自滅の16:温泉まんじゅう「フジワラのあんよ」はいかが?
ここはS温泉・フジワランド。
看板娘のフジワラは、愛らしいビキニ姿で熱心に呼び込みを行っていた。
「熱湯サーフィン、15時の回始まりま~す!サーフボードになりたい人は集まって!」
そう、ここは「ドS」温泉。
客はサーフボードとして、フジワラに踏んでいただくのだ。
上から押さえつけられ、顔を上げるのもままならないまま、熱湯の波にもまれていく…
一言でいえば、天国。
ここは、ドM達の楽園である。
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そんなフジワランドだったが、経営は順風満帆というわけにはいかなかった。
かのようなアトラクションに耐えられるドMの数は、そう多くない。
売り上げは伸び悩んでいた。
「どうしたらいいのかしら…」
フジワラは小さくため息をつく。
そんなところへ、ヒナ登場。
「オリジナルグッズを売ってみたら?せっかく魅力的な看板娘がいるんだから」
「!」
そのアイディアに、フジワラはツインテールをうさぎの耳のように、ぴょこんと逆立てる。
喜んでいるのだ。
ヒナのアイディアは画期的だ。
それだけでなく…。
「私ってそんなに魅力的??」
頬をイチゴのように赤くして照れている。少女である。
そんなフジワラを見ながら、ヒナは続けた。
「絶対売れるグッズ、考えてみたんだ」
そして、怒涛のラインアップを提示した!
見よ、これがフジワランドのオリジナルグッズだ!!
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①温泉まんじゅう「フジワラのあんよ」(等身大)
温泉といえばやはり、温泉まんじゅう。迷ったらコレ!
フジワラの足型がプリントされている。
あの、ふわっふわな足の裏…。
今日踏まれた感覚を、そのままお土産にできる。
さらに10個入りのうち9個が激辛あん入りという、逆ロシアンルーレット。
これもドSには嬉しい仕様だ。
②温泉まんじゅう「82まんじゅう」(等身大・2個セット)
フジワランドの、もうひとつの温泉まんじゅう。
こちらは見た目はただの丸いまんじゅうだが…。
わかる人にはわかる、フジワラの「あのサイズ」を再現した。
もちろん2個セットで、視覚・触覚・味覚のすべてで楽しませてくれる。
③ブランケット「フジワラのあんよ」
「フジワラのあんよ」がブランケットになって登場!
40kgというほどよい重さで、安眠効果が期待できる。
実際にフジワラにのしかかられたら、こんな感覚なのかも。
気持ち良すぎて、永遠の眠りに就いてしまうかも…?
④文鎮「フジワラのあんよ」(等身大)
そして文鎮バージョンも!重さは同じ40kg。
こちらはピンポイントで刺激してもらえる。
踏まれるリアルな感覚を追求する人には、こちらがおススメ!
⑤「抱き枕」(等身大)
水着姿のフジワラが前面にプリントされた、念願の抱き枕!
サイズは154cmと等身大。
ふわっふわな抱き心地も、等身大…に違いない!
⑥「自滅スタンプ」
チャットアプリで使えるスタンプ。
苦手なあの人との連絡も、これで円満解決!
使用例:
「這いつくばって崇めなさい!」
「今日はウサギ柄なんだね」
!!自滅スタンプ!!
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以上がフジワランドの公式オリジナルグッズだ。
看板娘・フジワラの魅力を余すことなく再現した、ファン垂涎のグッズばかりである。
我ながら良い案だと、仕上がりに満足して一人頷くヒナ。
しかし…
その後ろで、フジワラは肩を震わせていた。
「何なのよこれは!私のカラダをオモチャにして!!」
そう、目にいっぱい涙をため、顔を真っ赤にして怒っている。
これにはさすがのヒナも、はっと気づいて青くなった。
「ご、ごめん!さすがにやりすぎた…」
「最低!人の身長を晒すなんて!!」
そう言うと、フジワラは泣きながら走り去ってしまった。
「気になったのそこ!?」
ヒナ、若干拍子抜け気味。
他にもっとヤバめな案件があったと思うが…。
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結局、抱き枕の案はボツになった。
(他のは採用なんだ…)
かいがいしく働くフジワラを、そっと見守るヒナ。
しかし、フジワラを悲しませてしまったことにかわりはない。
あれから口をきいてもらえてない。
ヒナは深く反省するのだった。
「悩み事か?少年」
そんなヒナに声をかけてくれたのは、常連のアキじいだった。
ヒナは事情を全て話した。
自分が悪いのだということも、全て。
黙って聞いていたアキじいは、ヒナが話し終わると、ふっと頬をゆるめた。
「でもそれは、相手を思っての提案だったんじゃろ?
本音でぶつかり合えば、ときに傷つく。
それを乗り越えて、絆は強くなるんじゃ。」
アキじいはそう、諭すように話した。
ヒナは、いつのまにかその話に聞き入っていた。
「「雨降って地固まる」と人は言うが…。
ワシからはこの言葉を贈ろう。」
アキじいはめをつぶり、嚙みしめるように、言葉を紡いだ。
「骨折って ジジイ固まる」
実はアキじい、あのロシアンルーレットの当たり弾…つまり、骨粗しょう症のじじいだったのだ(自滅の9参照)。
「ここのアトラクションで、折っては治り、折っては治りを繰り返してたら、すっかり丈夫になってもた!」
アキじいはそう言って、生まれ変わった体を披露した。
フジワランドの想像以上の効能に、目を輝かせるヒナ。
(※この漫画だけの設定です。マネしないでください)
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そんなところへ、とびこんできたのはフジワラ。
「ヒナ!」
なにやら頬を赤らめて、嬉しそうな様子。
「グッズの大量注文があって、すごい売り上げなの!
これも全部、ヒナのアイディアのおかげよ!」
ヒナの手をとって喜ぶフジワラ。
ヒナにも笑顔が戻った。
めでたしめでたしと、微笑ましいふたりの姿を、アキじいも笑顔で見守るのだった。
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翌日。
昭和男の邸宅に大型トラックが到着し、メイド達が荷物の整理に追われていた。
すべて昭和男宛ての荷物だ。
「坊ちゃま、この「82まんじゅう」って何です?」
その問いには答えず、自分の部屋に運ぶように、とだけ彼は告げた。
フジワランドの救世主は、どうやらこの男だったようだ。