第100話 ムーラン・ルージュ
アジトに辿り着いたともえは、マンションの玄関でジャンヌと別れた。
「私はちょっと用事があるから、部屋で休んでて」
ジャンヌはそう言って、行き先も告げずに、どこかへと姿を消した。逃亡を企てたらどうする気なのか、ともえには見当がつかなかった。無論、ここを離れたところで行く当てもないのだから、心理的な枷がはめられていた。
ともえは自動ドアをくぐり、無人の空間に足を踏み入れた。
《お部屋の番号をどうぞ》
壁に備え付けの管理システムが反応した。
「203」
ともえは部屋番号を告げた。
《声紋確認中……どうぞ》
正面のガラス戸が、左右にひらいた。
奥に入ると、涼やかな風が彼女の肌をなでた。
「パリは暑過ぎる」
ともえはそう言いながら、エレベーターに乗り込んだ。2階、ようするに日本で言うところの3階に降りて、3号室へと向かった。
どうやらこのブロックは、ジャンヌの貸し切りらしかった。これまで一度も、他の住人と顔を合わせたことがなかった。ショッピングと言い、このマンションと言い、彼女がどこから資金を調達しているのか、ともえはいぶかるばかりだった。
「銀行強盗かなにかで、警察に踏み込まれねばよいが」
そんなことをつぶやきながら、ジャンヌは203号室の鍵を開けた。
土足のままリビングに向かうと、白髪の老人と鉢合わせになった。
ふたりは瞬時にして、間合いを取り合った。
「これはこれは、クロガネ様」
老人は胸元に手をあて、軽く一礼した。
ともえも会釈を返した。
「失礼した。セバスチャン殿が在室とは、思わなかったもので」
「いえいえ、お構いなく」
セバスチャンはそう言うと、シャッピング袋の山に向かい、両腕をかかげた。すると、両手の間に黒い塊のようなものが現れて、荷物の山を吸い込んでいった。
ともえはそれを眺めながら、好奇心で胸がいっぱいになった。
「小型のブラックホールか?」
ともえの問いに対して、老人はにこやかに答えた。
「ブラックホールでは、ありません。荷物が潰れてしまいます」
「では、どこへ繋がっているのだ? 異空間か?」
異空間がなにを意味するのか、ともえ自身にも、よく分かってはいなかった。
「そのように申し上げても、さしつかえありません」
老人は韜晦気味に、そう答えた。
質問をはぐらかされたともえだが、敢えて追及はしなかった。
それよりも、大事な用件があった。
「繰り返しでもうしわけないのだが……」
ともえが言葉を濁すと、セバスチャンは顔だけふりむいた。
「なんでございましょうか?」
「拙者のリストウォッチを、返していただけぬか?」
ともえの頼みに、老人はにこりとほほえんだ。
けれども返ってきた答えは、その表情とはあべこべなものだった。
「それは、無理な相談でございますな」
セバスチャンに断られたのは、これが2度目だった。ともえは、パリに連れ去られたその日にも、リストウォッチの返却を要求した。けれども、返してはもらえなかった。
そしてその理由も、ともえには薄々察しがついていた。
「リストウォッチの通信機能は、オモチャのようなもの。東京とは連絡がつかぬ」
「つかないかどうかは、試してみなければ分かりません」
「ならば、セバスチャン殿の前で試そう」
ともえの提案にもかかわらず、老人は首を左右に振った。
「逆探知される虞がございます」
「……もっともな用心だ」
ともえなぜか、同意してしまった。
とはいえ、リストウォッチの通信機能が具体的にどうなっているのか、それはともえにも、よく分かっていないのだった。ひとつだけ分かっているのは、上海−東京間では、通信不能ということだけ。それは、一向聴たちの目を盗んで、こっそりゲンキと連絡を取ろうとしたときに、判明済みであった。「オモチャのようなもの」という喩えも、でたらめに言っているわけでは、ないのである。
