第6話 世界からの挑戦状! 武将ジョッキー、海外遠征へ!
1
G1天空杯を制したその日――
烈馬と黒風の名は日本を超え、世界中の競馬ファンの間で伝説となった。
SNSのトレンドは24時間、#SAMURAIJOCKEY が独占。
世界のスポーツニュースはこぞって特集を組み、
あるニュース番組ではマルコ・サヴァティーニが敗北後のインタビューでこう言った。
「彼は真のサムライだ……だが、俺はこのままでは終わらない。」
マルコだけではない。
フランス、アメリカ、ドバイ――
世界の名だたる騎手たちが、烈馬への挑戦状を叩きつけてきた。
2
その知らせが、あやめと烈馬の元に届く。
「……こ、これ全部……?」
あやめの前には、各国の有名競馬場から届いた招待状の山。
『パリ凱旋門特別招待』
『ドバイ・砂漠の覇王戦』
『ケンタッキー・サムライチャレンジ』――
名前がどんどんカオスになっている。
烈馬は一枚一枚を真剣な顔で読んだ後、力強く言った。
「我が進む道、これぞ武者修行! いざ、世界へ出陣じゃ!!」
あやめはそっと胃薬を取り出した。
「……いくつあっても足りない……」
3
そして――
最初の遠征地はフランス・パリ。
凱旋門賞の特別エキシビションに、烈馬と黒風が招かれた。
空港では記者とファンが押し寄せ、烈馬が飛行機から降り立つと同時に大歓声。
「サムライ――!!」
「黒風ー! こっち向いてー!!」
烈馬は当然、機内でずっと鎧の手入れをしていたので、肩当てを付けたまま堂々と降りてきた。
あやめが泣きながら叫ぶ。
「だから機内で鎧つけないでって言ったのにィィィ!!」
4
フランスの調教コースでも、烈馬と黒風は注目の的だった。
他国の調教師たちが呆れながらも、その馬さばきに目を見張る。
「見ろ、あれが噂の武将ジョッキーだ……」
「馬と完全に一体だな……」
「フランス騎手協会に“甲冑騎手は禁止”って規約追加しとけ。」
烈馬はそんな視線もお構いなし。
「黒風よ、異国の空気も悪くないな! ここでも突撃あるのみじゃ!」
黒風がフランス産の高級ニンジンをバリバリかじりながら、鼻を鳴らした。
5
迎え撃つフランスの英雄は――
『白い貴公子』の異名を持つ騎手、ルイ・デュポン。
ルイはパドックで烈馬を見つけると、優雅に手を差し出した。
「ボンジュール、ムッシュー烈馬。あなたの突撃、楽しみにしています。」
烈馬は謎の敬礼で返す。
「拙者の突撃、異国の空に轟かせてくれよう!」
横であやめが小声で泣く。
「お願いだから国際問題だけはやめて……」
6
いよいよ、フランスの特別エキシビションレース当日。
世界中の競馬ファンが注目する中――
スタートゲートに黒風と烈馬が入る。
実況席では各国の解説者が声を揃える。
『さて、ついに始まります! サムライジョッキーVS白い貴公子!』
烈馬はルイにだけ聞こえる声で低く言った。
「貴公子とて、我が突撃には敵わぬぞ。」
ルイは涼しい笑みを浮かべた。
「サムライ、戦いの作法はパリにもある。教えてあげましょう。」
7
バンッ――!
スタートゲートが開くと同時に、烈馬と黒風は爆発的なダッシュを決めた。
ルイと白馬も追随する。
パリの風を切り裂くような激突。
観客席からは悲鳴と歓声。
実況が叫ぶ。
『まるで戦場だ! 真田烈馬とルイ・デュポン! この2頭の一騎打ちだ!!』
8
最終コーナー。
ルイの白馬が先行する。
ルイ「パリの風は私のものだ、ムッシュー烈馬!」
烈馬の瞳が光った。
「黒風、異国での初突撃、見せてみよ!!」
烈馬が一声。
黒風が牙を剥いたような加速を見せ、ルイの白馬に並びかけ――
9
ゴール前50メートル。
二頭は完全に並んだ。
観客席が総立ち。
あやめの祈りがパリの空を超えて響く。
「お願いだから無事にゴールしてえぇぇぇ――!」
烈馬が叫ぶ。
「いざぁ――――討ち取ったりぃぃぃ!!」
10
ゴールラインを先に駆け抜けたのは――
烈馬と黒風だった。
『ゴーーーーール!! 真田烈馬! フランスの白い貴公子を破った――!!』
観客は熱狂し、ルイは帽子を取って烈馬に微笑んだ。
「サムライ……あっぱれです。」
烈馬も誇らしげに胸を張った。
「これが拙者と黒風の“異国攻略”ぞ!」
こうして――
真田烈馬と黒風の“世界修行編”は、華々しい勝利で幕を開けた。
次なる戦場は――
熱砂のドバイか、荒野のアメリカか――!
そしてあやめの胃薬は、フランス薬局にて緊急大量購入されたのであった。