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大嫌い!

『パパなんか、大嫌い!』初めて言ったのはいつだろう。

確か小学校でパパについて作文を書く為に、パパの会社に見学に行った時だと思う。

パパは今でも藍花商事あいかしょうじという大きな総合商社で仕事をしている。

パパとママの友人の四谷小夜よつやさよちゃんに連れられて私はパパの会社に行った覚えがある。

今も変らないんだけど小夜ちゃんは背が高くスタイルが良くって、軽くウェーブの掛かったミディアムヘアーで花柄のワンピースの上に茶系のジャケットを羽織っていた。

小夜ちゃんが玄関ホールにある受付で受付のお姉さんに尋ねた。

「すいません、営業二課の神楽坂かぐらざか係長をお願いしたいのですが」

「神楽坂ですね、しばらくお待ちください」

受付のお姉さんが優しい笑顔で私の顔を見ながらどこかに電話していて、直ぐに裏手にある駐車場に居るはずだと教えてくれた。

小夜ちゃんに手を引かれながら大きな本社ビルの裏にある駐車場に行くと、駐車場の隅でホースを使ってパパが何かを洗っていた。

ゆう、あなた何をしているの?」

「ん? 小夜か。何をって見れば判るだろう、クーラーのフィルター掃除だよ」

「あのね、今日は何の日だか判っているんでしょ」

「あっ、美奈の会社見学か。ミーナ、良く来たね」

パパは小夜ちゃんに言われて気付いたみたいだった。

私は凄く不安になった。

だって小夜ちゃんからはスーツをビシッと着てエリートマンだって聞いてたから。

それに友達の真弓ちゃんちの自慢のパパも大きな会社の係長さんで、いつもスーツを着て格好良く仕事をしているって自慢してた。

だから、パパも…… だけど目の前に居るパパは上着を脱いで、ネクタイを緩めてワイシャツの袖を捲くり四角くって黒いクーラーのフィルターを持って満面の笑顔だった。

「パパのお仕事はお掃除屋さんなの?」

「今日のパパの仕事はクーラーの掃除をする事だよ」

そんな事をパパに言われて段々悲しくなってきて、だってパパの会社から帰ったら真弓ちゃんの家で一緒に作文を書く約束をしているんだもん。

「パパなんか、大嫌い!」

「優! あんたは本当に! 待ちなさい、美奈!」

そんなパパを見ているのが嫌で思わず叫んで走り出してしまう、直ぐに小夜ちゃんが追い掛けてきて腕を掴まれて捕まってしまった。

「美奈ちゃん、パパに言ってちゃんとお仕事をしている所を見せてもらおうね」

「もう嫌! パパはお掃除屋さんなんだもん。作文にはお掃除屋さんだって書く!」

「そんな事を言わないで、ね」

私は小夜ちゃんが必死に宥め賺しているのに、決して首を縦に振らずに小夜ちゃんの手を引っ張って歩き出した。

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