「セバスチャン殿、実を言うと、拙者はすでに、上海で試したのだ。そのときは、他の4人とまったく繋がらなかった。離ればなれになったゲンキたちのみならず、同じ建物内にいたキヨミとも連絡がつかない始末……おそらくは、中継基地が限られているのだろう。だとすれば、盗聴の虞も……」
「隠密課が、通信を遮断しているとも考えられますぞ」
「!」
ともえは思わず、息を呑んだ。
その可能性を、ほとんど考えていなかったのである。
「そこに思い至らぬとは……我ながら呆れるな……」
ともえはそう言って、リストウォッチの奪還をあきらめた。
「ご理解いただけて、光栄です」
異空間への扉は、すべての荷物を仕舞い込み、パッと口を閉ざした。
老人は軽く息をつき、呼吸を整えた。
「ところでクロガネ様、わたくしからも、ひとつ質問がございます」
老人は、急に真面目な顔つきになった。
ともえは身がまえた。
「なんだ?」
「男物の下着は、用意しなくてもよろしいのですか?」
拍子抜けした内容に、ともえはしどろもどろになった。
「それは……どういう……?」
「いえ、簡単な話でございまして、クロガネ様は双性者でいらっしゃいますから、男物も入り用かと思いまして」
なんだ、そんなことかと、ともえは気を取りなおした。
「お心遣いには感謝致すが、結構だ。拙者がこうして女の姿を続けているのも、ジャンヌ殿やセバスチャン殿に、余計な手間をかけさせぬため。性別をころころ変えては、いろいろと面倒であろう」
「なるほど、そういうことでございましたか」
老人はそう言って、首を縦に振った。
けれどもその動作にはどこか、納得していない気配があった。
そしてともえもまた、自分の理由付けに、納得していなかった。彼女が性別を女に固定しているのは、万が一に備えてのこと。すなわち、魔法のステッキである。リストウォッチを返してもらえない以上、ニッキーからあずかったステッキ以外に、身を守るものがなかった。魔法のステッキは、女の身でなければ使えない。
セバスチャンとともえの視線が、一瞬交差した。
「……では、片付けも済みましたので、ごゆっくり」
セバスチャンは、愛想のよい表情を浮かべて、部屋を出て行った。
あとに残されたともえは、腕組みをしたまま、窓の外を見やった。レースのカーテン越しに漂う日差しは、次第に弱々しくなり始めていた。
「……シャワーでも浴びるか」
ともえはそう言って、バスルームに消えた。
○
。
.
「暑いなあ……」
ベッドに横たわった少年は、天窓を見上げながら、そうつぶやいた。西日に熱された屋根裏部屋は、まるで蒸し風呂のように、不快な空気で覆われていた。
「ジャンヌさん、遅いな……」
少年は、ごろりと体を横に向けた。
いつもなら散らかっている部屋も、今日はこざっぱりとしていた。もっとも、床の荷物をすべてタンスに押し込んで、あたかも片付けたかのような演出をしているだけなのだが。タンスのドアが破れて中身が飛び出さないかどうか、少年は気が気でなかった。
少年はもう一度あおむけになると、路地裏での出来事を回想した。黒髪の少女の顔が、彼の脳裏に浮かんでは消えた。
ピンポーン
チャイムの音に、少年は飛び起きた。
靴を引っ掛けて、慌ててとびらを開けに行く。
内側の錠を外すと、ジャンヌがひょっこりと顔をのぞかせた。
「はーい、アベルくん、こんにちは」
「こんにちは……って、さっき会ったじゃないですか」
「それもそうね」
ジャンヌはアハハと笑って、室内にずかずかと上がり込んだ。
そして、周囲を一瞥した。
「前回よりは、片付いてるわね」
「掃除しましたからね……つーか……」
アベルは枕の下から、小さな杖のようなものを取り出した。
ラベンダー色の柄に、天使の羽。先端には、紫に輝く宝石がついている。
