第7話 灼熱のドバイ決戦! 砂漠の王とサムライの激突!
1
フランス・パリを制した烈馬と黒風の“世界修行”は、次なる舞台――灼熱の砂漠、ドバイへと移った。
豪華すぎる超高級ホテルのスイートルーム。
窓の外には金色の砂漠と、ドバイ名物の摩天楼が立ち並ぶ。
だが――
「うむ、夜も熱いのだな……拙者、鎧を脱ぐか迷うわ……」
烈馬は鎧姿でエアコンに正座していた。
あやめはソファで氷嚢を抱えたまま、白目をむいていた。
「……お願いだから……現地適応……してぇぇぇ……」
2
今回のレースは、ドバイの富豪が主催する特別招待杯――
その名も**『砂漠の覇王戦』**。
勝者には莫大な賞金と、“砂漠の王”の称号が与えられる。
だが、烈馬にとって金などどうでもよかった。
「砂漠にて戦を制する……これぞ武人の誉れ! 我が黒風と共に、砂の嵐を切り裂いてくれよう!」
黒風はクーラーの効いた馬房で、冷たい水を飲みながら静かに尻尾を振っていた。
3
迎え撃つドバイの“砂漠の王”――
それが、現地で伝説と呼ばれる騎手ファルーク・アシュラフ。
ファルークはアラブ馬の王者“シルバーサンド”を駆る。
その俊足と持久力は、まさに砂漠の風そのもの。
空港での会見で、ファルークはこう言い放った。
「戦国ジョッキー? 面白いおもちゃだ。だが、砂漠は異邦人には微笑まない。」
通訳が烈馬に伝えると――
烈馬はキッとファルークを睨んだ。
「ならば拙者が、この砂漠ごと討ち取ってくれよう。」
ファルーク「……フッ、言葉だけは勇ましいな、サムライ。」
4
レース前夜――
砂漠に沈む夕日を背に、烈馬は黒風の手綱を握りながら話しかけた。
「黒風よ……戦は数多く越えてきたが、熱砂の戦場は初めてぞ……共に突破し、勝利の酒をあやめ殿に献じるのだ!」
あやめ(馬じゃなくて人間に献じて……)
5
そして迎えたレース当日――
コースは灼熱の砂漠を再現した特設トラック。
40℃を超える熱気。
観客席には世界中の王族と富豪、そして熱狂するファンが詰めかけていた。
スタートゲートに並んだ黒風とシルバーサンド。
烈馬とファルークが視線を交わす。
ファルーク「砂漠の掟、教えてやる。」
烈馬「拙者の戦は、掟など超えてこそじゃ!」
6
バンッ――!
スタートゲートが開いた瞬間、砂が爆風のように舞い上がる。
ファルークのシルバーサンドは砂漠の主――
まるで砂を滑るような走りで先頭を奪う。
烈馬と黒風も負けていない。
砂嵐に突っ込むように低く伏せ、黒風の背でバランスを取る烈馬。
実況が熱狂する。
『なんという脚だ! ファルークが先頭! だがすぐ後ろに真田烈馬! 砂漠の王とサムライの一騎打ちだ!!』
7
中盤――
砂の熱波で他の馬たちは徐々に脱落していく。
残ったのは、シルバーサンドと黒風、ファルークと烈馬。
ファルークが余裕の笑みを見せる。
「砂漠では脚が奪われる。お前の馬では無理だ!」
烈馬は涼しい顔で吠えた。
「黒風は、戦場の地獄を越えてきた馬ぞ! 砂漠ごとき――!」
烈馬が黒風の首筋を叩いた。
「黒風、突撃の時ぞ!」
黒風が耳を伏せ、牙をむくかのように地を蹴る。
8
残り400メートル――
ファルークの顔から余裕が消えた。
砂を蹴散らして、黒風が横に並ぶ。
観客席が総立ち。
『真田烈馬、黒風――砂漠の王を捉えた!! これが……戦国の突撃か――!!』
ファルークは叫んだ。
「不可能だ……砂漠では俺が王だ!!」
烈馬の声が砂嵐を貫く。
「砂漠の王? ならば拙者は――天下無双じゃあああ!!」
9
ゴール前100メートル。
黒風が一歩、また一歩と前へ。
ファルークの鞭が宙を切るが、シルバーサンドはもう追いつけない。
烈馬が咆哮する。
「黒風――討ち取ったり――!!」
10
ゴール――
観客の悲鳴と歓声が砂漠にこだまする。
『ゴーーーーーーール!! 真田烈馬、砂漠の覇王をも討ち取った――!!』
ファルークは砂まみれの顔で苦笑した。
「……サムライ……お前こそ、砂漠の王だ。」
烈馬は黒風の首を抱き、誇らしげに叫んだ。
「これが我が戦よ――世界よ、次なる戦場へ誘うがいい!!」
こうして烈馬と黒風は
灼熱のドバイをも制し、
“砂漠の王”の称号を奪い取ったのだった。
そして――
あやめの胃は砂漠の乾いた風のように空っぽになったのであった。