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第5話 ついにG1挑戦! 武将VS世界の名騎手

1

烈馬の名は、暴走気味の取材と破天荒なテレビ出演のおかげで、すでに競馬ファンなら誰もが知っていた。


――だが、誰も本気では思っていなかった。

あの奇抜な“戦国ジョッキー”が、ついに国内最高峰のG1レースに挑むなどと。


厩舎の奥の掲示板に貼られた大きなポスター。


《G1 天空杯》

世界各国のトップホースと名騎手が一堂に会す、夢のレースだ。


その出走馬の欄に、確かに書いてある。


騎手:真田烈馬 馬:黒風


2

「……あははは……」


あやめは乾いた笑いを漏らしながら、烈馬の健康チェックをしていた。


「胃痛どころじゃない……次は心臓止まるかもしれない……」


烈馬は黒風の蹄を磨きながら、まるで合戦前の武将そのものの顔をしている。


「これぞまさに天下分け目の戦い……黒風よ、いよいよ我らの名を、この現世に刻む刻が来たのだ!」


黒風は落ち着き払って、烈馬の手をペロリと舐めた。


その様子を見ていた藤堂が、口笛を吹いて笑う。


「お前がG1かよ……だがまあ、面白ぇもの見せてくれよ。」


3

天空杯当日――

空は快晴。

観客席には超満員の観客。

テレビ中継は海外にも配信され、世界中のファンがスクリーン越しに見守る。


パドックに並ぶ各国の強豪馬と騎手。


一際目立つのが、金色の勝負服を着た世界ランキング1位の騎手――マルコ・サヴァティーニ。


強いだけでなく、どこか傲慢な態度でも有名だ。


そのマルコが、烈馬をチラリと見て鼻で笑った。


「オー、サムライボーイ。ジョークはショーの外でやってくれ。」


烈馬は眉一つ動かさず、マルコを睨み返した。


「戦場に笑いは無用……お主の首、いただく。」


通訳が慌てて意味を伝えると、マルコは片眉を上げて不敵に笑った。


「おもしろい。せいぜい後ろから俺の砂でも食ってな!」


4

馬主席からあやめが心臓を押さえながらモニター越しに念じていた。


(お願いだから……無事に……無事に帰ってきてええええ!)


その横では、藤堂が缶コーヒーを啜りながらニヤリと呟く。


「さて、戦国武将さん……世界一の騎手に何を見せる?」


5

スタートゲート前。


各国の名馬がスタンバイする中、黒風と烈馬がゆっくりと歩み寄る。


烈馬は黒風の耳元にそっと口を寄せた。


「黒風……ここからが、我らの天下布武だ。」


黒風はまるで理解しているかのように、鼻を鳴らし地を蹴った。


『さあ、夢のG1――天空杯、スタートの時です!』


6

バンッ――!


ゲートが一斉に開く。


マルコの馬が美しいフォームで飛び出す。

烈馬と黒風も、それに一歩も引けを取らない加速で並ぶ。


実況が叫ぶ。


『先頭はマルコ・サヴァティーニ、しかし内側から真田烈馬! あの武将ジョッキーが、まさかの互角のスタート!』


マルコが横目で烈馬を一瞥する。


「ほう……なかなかのものだな、サムライ。」


烈馬は、にやりと笑った。


「我が突撃、ここより始まる――!」


7

コース半分を過ぎた頃――

烈馬と黒風は、完全にトップ集団に喰らいついていた。


他の海外の強豪馬も、この異様な二人に意識を奪われている。


マルコは軽く舌打ちし、手綱を引き締めた。


(邪魔だ……一気に引き離す!)


次の瞬間、マルコの馬が爆発的な加速を見せた。


烈馬と黒風が一歩、二歩と置いていかれる――


あやめは絶叫した。


「れ、烈馬さあああああん!!」


8

だが――


烈馬の瞳は燃えていた。


「黒風……そろそろか……?」


黒風の耳がぴくりと動く。


烈馬は鞍の上で体を伏せ、静かに言った。


「――撃て。」


黒風が、マルコの背を追って、再び地を蹴る。


9

実況が絶叫する。


『真田烈馬と黒風、再び加速――! なんと! マルコの馬に並んだ――!?』


観客席が総立ち。

世界中の実況席がざわめいた。


マルコが振り返り、青ざめた顔で烈馬を睨む。


「Crazy Samurai……!」


烈馬の目は一点を見つめていた。


「黒風、最後の突撃だ――行けぇぇぇ!!」


10

ラスト200メートル――

烈馬と黒風が、マルコの馬を一瞬で抜き去った。


マルコが必死に追うが――

黒風の脚はもう、誰にも止められない。


『先頭は真田烈馬! 黒風が突き抜けた――! ゴールまであとわずか――!』


あやめの叫びが、馬主席を揺るがした。


「いっけぇぇぇ――!!」


11

――ゴールライン。


烈馬と黒風は、まるで戦場を駆け抜ける槍のごとく、一直線にゴールを割った。


『ゴーーーーーーール!! これは奇跡だ――! 真田烈馬! 黒風! 夢のG1を制した――!!』


12

観客席は大歓声と拍手の渦。


マルコは苦笑し、帽子を取って烈馬に軽く頭を下げた。


「お前が……King of Samuraiだ。」


烈馬は笑みを浮かべ、黒風の首を撫でる。


「これが……我らの戦よ。」


スタンドではあやめが、泣き崩れながら拍手を送っていた。



こうして――

真田烈馬と黒風は、現代競馬の頂点をも制覇したのであった。


しかし、戦国武将の冒険はまだ終わらない――!

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