自滅の7:ぷるんッぷるんは、ぷるるるるんッ、に変わる
ここはS温泉・フジワランド。
浴室では看板娘・フジワラが、一日の仕事を終えて、身を休めている。
汗も流せて、リフレッシュできた。
風呂から上がろうと、ガラリと戸を開ける。
しかし、マットに足をのせた瞬間、違和感を覚えた。
「?
マットがごつごつしてる…?
ここの床、岩素材じゃなかったはずだけど…」
少々奇妙に思うが…。
「ま、いっか」
特に気にもせず、マットをぎゅむっと踏みながら去って行った。
しかし…。
そのマットの下で、何やら動くものがあった。
はあはあはあはあはあはあ
ヒナだ。
マットの下に、ヒナが潜んでいた。
マット越しに踏みつけてもらうために…。
そう。ここはS温泉…つまり、ドS温泉。
ドM達の極楽の地である。
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そうは言っても、やはりやりすぎだ。
「あんなところに潜んでるなんて…」
勝手に女湯に忍び込んだヒナに、フジワラ、少々ご立腹。
しかし、こらしめるではなく、フジワラは意外な方法に出た。
「いいわ…あなたがそのつもりなら…
せっかくだから、つきあってもらいましょ」
「つきあう…?」
「実は前から思ってたの。私達…
体の相性、ピッタリなんじゃないかって…。」
「!!?」
フジワラの口からこんなオトナな言葉が飛び出し、慌てるヒナ。
確かに…そういうことに興味がないと言えば、嘘になる。
フジワラのことは、前から気になっていた。
フジワラも、ヒナには特別な感情を抱いているように思える。
下着を見て、頬がゆるんだこともある。
女湯に忍び込んだのも事実だ。
何より、自分はMで、彼女はS。これは紛れもない事実だ。
これ以上「相性」の良い相手なんて、考えられない。
でも…。
でも…。
「いいのよ、遠慮しなくて」
フジワラはいつになく熱を帯びた表情でヒナに迫る。
少しはだけた浴衣からのぞく、白い肌。
その姿は、いつも自滅して泣いている彼女からは想像ができないくらいに。
「妖艶」という言葉が似合うほど、色気を醸し出していた。
いつもと違う彼女の姿に戸惑うヒナ。
しかしフジワラは尚も迫ってくる。
「汗を流せる温泉もある…。
広い休憩スペースもある…。
そんな夜に、若い男女が揃ったら…。
…やるべきことは、ひとつよね?」
「ふ、フジワラ…」
ごくりと、ヒナののどが鳴った。
にやりと、フジワラの口角が上がった。
そして―
フジワラは目を輝かせた。
こんなときにやることと言ったら―
卓球に決まってるでしょ!!!
…あー、うん。卓球ね。うん。卓球。確かにその通りだね。
まぁ、そんなことだろうと思った。
フジワラだし。
艶っぽく見えたのは、ただの温泉の効能だった。
(ここの温泉、湯質がなめらかで、卵肌に仕上がるのでおすすめです)
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こうして、フジワラと卓球をすることになったヒナ。
しかし、ヒナが知っている卓球とは、少々ルールが違うようだった。
「違うのよ。貴方は打ち返しちゃダメでしょ。」
「?」
「体で受け止めればいいの。」
「!」
つまりこうだ。
フジワラがラケットで球を打つ。
ヒナは球を自分の体で受け止める。
つまり、ヒナはピンポン玉の的になるのだ。
「ね?相性ピッタリ!まさに私達のためのスポーツ!!」
「おおお!!!」
卓球って、そういうスポーツだっけ?
という疑問は置いておいて。
がぜんやる気が出てきた。
「じゃあ、行くわよ!」
「ハイッ!!」
ドSとドMのためのスーパースポーツ、ここに開幕!!
…となるはずだったのだが。
すかっ!
…あれ?
思いっきり空振りするフジワラ。
「もう一回!」
すかっ!
「もう一回!」
すかっ!
「もう一回!」
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…これは、想定外だ…。
数分後、そこには息を荒くしたフジワラと、床に転がる無数のピンポン玉があった。
どれも一度もラケットに触れることなく役目を終えた、哀れなピンポン玉たちである。
「ふ…ふふ…。実は私、まだ実力の半分も出してないの…」
フジワラ、ここへきて苦し紛れの中二病か?
「さあ、行くわよ!
次こそ本気のフルスイングを…!!」
構えるフジワラ。
しかし、待て。
今そんなに派手に動いたら…
おまえ絶対ポロリするだろが…!!
※ポロリと書いてじめつと読む
もともとはだけ気味だった浴衣は、たびかさなるスマッシュの動きに耐え切れず、もう、ほぼはだけている。
何がとは言わないが、もうほぼ見えている。
…フジワラ、下着付けてないだろ…
何が、とは言わないが、ぷるんッぷるん、である。
間違いない。
次の一撃で、ぷるんッぷるんは、ぷるるるるんッ、に変わる。
何がとは言わないが!
さすがにそれは止めなければ…。
「くそっ!」
「きゃっ!?」
これ以上はだけないように、ヒナはフジワラの浴衣の前をぎゅっと掴んだ。
見たい…見たいが…
「目先の利益のために、夢を諦めるわけにはいかないんだ!!」
そう。彼には夢があった。
ふたりで一緒に見た夢だ。
フジワラが打ち、ヒナが体で受け止める。
そんなSMピンポンを成功させるため、ふたりで励んできたのではないか…!
「成功させたくないのか!?」
「させたい…けど…」
「じゃあ僕の言う通りにしろ」
「…え? あっ…」
「こっちに来い!」
「きゃあっ!」
そう言うと、ヒナは隣の部屋にフジワラを無理矢理押し込んだ。
この部屋ならフジワラの家族にも見られず、ふたりきりになれる。
「今夜は寝かせないからな…」
「ひぃっ…」
ヒナの目が光る。
そして…。
パコパコパコパコパコパコ
「もっとしっかり振れ!」
「ひいぃ!」
パコパコパコパコパコパコ
その晩、ヒナはフジワラと一晩中パコパコやり続け、一睡もできなかった。
ヽ(゜ー゜*ヽ)ヽ(*゜ー゜*)ノ(ノ*゜ー゜)ノ└(∵┌)└( ∵ )┘(┐∵)┘ヽ(゜ー゜*ヽ)ヽ(*゜ー゜*)ノ(ノ*゜ー゜)ノ ◝( ⁰▿⁰ )◜
そして…
その成果は出たようだった。
翌日、卓球台にて。
フジワラの打ち出した球は弧を描き、ひなの頬に当たった。
ぷるんっ
ヒナの頬は波打った。
そこには極上の笑みを浮かべるヒナがいた。
こうしてフジワラは少しだけ卓球がうまくなり、ふたりは夢を叶えたのだった。