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自滅の13:全人類フジワラ化計画

本日も昭和男は、どことなく嫌味な空気をまといながら、自慢をしにやって来た。

「今日も特別に、パパの会社の試作品を貸してやるよ。

AR眼鏡だ!」


一見すると普通の眼鏡。

しかし、驚くべき機能が搭載されているという。


「例えば、この眼鏡にあらかじめ着ぐるみの画像を登録する。

そして眼鏡から覗くと…実際の映像に重なって…

ほら、着ぐるみが歩いてるように見える!」


ヒナたちの前を男子生徒が通りかかった。

ただそれだけの光景だが、AR眼鏡を通すと、男子生徒の姿が着ぐるみの姿に変わったのだ。

ヒナの目には、着ぐるみが歩いているかのようにしか見えない。

なかなかリアルな映像だ。


「すげえ!」

これにはヒナも素直に感心した。


「色んな分野に応用できる、素晴らしい技術なんだ

昭和男は眼鏡の素晴らしさを説明した。

が、その一瞬でヒナは眼鏡をいじると、ペンを床に投げ捨てた。


「昭和男、拾って」

今放り投げたペンを、なぜか昭和男に拾わせる。

昭和男、怪訝な顔をするも、素直に従う。


ちなみに、昭和男が眼鏡を披露してからペンを拾う瞬間まで、わずか3秒。

これが、一人の変態が、素晴らしい技術を悪用するまでに費やした時間である。


「おおおおっ」

眼鏡を除いたヒナから歓声が上がった。

「すげえええ!」


眼鏡に映っていたのは、ペンを拾う昭和男…ではなく。

なんと、愛らしいフジワラの姿だった。

そう、ヒナはこの一瞬でフジワラの姿を登録し、昭和男に重ねてたのだ。


昭和男が、ただペンを拾っているだけの光景。

しかし、それがフジワラの姿となると、話は別だ。

視界は急にパラダイス!


無防備に腰をかがめ、地面に手を伸ばすフジワラ。

下を向いたことにより、重力によりわずかにボリュームを増したように見える胸元。

スカートがずり上がり、白い太ももがは露わになってしまった。

あと少しで、見える…いや見えな…見えそうだ…!

息遣いだけでふるえそうな、その柔らかさまで、AR眼鏡は見事に再現していた。


「昭和男、セクシーポーズしろ!」

「なぁっ!?」


何ということでしょう。これがヒナの目的だったのだ。

フジワラのあられもない姿を拝見しようという、卑劣極まりない作戦。

渾身の最新技術が、わずか3秒で悪用されてしまった。

これが変質者の思考なのか…!?

昭和男は絶望した。


「返せ!」

これ以上悪用されてはたまらない。眼鏡を取り返そうとする昭和男。

しかしヒナは気にも留めず、眼鏡からの景色を楽しんでいる。


夢中になっているヒナは気付かなかった。

その背後に、禍々しいオーラを漂わせている存在があることを…。

フジワラ(本物)だ。


「貴方って人は!!」

フジワラ、怒りのデコピン!

しかし、こんなことでひるむヒナではない。

「ああっ、ダメだ!

ドMのヒナには、ご褒美にしかなってない!」

ヒナは苦しむどころか、恍惚の笑みを浮かべていた。


…わかっていた。こうなることは。

フジワラには、ヒナをこらしめるつもりなどなかった。

ただ、気づいてほしかったのだ…。


「…私だったらこうして、いつでもいたぶってあげられるのに…」

フジワラは、悲しかった。

「本物の私がそばにいるのに、そんな、ただの映像ニセモノの方がいいの…?」

「フジワラ…?」

「ヒナのバカ!!」

フジワラは走り去ってしまった。


挿絵(By みてみん)


ヽ(゜ー゜*ヽ)ヽ(*゜ー゜*)ノ(ノ*゜ー゜)ノ└(∵┌)└( ∵ )┘(┐∵)┘ヽ(゜ー゜*ヽ)ヽ(*゜ー゜*)ノ(ノ*゜ー゜)ノ ◝( ⁰▿⁰ )◜  



フジワラは、もやもやとした気持ちを抱えたまま走った。

いつの間にか、ヒナとのSMを心の底から楽しみにしている自分がいた。

それに気づいたのだ。

フジワラの中で、ヒナはかけがえのない、大きな存在に成長していた。


(なによ…あんなの、ただのサンドバッグじゃない!)

