自滅の9:フジワラ、寝取られる…!?
ここはドS温泉・フジワランド。ドM達の桃源郷。
マスコット・フジワラによるドSサービスが提供されている。
本日のプログラムは、新アトラクション「因幡の白うさぎ・大車輪Ver.」。
以前披露した因幡の白うさぎ(参照:自滅の6)の改訂版で、ドM達を円を描くように並べ直したものだ。
その上を我らがフジワラがぴょんぴょんと跳んでいく。
ドSのフジワラは、踏むことで活力充電!
ドMである客は、踏まれることで活力充電!
これにより、フジワラうさぎは永遠に跳ね続けることができる。
今ここに、永久機関が完成したのである!!
ちなみにこの客の中にひとり、骨粗しょう症のじじいが混ざっている。
踏まれればアウト?なロシアンルーレット!
しかしそれも本望。
この毒こそがフジワランドの魅力なのである。
今日もフジワランドは平常運転だ。
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新アトラクションは大盛況だった。
ヒナのアイディアとフジワラの頑張りの結晶である。
ふたりはほくほくしながら登校していた。
しかしそんなふたりを、影からみつめる謎の人物が一人…。
「君たちは本当に仲がいいな」
フジワラが去るのを見計らって、その人物・通称モブ男はヒナに声を掛けてきた。
赤い髪をなびかせ、やや気取った物言いのこの男、どうも不穏な空気を漂わせている。
「君たちは付き合ってるのか?」
「僕とフジワラが?まさか!」
さして気にもせず、ヒナは答える。
しかし、その答えに、モブ男の目が光った。
「そうか…それならば…
彼女、僕がもらってもいいよね?」
「……え……?」
モブ男の口から飛び出した想定外の言葉に、ヒナは目を見開く。
なんとこの男、フジワラを横取りしようと狙っていたのだ…!
「彼女、かわいいよね。いつも見てたんだ。」
(そういえばこいつ、いつも体育のときいなくなってたな…)
思い出すヒナ。
そう、モブ男は女子の体操着姿を拝むため、こっそり授業を抜け出していたのだ。
体操着姿の、ふだんより少し露出度が高めの服からのぞく、わずかに紅潮した白肌を拝むために…。
動くたびに揺れ、つぶれ、形を変えていく、ふわっふわの大福を…。
「黒髪ロングは清純で従順と決まっているからね。
きっと毎日味噌汁を作ってくれる、良いお嫁さんになるよ」
なんとも時代錯誤な発言。
「おまえの価値観、昭和かよ」
思わずヒナは口走る。
この瞬間、モブ男の名前は昭和男に決まった。
彼がこんな性格になったのには事情があった。
実はモブ男改め昭和男は、社長の息子であった。
幼い頃から古い慣習に晒されて育った彼は、知らずのうちに歪んだ価値観を植え付けられてしまったのだ。
「彼女にふさわしいのは、社長の息子であるこの僕だ。
君がいらないのならもらっていく…」
「待てよ」
しかし、そこは主人公。
ヒナが許すはずがない。
「いらないだの、もらうだの…
フジワラは、物じゃないだろ!!」
フジワラを守るために。
ヒナだって、やるときはやる男なのだ。
…と信じた我々は愚かだった。
「フジワラは物じゃなくて…食い物だろ」
じゅるり。
そう。
風呂に入れば鍋のダシ。
髪を切れば天ぷらに。
歩く姿はイチゴ大福。
5感の全てで魅了する、それが我らのフジワラである。
「君は最凶に気持ち悪いな…」
これには、さすがの昭和男も、ドン引きせざるをえなかった。
「とにかく、段取りは済んでるんだ。
彼女は今日、僕の家に来ることになっている。」
「なっ…いつの間に!?」
「明日君はどんな顔をしてるだろうね…くくく…」
「…!!」
思わぬライバルの出現に、ヒナは戸惑いを隠せない。
別に、付き合っているわけではない。
フジワラは、ヒナのものではない。それは事実。
しかし…
フジワラと過ごした楽しい日々を思い返してみる。
彼女は、昭和男のものになってしまうのか?
