第3話 取材殺到! 武将ジョッキー、テレビ出演大混乱!
1
烈馬と黒風の公式レースデビューは、全国の競馬ファンはもちろん――
競馬に興味のなかった層にまで届いた。
『戦国武将が競馬界に降臨!?』
『勝負は潔い、でも走りは暴走!』
『現代に蘇る赤備えの騎馬隊――真田烈馬とは何者か!?』
ネットニュース、ワイドショー、スポーツ紙――
どこもかしこも烈馬の話題で持ち切りだ。
当然、テレビ局が放っておくはずがない。
2
「烈馬さん! インタビュー来てます! ちょっとちゃんとして!」
朝の厩舎――
あやめが烈馬の鎧の肩当てを外しながら必死に注意する。
「ふむ……拙者の武勇を世に知らしめる刻か……良きかな、良きかな!」
烈馬はキラキラした目で鏡を覗き込んでいた。
「……だから、その兜だけは絶対外してください! カメラ映りが大変なことになるから!」
「むっ、威厳が……」
「威厳よりも令和のルールです!」
近くでは、取材クルーが三脚とライトを準備しながらざわざわしていた。
3
インタビュー開始。
カメラマン「では、まずお名前とご職業をお願いします!」
烈馬「拙者、武田家騎馬隊筆頭――真田烈馬なり!」
カメラマン「えっと……競馬ジョッキー……で……?」
烈馬「うむ、現世では『ジョッキー』とやらを務めておるが、心は常に戦国の騎馬武将よ!」
リポーター「(苦笑)なるほど……では、競馬界での目標は?」
烈馬「全ての敵将を討ち取り、競馬場を我が領地とする!」
あやめ「ストーーップ!!」
バッと割り込んだあやめが、頭を下げながら必死のフォロー。
「あはは、ちょっと変わった言い回しが多いだけで、目標は優勝です、はい!」
カメラマンとリポーターがぽかんとした顔をしている。
4
その後もインタビューは地獄だった。
「好きな食べ物は?」
烈馬「馬の干し肉……いや、現世では何だ? うどん、というやつか!」
「休日の過ごし方は?」
烈馬「鍛錬、そして鍛錬、あとは馬と語らう。」
「恋人は?」
烈馬「馬だ。」
あやめ「馬じゃありません!! 変な誤解を生むからやめてーーー!」
スタッフ「(クスクス)」
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取材が終わると、すぐにネットニュースが更新された。
『謎多き武将ジョッキー、語録がクセ強すぎ!』
『馬が恋人? 戦場に生きる男の哲学がヤバい』
ファンが一気に増え、SNSのトレンド1位に「真田烈馬」が躍り出た。
――しかしその頃。
事務所の応接室で、胃薬を飲むあやめの姿があった。
「はぁ……もうダメだ……この人、メディア対応とか無理すぎる……」
横では藤堂が大笑いしていた。
「最高だな、武将さん! お前、次の取材も楽しみだわ!」
「笑い事じゃないです――!!」
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そこへ、取材陣が次々と詰めかける。
「烈馬さん、次は情報番組の生放送インタビューお願いします!」
「夕方にはバラエティの収録です!」
「週刊誌のグラビアも撮りたいんですが――」
あやめの意識が遠のいていく。
烈馬はと言えば――
「おお! 我が名が広まるのは喜ばしきことよ! さあ、次の戦場へ参るぞ!」
カメラマンの前で、また兜を構えた。
「兜はやめてええええええ――!!」
あやめの悲鳴が、また厩舎に響き渡った。
こうして、真田烈馬の破天荒すぎるテレビデビューは
競馬ファンだけでなく全国のお茶の間を震撼させることとなった――。
そしてあやめの胃薬のストックは、ついに底をつくのであった。