西日が七色に反射し、少年は思わず目を細めた。
「依頼の品は、これでいいんですよね?」
「もちろん。なんのためにレプリカ渡したと思ってんのよ?」
ジャンヌの問いに、少年は肩をすくめて見せた。
「オモチャでしょ、これ?」
少年はそう言って、先端の宝石をながめた。
プラスチック製だろう。いくらなんでも、大き過ぎる代物だ。それがアベルの感想だった。ただそれにしては、妙に品質がよいように思われた。スリを生業とするアベルは、宝石に関して、そこそこの知識を有していた。
「ま、オモチャと言えば、オモチャね……さ、引き渡してちょうだい」
ジャンヌは、右手を差し出してきた。黙って取り上げればいいようなものだが、ジャンヌがそのような乱暴に出たことを、アベルは記憶していない。
それに、金を受け取っているのだから、断る理由もなかった。
アベルは、ステッキを手渡した。
「ご苦労さま……これ、残りの代金ね」
ジャンヌは封筒を取り出し、アベルの空いた手に、それを乗せた。
アベルは後頭部をかきながら、照れ笑いをした。
「いやあ、いつもすみませんね、こんなに貰っちゃって」
「中身、確認しないの?」
「ジャンヌさんなら、確認する必要ないですよ」
「そう……」
アベルが言い終える前に、ジャンヌはステッキを握り締め、背筋を伸ばした。
どこかしら殺気を帯びた雰囲気に、アベルは身震いする。
「じゃ、ジャンヌさん……?」
口封じか。
パニックになりかけたアベルをよそに、ジャンヌは爪先だちで一回転、ステッキをアベルに向けて突き出す。アベルは反射的に、胸元をガードした。
「スーパージャンヌちゃんに、変身!」
……………………
……………………
…………………
………………
「なにやってるんですか?」
困惑するアベルとは対照的に、ジャンヌはがっかりしたような表情を浮かべた。
「なるほど……トモエちゃんにしか、できないわけね」
「なにがですか?」
アベルの問いを、ジャンヌは無視した。
あまり面白くない状況だったが、アベルは作り笑いをした。
ジャンヌから漂う殺気に、気後れしたのだ。
「ジャンヌさんって、ときどき、殺し屋みたいな迫力がありますよね」
「あら……それって褒めてるの?」
「いや、褒めるとか褒めないとか、そういうことじゃなくて……」
アベルは、説明に窮した。急いで話題を変えた。
「ところでジャンヌさん、シャトー・ルージュで起きた殺人の話、聞きました?」
「殺人なんて、あちこちで起こってるでしょ」
ジャンヌは、昼食のことでも話すかのように、そう返してきた。
人間の死に対する彼女の無頓着さは、いつも少年の驚きの的であった。
「それがですね……連続殺人なんです」
「あら、そうなの?」
「そうなのって……とにかく、ちょっとヤバいんですよ、いろいろと」
「ああ、警察の張り込みが厳しくなって、商売上がったりってことね」
ジャンヌの乗り気のなさに、アベルはこの話を打ち切ろうかと思った。
そもそも、若い女性相手に殺人事件を語るのも、妙である。
少年はしばらく迷った挙げ句、先を続けた。
「白人ばかり狙われるから、移民の仕業だって言われてるんですけど……」
「かもね」
「だけど、変なんです……殺されかたが……」
そのとき初めて、ジャンヌはわずかに反応した。
例の氷のような瞳で、ジャンヌは少年を盗み見た。
「どういう風に?」
脅すような口調に、アベルは一瞬たじろいだ。
かすれ声で、答えを返した。
「あの……信じてもらえないかもしれませんが……血を抜かれてるんです」
「ふーん」
ジャンヌはそれだけ言って、ふたたび口をつぐんだ。
わざとらしく、ステッキを眺めていた。
「と、とにかく、吸血鬼事件とかで、あれこれ噂になってるんですよ。血液ブローカーの仕業だって言う奴もいますし、あるいは宇宙人の誘拐だって……」
