かおるは片手で眼鏡をなおし、レンズ越しに女の挙動をうかがった。

 様子がおかしい。さきほどまでと雰囲気がちがっていた。

 ロボットにあるまじき殺気を感じたかおるは、思わず一歩後ろに下がった。

「なによ……今から本気出すぜぇ、とかいうオチ? ……まあいいわ」

 強がりではない。かおるは、本気で好都合だと思った。

 理由は簡単だ。かおるが選んだベターな作戦。それは燃料切れだからである。

 アナスタシアの体にはケーブルらしきものが繋がっていない。ということは、内部電源を持っているはずだ。永久機関は科学的にありえないので、その電源にも限界がある。相手が必要最低限の動きしかしないのも、バッテリーを節約しているせいではないか。かおるはそう推測していた。

 もし彼女の考えが正しいなら、相手が本気を出してくれるに超したことはない。そのほうがエネルギーの消耗は激しいのだから。

 ただどれくらいパワーが上がるのか、それが問題だった。

 かおるは全神経を集中させる。

 それと同時に、女は動き出した。

「!?」

 速い。かおるは一目散に飛びのき、女のパンチを寸でのところでかわした。

 女は息つく暇も与えずに急ブレーキを掛け、返す刀で回し蹴りをはなった。

「くッ!」

 女のかかとが衣服に触れて、肩の布地が吹き飛んだ。

 勢い余った女の攻撃は、地面のコンクリートをえぐり、すり鉢状の穴をうがった。

 これにはかおるも血相を変えた。動きが違い過ぎる。

 これまで女が連続攻撃を仕掛けてきたことはなかった。

 かおるは慌てて距離を取ろうとしたが、女はさらなる攻撃を繰り出してきた。

 避けられない。かおるは無意識のうちにステッキを突き出した。

「うりゃあああああッ!」

 腹の底から声をふりしぼり、魔法弾を打ち込んだ。

 ステッキを武器と認識していなかったのか、青い光線が女の胸部を直撃した。

 その反動を利用して、かおるは数メートル後方にジャンプした。

 目の前でふらつく女。至近弾を喰らい、上半身の衣服が吹き飛んでいた。

「ははーん……やっぱりロボットね」

 胸がない。どうやら詰め物だったようだ。

「そこまで再現する予算がなかったってわけ?」

 女はマネキンのような肌をさらし、体勢を立てなおした。

 表面は焦げ付いているが、傷を負った気配はなかった。

 かおるは自分の攻撃力不足を認識した。一人では無理だ。かおるは周囲をさぐった。

「ほがらはど……!」

 女の姿が消えた。

 一瞬パニックになるかおる。しかし地面に映る影を、彼女は見逃さなかった。

「上ッ!?」

 かおるは地面を蹴り、見事な宙返りを披露した。

 上空からほぼ垂直に落下した女は、目標を見失って地面を殴りつけた。

 コンクリート片が飛び散り、かおるは眼鏡が傷つかないように腕で顔をおおった。

「ロボットが(りき)んでんじゃないわよッ! スペック遵守しなさい!」

 敢えて強気の台詞を吐くかおる。

 自分を奮い立たせるためだ。そうでもしないと神経がもたなかった。

 ニッキーはまだしも、ほがらが加勢に来ない。

 かおるは仲間のことを信じて、ここは踏ん張ることを決意した。

 ほがらのことだ。なにか策があるに違いない。

 こういうときの機転は5人の中でもそこそこ上なのだ。

 一番は行方不明の清美なのだが──

「そう言えば清美たちは……!?」

 完全にバランスを取り直した女は、再度踏み込んできた。

 かおるは右に跳び、ひらりと街灯の上に着地した。

 高低差を前に、女も攻撃を一段落させた。撃っては来ないだろう。飛び道具を使うなら、もっと早くから使っているはずだ。かおるは一息つき、中断した思考を再開した。

 清美はどこにいるのだ。ともえの姿も見えない。

 魔法少女として現れてくれなくてもいい。

 ヒーロー版の清明(きよあき)でもムサシでもよかった。

 なぜ救援に来ない。ニッキーもどこかに消えてしまった。

 かおるが一抹の不安を感じそうになったとき、女は行動を起こした。

 ゆっくりと歩を進め、街灯へと向かってくる。

(……しまった!)

 かおるは、最悪の避難場所を選んでしまったことに気づいた。女がこれまでと同じように突っ込んで来ると予想していたのだ。そのときは、跳んで逃げればいい。勢い余った相手は方向転換ができないから、余裕で逃げられる。

 しかし、相手が鈍足で移動して来たときは別だ。この高さと足場の悪さでは、跳躍した瞬間に着地点を読まれてしまう。

 空中での方向転換は不可能。かおるは自分に悪態をついた。

 がむしゃらに走って来いと願うが、女は悠然ゆうぜんとしている。

 もうこなったら大声で助けを呼ぶしかない。そう考えたかおるが息を吸い込んだとき、遠くから車のエンジン音が聞こえた。それに続くクラクション。

 さすがに女も反応し、うしろをふりかえった。

「ほがら!」

 一台のジープが突っ込んできた。割れたフロントガラスから、ほがらの姿が見えた。

 女が気を取られた隙を狙い、かおるは街灯から飛び降りた。

 地面に着地した瞬間、背後で激しい衝突音が聞こえた。

 やったか。かおるはジープの方へ視線を向けた。

「!?」

 信じられない光景。

 女は、両手で車体を受け止めていた。

「だけどチャンス!」

 かおるはステッキを女の背中に向けた。

「ほがら!」

「かおる!」

 それだけで十分だった。ほがらもアクセルを踏んだまま、ステッキを割れたフロントガラスの隙間から突き出した。

「「1、2、3!」」

 打ち合わせのないリズム。青と赤の光につつまれ、女の頭部が炎に包まれた。

 女はひざを崩し、ジープの車輪に巻き込まれて奇怪なダンスを踊った。

 ほがらは運転席から飛び出し、勢い余ったジープはそのまま街灯に激突した。

「やりィ!」

 かおるはほがらに駆け寄り、どちらからともなくハイタッチを決めた。

 ホッと胸をなでおろすかおると、あくまでもドヤ顔のほがら。

 だがすぐに気を取り直し、ふたりはロボットのほうへ注意を集めた。

 女は地面にうつぶし、頭から煙を上げていた。

 ほがらは、

「……死んだ? というか壊れた?」

 とつぶやいた。

「気をつけて……目立った損傷はないわよ……」

 かおるの指摘に、ほがらの顔も真剣味を帯びる。

 なんという耐久性。かおるの見る限り、とてもではないが壊れたとは言い難い。衣服はぼろぼろに破れ、カチューシャも魔法弾で灰になってしまったが、内部の機械はどこも露出していなかった。少なくとも、かおるの立ち位置からは無事に見えた。

 強いて傷をあげるとすれば、髪が焼失して大幅に禿げてしまったことだろうか。

 ほがらはジッとようすを観察しながら、

「……でも動かないわよ?」

 と言った。

 確かに動く気配がない。立ち上がるどころか、指一本動いてはいなかった。

 外傷がないだけで、内部のシステムはクラッシュしているのだろうか。パソコンなども外装は奇麗なままで、中身だけ壊れることがあるのだから、十分にありうる事故だ。

 かおるは遠巻きに目を細めた。

 そのとき、屋敷の方で巨大な火柱が上がった。

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