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【資料集】Chromatin-Code ~特異感情能力対策庁特務隊~  作者: 泥色の卵
⚪︎⚪︎駅・特異能力者通り魔事件の記録
9/30

衆議院 内閣委員会(20××年)

B党 ○○議員の質疑



○○委員(B党):

「まず冒頭に、本事件で犠牲となられた52名の方々に心からの哀悼を申し上げるとともに、負傷された183名の皆様にお見舞いを申し上げます。


 今回の無差別殺人事件は、我が国がこれまで直面したことのない大規模な特異能力犯罪であり、現行制度の限界を白日の下に晒したものであります。

 現場では警察官、自衛官に加え、一般人までもが協力に立ち、特異能力によって制圧に至ったと承知しておりますが、いずれも法的根拠の乏しい中での行為でありました。

 このことは、国民の生命を守るため命懸けで職務を遂行した関係者を、法の網の下で逆に危うくしかねない重大な問題であります。


 そこで、順に伺ってまいります。まず国家公安委員長にお尋ねいたします。

 警察法、警察官職務執行法は、現行においては武器の使用について一定の規定を置いておりますが、特異能力の使用については明文の規定が一切ございません。

 それにもかかわらず、今回現場の警察官が自らの能力を用いて制圧に加わった事実が報じられております。

 これは法的にどのように位置づけられるのか。すなわち、警察官が能力を職務執行に用いることを、現行法は認めているのか否か。国家公安委員長、明確にお答えいただきたい」



国家公安委員長

「お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、警察官職務執行法には特異能力の使用に関する明確な規定は存在しておりません。しかしながら、警察庁から発出した通達などにより、それぞれの能力に鑑み、拳銃や警棒などの武器の使用と比較検討し、国民の生命身体財産を守るため、必要最小限度で使うことはやむを得ない旨を伝達しているところでございます。

 そのため、現場警察官の行為は、必要最小限度の力の行使を認める一般的な規定の中で解釈されてきたにすぎず、法的に能力行使を直接的に裏づけるものではございません。

 現場の警察官は、国民の生命を守るため内規に従い判断したもので、報告内容によれば、私自身も適正な制圧行為であったと認識しております」




○○委員(B党)

「今の御答弁で明らかなように、法的根拠は曖昧なままであります。

 現場の警察官は、正義感と使命感から命を懸けて行動した。にもかかわらず、法律上は『果たして違法ではないのか』という不安を常に抱えざるを得ない状況であります。

 これは一警察官にとっても、また治安機関全体にとっても極めて不健全であります。


 次に、防衛大臣に伺います。

 今回、現場には自衛官も居合わせ、現場警察官の要請に基づき、自らの能力を用いて警察官、一般人と協力して治安維持のため制圧に加わった隊員がいたと承知しております。

 しかし、自衛隊法にも特異能力の使用を定めた条文は存在いたしません。

 結果として、自衛官は国民を守るために戦ったにもかかわらず、事後にその行為が法的に適切だったか否か、責任を問われかねない。

 これは部隊の士気をも著しく損なう問題であります。

 防衛大臣、この点をどのように認識されておりますか」



防衛大臣

「お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、自衛隊法にも特異能力の使用について明示的な規定はございません。

 先ほど国家公安委員長にもありましたが、防衛省としましても、内規として、治安維持や国民の生命身体財産を守るため、必要と認められる場合、現場の自衛官は、状況の緊急性を踏まえ、武器使用基準と同様の考え方で、自らの能力を必要最小限度の範囲で行使することを妨げない、と通達しております。今回は、現場における緊急的な警察からの要請に基づいて治安維持活動に加わったものでありますが、今回の対応をしていただいた現場隊員もこの内規に従って制圧行為を実施したもので、自衛隊の内規はもちろん、警察の通達によって認められている能力行使範囲と照らし合わせましても、適正な職務執行であったと承知しております。

 現行法制下では法的整理が不十分であることは事実であり、政府としても今後検討を要する課題と認識しております」



○○委員(B党)

「警察も自衛隊も、現場の判断に委ねられ、結果として法的空白の中で行動していたことが明らかになりました。

 では法務大臣に伺います。

 今回、一般の登録能力者に対しても半ば公的な協力要請がなされ、戦闘行為に従事するに至ったと承知しております。

 しかし、彼らの法的地位は一切整備されておらず、もし仮に過剰防衛や誤認行為があった場合、刑事責任を問われるのか、あるいは民事上の損害賠償を負うのか、全く不透明であります。

 また、国家のために命を懸けて協力したにもかかわらず、補償の枠組みも存在しない。

 このままでは今後、協力を仰ぐこと自体が困難になるのではありませんか。

 法務大臣、御所見を伺います」



法務大臣

「お答えいたします。

 現行法制下においては、御指摘のように一般能力者の協力について明確な法的根拠はなく、その責任の所在や補償制度も未整備でございます。

 そのため、協力者が不利益を被るおそれがあることは否定できず、制度整備が急務であると認識しております。

 政府としては、今後速やかに法的枠組みを検討し、責任と補償の明確化を図ってまいりたいと考えております」



○○委員(B党)

「今までの答弁で明らかになったのは、現行制度が全く追いついていないという厳しい現実であります。

 警察官も、自衛官も、そして善意で協力した市民も、法的には空白の中で命を懸けてきた。

 これでは国を守る体制としてあまりにも脆弱であり、同時に国民の信頼をも失うおそれがあります。


 したがって、我が国として喫緊に必要なのは、能力者の人権を尊重しつつ、公共の安全を確保するための明確な法整備であります。

 加えて、その法を運用し、能力者に対応できる専門の組織を創設すること。

 これこそが、国民の命を守るために不可欠な国家的課題であります。


 総理に伺います。政府は速やかに法案を提出し、専門の取締り機関を設立するお考えがあるのか。明確に御答弁いただきたい」



内閣総理大臣(A党)

「○○委員の御指摘にお答えいたします。

 現行制度の不備により、今回の事件に適正に対処できなかったことは、政府としても真摯に受け止めております。

 能力者の適正な管理と国民の安全確保を両立させるため、法整備を速やかに進めるとともに、これを担う専門の組織を設ける方針でございます。

 具体的な事項については協議、調整中ではございますが、現時点の見通しとしましては、警察庁に設置されている特異感情能力対策局を独立した庁として組織する考えでおります。また、新設庁の組織に伴いまして、現在法的空白ともいえる部分を補完する“特異感情能力対策法”を制定予定であります。

 政府としては、今後も与野党の御意見を伺いながら、必要な立法措置を速やかに講じてまいる所存であります」



○○委員(B党)

「是非ですね、早急に特異感情能力対策法の制定と、特異感情能力対策庁を組織していただいて、能力者を含めた国民の皆さんが安心して暮らしていけるように進めていただければと思います。

 そして最後にですね、今回先着した2名の警察官、山本尚侍警部、谷岡利明警部補につきましては、能力者に対して自らの危険を顧みず、拳銃使用により犯人の足を負傷させ、移動範囲を著しく制限して、被害拡大防止に大きく貢献されております。この場をお借りしまして、その勇気ある職務執行に心から敬意を捧げます。本当にありがとうございました。


以上で私の質疑を終わります。ありがとうございます」


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