自滅の3:ツインテールのサクサク天ぷら
少年の名はヒナ。
隙あらばフジワラにいじめられている。
今日もフジワラは、腰まである長いツインテールをなびかせながら、ヒナに迫ってきた。
「問題です。
フジワラさんがイメチェンして、さらにかわいくなりました♪
どこが変わったでしょう??」
きっとまたいじめられるんだろうなぁ。
そう思いながら、ヒナはフジワラの全身に目をやる。
特に変わったところはみつけられない。
「正解は…『髪をバッサリ切った』です!
3センチも切ったのに気づかないなんて、キング・オブ・ダメダメね!」
知・ら・ね・ぇ・よ
その長さで3センチの変化なんて、わかるわけねーだろ!
どうやら美容師がイケメンだったらしく、フジワラはキャッキャはしゃいでいる。
「不正解ね。それじゃ、ヒナにはデコピンを…」
そう言うと嬉しそうに、フジワラは手をキツネに構える。
しかし。
フジワラの話を聞き、ヒナには何か思うところがあったようだ。
伸びてきたフジワラの手をぱしっと掴むと、こう言った。
「フジワラ…僕練習するからさ」
急に神妙な面持ちになったヒナ。
「だから…次はその髪、僕に切らせてくれないかな?」
「…え…?」
思いもよらないヒナの言葉に、フジワラはきょとんとした顔つきになる。
「嫌なんだ…フジワラの髪が、他の男に触られるのが…」
「ヒナ…?」
どうしたというのだ。
こんなのまるで、惚れた女にかける言葉ではないか。
まさか…嫉妬してくれているのか?
そんな…まさか…。
自然とフジワラの頬も赤くなる。
空は快晴。
まるで青春のワンシーンを待っているかのような青空。
「だってその男…」
どきどきどき
「…捨てちゃうだろ?その髪」
…んんん?
「もったいねー」
なんだか、雲行きが怪しくなってきたぞ。
「せっかくのフジワラのダシが!」
ちょっと待て!!
今「ダシ」っつったか?
切った髪のことを??
「僕だったらパスタソースに絡めるね。
もしくは刻んでチャーハンにふりかけたり。
サクサクの天ぷらにしても良い!」
こいつまさか…食べる話をしている…!!?
「フジワラの体の一部が、僕の喉を通り、胃に収まり…。
こうして僕達はひとつになるんだよ」
……………あ……………
フジワラは悟った。
この子、がちやば。
「…でさ、フジワラ」
ひっ!?
「このあいだ、うちの風呂使ったよな?」
…っひ…?
「あのときの排水溝…」
「いやあああああああ!!!」
みなまで言わずともわかる。
はあはあと息を荒げるヒナに肩を掴まれ、フジワラはあまりの恐怖に、目の前が真っ暗になった。
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この日を境に、ヒナを怯えたフジワラは、いじめをやめてしまった。
…のはあまりにさびしいので、必死に弁解することにした。
布団に包まり怯えるフジワラに、あれは冗談だったと必死に言い聞かせる。
次第にフジワラも心を開いてくれるようになり、しばらくすると、またいつもの関係に戻っていった。
こうしてふたりは、平和な日常に戻っていった。
でも、本当はまだ、諦めてない。
流しそうめんならぬ、流しツインテールもいいな、と思ったりなど。
清らかな水流にただよう、フジワラの黒髪…。じゅるり。
いつか、あのツインテールを口にする日まで…。