しかし、その現実を認めたくなくて。

全てを忘れたくて、フジワラはわき目もふらずに走った。


だから、気づかなかった。

すぐ近くに危険が迫っていたことを。


どんっ!

「きゃあっ」

「いてっ」


フジワラは誰かにぶつかってしまった。

なんとも運の悪いことに、相手はいかにも悪そうな不良集団だったのだ…。


お揃いのリーゼントヘアにサングラス、「夜露死苦」と印字されたロングコート。

よくもこの令和の時代まで生き残ってくれた、と思えるような、天然記念物級のヤンキーである。


「右足折れたかも!」

「おぅおぅ嬢ちゃん、どうしてくれるんじゃ」


とても骨折したとは思えない、大袈裟な演技。

おそらく、フジワラに因縁をつけたいだけだ。

しかし、取り囲まれてしまったフジワラ、どうすることもできない。


「ごめんなさい!

あの…えと…えと…」


フジワラ、パニック。

どう謝ったら良いだろう?

わからないが、とりあえず誠心誠意ベストを尽くし、許しを請うべきだ。

確か右足が折れたと言っていたな?

それならば…。


「今すぐ左足も折りますから!!」


ドSフジワラ、平等に不良の左足も折ってさしあげようと考えた。

不良を蹴り倒し、左足を思い切り踏みにじる。


「ぎゃああああ!!」

「ター坊!?」


不良の悲鳴が上がる。

まぁ、当然である。


「このガキ!来い!」

「いやあああ!」


こうして哀れなフジワラは、不良集団に掴まってしまった…。



ヽ(゜ー゜*ヽ)ヽ(*゜ー゜*)ノ(ノ*゜ー゜)ノ└(∵┌)└( ∵ )┘(┐∵)┘ヽ(゜ー゜*ヽ)ヽ(*゜ー゜*)ノ(ノ*゜ー゜)ノ ◝( ⁰▿⁰ )◜  



一方こちらはヒナと昭和男。

「フジワラのあんな顔、はじめて見た…」

柄にもなく、ヒナが落ち込んでいる。

とぼとぼと歩きながら教室へ戻る。


しかし、何か様子がおかしい。人だかりができている。

話を聞いてみると…。


「えっ!?フジワラが誘拐された!?」

彼女が悪そうな男達に連れ去られるのを、見たというのだ。


「きっと僕のせいだ…」

いつものようにそばにいれば、フジワラはこんな目に遭わずにすんだ。

ヒナは肩を震わせる。


「助けに行かなきゃ…!!」

「僕も協力するぞ!」

ヒナと昭和男による、フジワラ救出劇が始まった。



ヽ(゜ー゜*ヽ)ヽ(*゜ー゜*)ノ(ノ*゜ー゜)ノ└(∵┌)└( ∵ )┘(┐∵)┘ヽ(゜ー゜*ヽ)ヽ(*゜ー゜*)ノ(ノ*゜ー゜)ノ ◝( ⁰▿⁰ )◜  



昭和男は自宅に戻ると、飼い犬を連れて来た。

「タロは元警察犬なんだ!」

フジワラのにおいを追跡させようという作戦だ。


しかし、車にでも乗せられたのか、痕跡は途中で途絶えてしまった。

辿れるのはここまでか…。

がっくりとうなだれる昭和男とタロ。


それを見ていたヒナ。

しばらく考え込むと、突然地面に膝をついた。

そして…。


じゃりっ

じゃりっ

じゃりっ


なんと、少しずつ移動しながら、土を食べ始めた!

そして…。


「フジワラの味!こっちだ!」

方向を定めると、一気に走り出した。


警察犬でも辿れなかったのに…。

「警察犬が引いてるぞ!?スゴイけど!」

その能力に、昭和男は賞賛しつつもドン引きしていた。

タロも、この得体の知れない生命体を前に、恐怖できゃんきゃんと吠え続けるのだった…。


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