第8話 荒野のアメリカ決戦! カウボーイ騎手との一騎打ち!
1
砂漠の覇王を討ち取り、砂まみれでドバイを後にした烈馬と黒風。
その噂は海を越え、アメリカ西部の荒野へと届いた。
そこは、かつて無法者とカウボーイが馬上で決闘を繰り広げた地――
いまもなお、荒野の心を宿す者たちが集う“ワイルドホース・ダービー”の聖地だ。
2
烈馬とあやめが到着したのは、荒野のど真ん中にポツンと立つサルーン。
バーの扉をギィィと開けた烈馬に、酒場の全員がギョッと振り向いた。
烈馬は堂々と甲冑姿で一歩踏み込む。
「ここが荒野の戦場か……良き匂いだ!」
あやめは周りのカウボーイたちの視線に震えながら小声で泣く。
「なんでよりによって鎧着てるのォォォ……」
3
一方、バーカウンターの奥。
一人の男がウイスキーを煽り、烈馬を横目で睨んだ。
ボロボロのテンガロンハットに鋭い眼光――
“荒野の鷹”と呼ばれる伝説のカウボーイ騎手、ビリー・ジョーンズ。
彼はグラスを置き、低く笑った。
「噂の武将ジョッキーってのはお前か……砂漠の王を倒したってな。」
烈馬は鼻で笑い返す。
「お主が荒野の鷹か――面白い。いざ、一騎打ちと参ろうぞ!」
ビリーは指を鳴らすと、荒野を駆け抜ける黒毛の馬“バッファローウィンド”を呼び寄せた。
4
そして翌日。
舞台は荒野の特設ダートコース。
観客席は牧場のフェンスと、集まったカウボーイたちのトラックの荷台。
実況は地元の保安官がマイク片手に担当する。
『レディース・アンド・ジェントルメン! これより“ワイルドホース・ダービー”スペシャルマッチを開催する!』
5
スタートゲートに並んだ黒風とバッファローウィンド。
烈馬とビリーが睨み合い、保安官が大きく手を振り上げた。
『Ready――Steady――GO!!』
乾いた空砲の音と共に――
烈馬とビリーの“荒野の決闘”が始まった!
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黒風が砂煙を巻き上げる。
ビリーは一瞬で手綱を握り直し、馬上で片膝を立てて低姿勢。
烈馬はお得意の“戦国突撃スタイル”で、馬の首筋に体を密着させる。
実況の保安官が興奮しすぎて何を言ってるか分からない。
『フワォッホォー! サムライVSカウボーイ! こんな光景見たことねぇぇぇ!!』
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中盤、烈馬と黒風がわずかに前へ。
だが、ビリーは口笛を吹いてバッファローウィンドの耳を刺激した。
瞬間、バッファローウィンドが荒野の風のように加速!
ビリー「おいおい、サムライ! 荒野じゃ風に逆らえねぇぜ!」
烈馬の瞳がギラリと光る。
「風に抗わず、風を斬るが我が流儀――黒風、斬り裂け!!」
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残り200メートル。
烈馬とビリーは横並び、荒野の土煙で互いの顔すら見えない。
保安官の実況がマイク越しに絶叫する。
『どっちだどっちだ!? サムライかカウボーイか――!?』
あやめは観客席で、保安官の帽子を奪って頭を抱えていた。
「どっちでもいいから無事に帰ってきて―――!!」
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最後の直線。
烈馬が一声、咆哮した。
「黒風――いざ、討ち取ったりィィィ!!」
黒風の脚が荒野を割るように地を蹴った。
ビリーも全力で鞭を振るが、黒風の“突撃”は止まらない。
観客席のカウボーイたちが帽子を空に投げ、叫んだ。
『ヒャッホォォォ――!!』
10
ゴールライン。
先に駆け抜けたのは――
烈馬と黒風だった。
『ゴーーーーール!! サムライが荒野を制したァァァ――!!』
ビリーは砂まみれの顔でニヤリと笑った。
「サムライ……お前こそ、この荒野の王だ。」
烈馬は勝ち鬨をあげた。
「我が突撃、荒野をも斬り伏せたり――!!」
こうして――
烈馬と黒風はドバイの砂漠に続き、荒野までも制覇した。
世界中のファンは熱狂し、あやめの胃薬は――
ついにアメリカの薬局からも在庫が消え去ったという。