自滅の11:謎解きはスリーサイズと共に
衣替えの季節がやってきた。
皆が待ちに待ったイベントである。
理由はもちろん、「女子が薄着になるから」だ。
ここにも例にもれず、物陰から女子の登校姿を見守るオスの姿がふたつ。
ヒナと、先日の件で仲良くなった昭和男である(自滅の9参照)。
ふたりの視線が追うのは、もちろんフジワラの姿である。
「夏服って透けそうで大好き♡」
心の声をダダ洩れにしているヒナ。
「おまえのような奴から女子を守るのが、僕の使命だ!」
そんなヒナに対し、あくまでも「女子のため」という体を崩さないのが昭和男だ。
「女は男が守るべき」、そんな古式ゆかしい価値観を抱いているのがこの男だ。
しかし、実際はどうだろう。
「女子には保守的な服装を強制すべきだ!
古き良き時代のように!」
なんとも時代錯誤な意見。
「スカートはひざ丈!」
これにはヒナも少々辟易している様子。
「下着は白!」
ヒナとは別の方向で、この男も大いにズレているよな…
「体操着はブルマ!」
事 情 が 変 わ っ た 。
急にしゃきっとなるヒナ。
「動きやすいから、おまえのような奴からすぐ逃げられる。
だから女子はブルマを着用すべきだ。」
「うんうん。わかるわかる。
おまえとは良いジュースが飲めそうだ。」
すっかり意気投合した二人は、仲良く肩を組んで去って行くのだった。
女子の制服について、熱く語らうために。
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「やっぱ生地が薄いのがいいよな!」
これには昭和男も同じ意見だった。
「だって…」
ヒナが理由を述べる間もなく、最高の事例が転がり込んできた。
ふたりの後ろで(いつものように何もないところで)、フジワラがぺしょっと転んだのだ。
特に怪我もなく、早々に立ち去るフジワラ。
しかしヒナは、フジワラが転んだその痕跡をじっとみつめていた。
「フジワラ、ここ触れたよな?」
そう言って地面をさすり始めるヒナ。
そして、おもむろに土を掴むと…
じゃりっ
「フジワラの味がする…♡」
「う…うわあああああ!!!」
なんと、土を口の中へ…。
これには昭和男も真っ青、完全にドン引きである。
「土なんか食うな!腹壊すぞ!?」
いくら変態といえど、人間としての最低限度の威厳がある。
ヒナを地面からひきはがしにかかる昭和男。
しかしヒナは聞く耳を持たない。
彼の辞書に、常識という文字はない。
「離せ!人として壊れてるのに、腹ぐらいなんだ!!」
謎の説得力で、昭和男を説き伏せてしまった。
(ダメだ…もはや僕の手に負えるレベルの変態じゃない…)
昭和男はただ震えながら、土をむさぼり食うヒナの姿をみつめるしかなかった。
意中の少女が転んで触れた、ただそれだけの土を…。
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ところで、夏服が薄くて嬉しい理由は、何も味覚だけではない。
視覚的にももちろん楽しませてくれるのだ。
「夏服だと、服の上からスリーサイズ当てられるんだよね♪」
ヒナは自分の特技を自慢する。
しかし、かのいじめっこは、それを聞き逃さなかった。
「調子にのって、そんな嘘ついて!できるわけないのに!」
ここぞとばかりにバカにしてくる。
ヒナのくせに、と、いつものように、微妙に低い位置から見下ろして。
嘘じゃないとヒナは抗議するが、フジワラは笑って相手にしない。
「じゃあ私のサイズ当てて見なさいよ!もし不正解だったら…」
そのときはきっと、激しいイジメが待ち受けているのだろう。
しかしヒナはひるまない。
「いいぜ。奴隷にでもなんでもなってやるよ。
ただし…
これが解けたらな!!」
「!!?」
何かと思えば…。
ヒナは、フジワラに問題を出題してきた。
これは…さ、算数…!?
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問:
フジワラさんの3サイズは、BWH合わせて217cmです。
HはWより23cm大きく、BはHより3cm大きいとき、
それぞれのサイズを求めなさい。
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うぐ、とフジワラがかたまる。
自分のスリーサイズの値は、当然知っている。
しかしこの問が解けなければ、ヒナの透視が合っているのか、判断できない。
ヒナを試すつもりが、試されているのはフジワラの方だった。
「おまえに当てられるかな?」
「そっちこそ、当てられてるのかしら?」
こうしてふたりの真剣勝負が始まったのだった。
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そして数分後…。
ついにその瞬間は訪れた。
「解けた!!」
フジワラは目を輝かせて叫んだ。
「私のスリーサイズは、
B●●cm、W●●cm、H●●cm!!」
そう、高らかに叫んだ。
嬉しかったのだ。
ヒナの挑戦に応えることができて。
とても嬉しかったのだ。
だから勝利宣言をした。
クラス中の男子が振り返るほどの大声で…。
はたして、結果は…?
「正解だ、フジワラ!
…で、合ってる?」
「合ってる!!」
フジワラの計算も、ヒナの透視も、共に正解していたようだ。
「この勝負、引き分けだな。試したりして悪かったな」
「こちらこそ、疑ってごめんなさい。貴方の透視は本物だわ」
ふたりはかたく握手を交わし、互いの健闘をたたえ合った。
ヒナとフジワラの友情は、こうして深まったのだった。
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ところで。
フジワラ本人が大発表したスリーサイズは、瞬く間に校内に広まっていた。
今日も華麗に自滅、それがフジワラ。
自滅したことにフジワラ本人が気づくまで、あと24時間。
※算数の解答は、自滅の12冒頭で発表