「キャトル・ミューテーションの人間版ってこと?」
聞き慣れぬ単語に、少年を眉をひそめた。
「キャト云々は知らないですけど……真面目に吸血鬼だって主張する奴もいます」
「吸血鬼ねえ……現代に、そんなものがいると思う?」
小馬鹿にされたような気がして、アベルは弁明した。
「信じてないですよ。子供じゃあるまいし」
「あら、私は信じてるわよ?」
予期せぬ返しに、アベルは目を白黒させた。
「え、あの……別にジャンヌさんを子供って言ったわけじゃ……」
「分かってるってば。そんなに焦らない」
ジャンヌは腰に手を当て、胸を張って大笑いした。
アベルも、お追従で笑った。
「ま、あんたも用心しなさい。生粋のフランス人なんだから」
「そうですけど……ほんとに関係あるんですかね?」
「なにが?」
「殺人と人種差別ですよ。だいたい、フランス人なら金持ちで移民なら貧乏とか、そんなの偏見じゃないですか。まあ俺は移民3世で貧乏ですけど……移民のミリオネアだっていっぱいいますよ。それに犯人は移民だってうわさがあって、俺も迷惑してるんです」
アベルの不安に、ジャンヌは視線を天井へと逸らせた。
「そうね……シャトー・ルージュには、しばらく近付かないほうがいいかも」
「言われなくても、近付きませんよ。稼ぎ場でもないですし」
「けっこうけっこう……じゃ、またなにかあったら、よろしくぅ」
ジャンヌはそう言い残して、部屋を出て行った。
閉められた扉の向こうで、軽快なステップが鳴り響く。
遠ざかる足音を聞きながら、アベルはステッキのことを回想していた。
「あの宝石……やっぱり本物じゃないか?」
○
。
.
アパートを出たジャンヌは、セーヌ河のベンチに腰を下ろしていた。
カップルや夫婦、ジョギングにはげむ市民を見送りつつ、風の音に耳を澄ませた。ブルボン王朝の時代に引っ越して来て以来、何百年も繰り返し見続けた風景。その風景には、どこかしら飽きを感じさせない、微妙な綾が存在していた。クロード・モネの描いた、刻一刻と変遷する光の加減というものが、そこにはあるように思われてならないのだった。
「吸血鬼ね……」
ジャンヌはタブレットを取り出すと、ワイヤレスイヤホンを嵌めた。画面をフリックし、目当ての番号を呼び出す。
なかなか応答がない。
「留守かしら?」
ジャンヌがそうつぶやいた瞬間、呼び出し音が途切れた。
《こちら、パリ警視庁のバルトです。どなたですか?》
「もしもし、私よ、わ・た・し」
オレオレ詐欺のような出方にもかかわらず、相手はすぐさま反応した。
《ジャンヌさんですか……?》
「正解」
《すみません、勤務中なのですが……》
相手はそう言って、しばらく無言になった。
周囲を確認しているのだろう。ジャンヌは、かまわず先を続けた。
「べつに大した用事じゃないんだけど……シャトー・ルージュの件、噂が広まってるじゃないの。ちゃんと口止めしてる?」
《無理ですよ。警察が死体の第一発見者じゃないんですから》
「それはそうだけど……もうちょっと、なんとかならないわけ?」
《こちらとしても、全力を尽くしてます。しかし、現場が現場なだけに、口の軽い連中が多くて……とにかく、これ以上の情報操作は無理です。新聞で大々的に取り上げられないだけでも、満足していただかないと》
背後で、犬が吠えた。
ふりかえると、飼い主の子供が、必死に紐を引っ張っていた。
ジャンヌは子供にほほえんだあと、ふたたび会話に集中した。
「ま、その点は感謝してるわ。ところで、なにか新しい発見はあった?」
イヤホンの向こうで、ぱらぱらと紙をめくる音が聞こえた。
手帳をひらいているのだろう。
とはいえ要領がよくない。ジャンヌは辛抱強く待った。
