特対判例:潜心官による思想・良心の自由侵害事件
【事件名】
20××年
潜心官による思想・良心の自由侵害事件(通称:白城事件)
【概要】
特対庁の潜心官・白城●●は、複数の女性を監禁・殺害した特異能力者X(当時23歳)に対し、潜心措置を通じて対象の心象世界の捜索を行った。
Xの内心には「自分の欲望は制御できない」「人を殺すことは悪いが、快感が勝つ」という 倒錯的な倫理観が根付いていた。
潜心官は、心象世界内にて以下のような発言を行った。
「それは欲望じゃない。他人を使い捨てにするための免罪符だ。そう考え続ける限り、お前は“ただの怪物”だ」
その結果、対象者Xは激しく動揺し、防衛的な反発から心理内で一時的に暴走。結果、精神の崩壊を起こして長期の昏睡状態に陥った。
弁護団はこれを「思想への暴力的介入」とし、
「思想および良心の自由(憲法19条)に対する重大な侵害」として国を提訴。
【弁護側の主張】
①被告の持つ倒錯的倫理観は法的・道徳的に誤りだとしても、それを「間違い」と言明し、崩す行為は人格の修正に他ならない。
②心理世界という極度に脆弱かつ不安定な場で、「否定の言葉」をぶつけることは、精神に対する直接的暴力である。
③被告は加害者ではあるが、国家がその内心に“正しさ”を押し付けるのは、思想統制に極めて近い行為であり、明確に憲法19条に違反する。
【国(特対庁)の主張】
①潜心は、心理内での状況を刑事手続に使用することの他、能力の暴発による再犯を防止し、更生の契機とするための措置であり、否定ではなく、自己との対峙を促す行為であって、潜心官はその促進剤としての役割を果たしている。
②本件では外部による強制的操作や洗脳は行われておらず、言葉による反射的対話に留まっている。
③当該潜心官の発言は、対象に対して、真に更生してほしいと願う心から、厳しい言葉をあえて選んだものであることに疑いはなく、それは人格の修正ではなく、更生を促す行為である。また被害者遺族の感情と、社会秩序の防衛の観点からも正当性を欠くものではない。
【判決(要旨)】
国家が、刑事手続きの一環として思想そのものに踏み込み、“間違っている”と評価し、それに基づく人格の変容を促す可能性のある行為は、極めて慎重でなければならない。
本件において、潜心官の言葉は確かに、被告の倒錯的思想を打ち崩すという意味で、社会的正義の側に立った行為であったかもしれない。
しかし、その言葉は、対象者の人格形成の核となる自己性を否定し、精神的自己を根幹から変貌させることを目的としており、結果として精神崩壊を引き起こした。
潜心官が行うべきは、暴発の原因たる感情の観察、理解、及び適正な捜査活動であり、倫理的な是非を裁くことではない。
ゆえに本件行為は、思想及び良心の自由を不当に侵害しないものとは言えず、憲法第十九条に違反すると認定する。
【影響とその後】
①この判決により、潜心中の「直接的かつ否定的介入」は禁止に近い扱いとなった。
②潜心官は「感情を問うこと」はできても、「思想の正誤を断定してはならない」旨が内部規則に明記。




