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それからというもの、いままで耳に入ってこなかったもの
目に入ってこなかったものが、急に入ってくるようになった
金村の近くにはいつも誰かしらがいて
金村も、そして、その誰かしらも、いつも笑顔で
聞きたくなくても金村の情報が
どこにいても四方から耳に飛び込んでくる
金村はひとりっ子で、両親はどっちも働いてて
家に帰っても誰もいない
からあげが好き、ハンバーグが好き、焼肉よりはやきとりがいい
煮魚は苦手だけどサバのみそ煮は好き
金村は、塾には行っていない
それは僕もそうだ、このちいさい町から片道一時間半もかけて塾に通うのって
そりゃあ、やっぱり、できないかあ
家庭教師にしても、こんなとこまで来てくれる人なんていないし
そうだよなあ、僕と同じなんだなあ
僕と同じ年の、ふつうの女の子なんだなあ
でも、やっぱり、ぜんぜん、ちがうなあ、金村は
からあげも、ハンバーグも、やきとりも、サバのみそ煮も
金村は、全部、覚えていたいんだ
僕は、そんなことない、まったくない
ぜんぜん、ちがうんだ、僕とは