《とりあえず、警察で判明していることをお伝えします。被害者は、現在5人。そのうち、男性が4名で、全員フランス人です。移民系ではありません。少なくとも、祖父の代からフランス国籍を持っている連中ばかりです。年齢はバラバラで、下は28、上は53。お互いに面識はないものと思われます》
「んー、なにか繋がりがあると思うんだけど。仕事とか」
《難しい質問ですね……職場は一緒ではありませんし……》
「ひとりずつ、名前と職業を言ってもらえない?」
《個人情報なんですがね》
相手のためらいにもかかわらず、ジャンヌは強気に出た。
「いいじゃないの。パパッと解決してあげるから」
解決。ジャンヌはその言葉を強調した。
バルト警視との付き合いは、警察と私立探偵ということになっているのだ。いくつかの難事件を解決したおかげで、ジャンヌは警察機構から、一定の信頼を得ていた。もっとも、相手がジャンヌの正体を知ったならば、卒倒するに違いない。
《誰にも言わないでくださいよ》
「大丈夫、これまで漏らしたことないでしょ」
《確かに……年齢順に行きます。アレクシス・カルタン、28歳。パリ第11大学で理学博士を取った青年です。いわゆるエリートですな。しかし、卒業後は就職しておらず、理由も定かではありません。精神病だったという噂もあります。次に、シャロル・ジェラール、35歳。商社マンですが、もともとはブレスト国立工科大学で、再生医療の研究をしていたようです。義手とか、そういうものです。3人目は、ノエル・ド・クーロン、37歳。唯一の女性被害者です。心理療法士とかなんとか。評判は良かったようで。4人目は、オーギュスト・カミュ、42歳。医者です。正確には、外科医です。5人目は、トニー・デュマ、58歳。退役軍人です》
ジャンヌは、「ふむ」と息を漏らす。
「『超』は付かないけど、エリートばかりじゃない」
《そうなんですよ。前科もありません》
「なんでそんなエリートが、夜中のシャトー・ルージュをうろついてたわけ?」
ジャンヌの指摘に、相手は押し黙った。
シャトー・ルージュが危険な地域であることは、パリ市民ならば誰でも知っていることだ。観光ガイドですら、夜中は近付かないように注意されていた。
案の定、バルトは次のように返した。
《さすがはジャンヌさん……私たちも、その線で捜査を進めています》
「ようするに、なにか共通の背景があると睨んでるわけね?」
《ええ、そうとしか考えられません。検死結果によれば、5人とも、深夜の2時から3時にかけて殺害されています。正確な現場は分かりませんが、死体の損傷から見て、死後に多少は移動させられたようです。しかし、目撃者がいないところを見ると、殺害現場と遺棄現場は、それほど離れていないのではないかと。少なくとも、私はそう考えます》
「発見場所は、まちまち?」
《そうですね。特に繋がりがあるようには、思えません》
「移動させたとすれば……車でしょうね」
ジャンヌはセーヌ河の水面を眺めながら、そうつぶやいた。
《ええ、警察のほうでも、個人タクシーを中心に、聞き込みを行っています》
「成果ナシなの?」
《今のところは……》
ジャンヌは空を見上げた。
6時を回っているというのに、青く澄んだ空が広がっていた。緯度が高いので、夏場は日の入りが遅いのだ。8月ともなれば、夜の9時を過ぎたあたりにようやく暗くなる。
「分かったわ。こちらでも調査してみる」
《うちの手柄を、横取りしないでくださいよ?》
バルトの突っ込みに、ジャンヌはくすりと笑った。
「はいはい、解決したら警察の手柄ってことにするわよ……じゃ、また」
ジャンヌは通話を切り、タブレットをかかえたまま、席を立った。
セーヌ川を下る貨物船に、ジャンヌは懐かしげなまなざしを向けた。
「吸血鬼か……エミリアの奴、変なこと考えてるんじゃないでしょうね?」