もう、あの日々は戻ってこないのか――?
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…と思われたが。
結論から言うと、そんなことは全くなかった。
「ヒナぐう゛う゛う゛う゛う゛う゛ん゛!だずげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!
あの女に襲わ゛れ゛る゛う゛う゛う゛う゛!!!」
翌朝、ヒナにしがみついて助けを求めてきたのは、ぐっしゃぐしゃに泣きはらした昭和男だった。
おまえ、襲う側じゃなかったのか?
「明日君はどんな顔をしてるだろうね…」じゃない、おまえがどんな顔だよ。
実は昨日、昭和男はフジワラを家に呼んだことにより、思いがけないハプニングに見舞われてしまったのだ。
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招待されたフジワラ。
昭和男の豪華な家では、見るものすべてが新しい。
そんな中彼女が目を付けたのは、彼のペットの猫だった。
目があった瞬間、フジワラは猫を引き伸ばしていた。
前足を引っ張ると、どこまででも伸びる。
前世は餅だったに違いない。
イチゴ大福の生まれ変わりであるフジワラには、どこか通じるところがあるようだ。
どちらも大変楽しそうである。
そんなフジワラのために、昭和男が紅茶を入れてきた。
「フジワラさん、ようこそ我が家へ!好きなところに座ってくつろいでくれ」
彼の大きな家には椅子だってたくさんあり、かけるところに困らないのだ。
フジワラは紅茶を受け取り、にっこり微笑むと…。
迷うことなく、昭和男を四つん這いにさせた!
そして、そこへ腰かけた!
さらに、優雅に紅茶を飲み始めた!
昭和男、何が起こったのか理解できない。
自分が椅子にされた事実を受け入れるには、人生経験が浅すぎたのだ。
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…というのが、昨日の出来事だった。
しかし、こんなことはまだまだ序の口だった。
その後繰り広げられたドSプレイについては…。
「思い出したくもない!」
昭和男は真っ青になって、頭を抱えてしまった。
これに対して、かわりに説明を買って出たのはフジワラ。
「いつものヒナ用のメニューこなしただけよ」
と、昨日何があったかを教えてくれた。
「何なんだ君たちは!!」
昭和男の絶叫が響いた。
「ごめん…僕が間違ってた!
いろいろあって、むしゃくしゃしてて…
誰かの幸せを邪魔したかっただけなんだ!」
なんとも正直に、昭和男は謝った。
そして辛い身の上話を始めたのだった。
「パパの会社は、部下が時計発注しすぎて経営が傾くし…
じいちゃんは何故か毎日骨折して帰ってくるし…」
…ん?まさか…
――――――回想――――――
「パパが間違えて時計ひゃくまんこ発注しちゃって」(byフジワラ・自滅の4参照)
―――――回想終了―――――
こいつまさか…
親子三代でフジワラ家にボコされてるのか!?
「僕は身を引くよ…お幸せに」
そう言うと昭和男は、よろよろとむこうへ行ってしまった。
そのときフジワラのスマホが鳴った。
メールの送信者はフジワラのパパだった。
「パパがね、あの理由で解雇はおかしいって。
会社相手に裁判することにしたんだって!
勝てたら借金なくなるかも♪」
満面の笑顔で、フジワラはそう…。
つまり…。
昭和男にはまたしても受難が…!!
(強く生きろよ、昭和男…)
ヒナはそう、同情せざるをえなかった。
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これがいじめっこ・フジワラなのだ。
一般人が手を出して良い相手ではない。
中途半端な覚悟で近づけば、火傷する。
(やはりフジワラの相手は、ドMである僕でないと、つとまらないな…。)
あらためてそう実感したヒナであった。
ちなみにフジワランドの次の新アトラクションだが。
「宝探し熱湯素潜り30分」なんてどう?
「さすがにそれは死ぬ。」
ヒナによって却下されていた。
こうして今日もドSとドMは、ギリギリの綱渡りを楽しむのだった。