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ボブテイル[後編]

貧民街のフラロウスのねどこはゴチャゴチャ物が置いてある中に大きなベットが一つ置かれていた。壁の穴には燭台に挿した短いロウソクの光りが揺らめいている。地下道へ続く一室を不法占拠したこのねどこのかび臭さをお香がごまかしていた。

フラロウス「ふん、ふふーん。」

フラロウスはお面に何やら簡単な落書きをしていた。

キューッキュッ!ωを描いた。

さながら笑う猫、に見えなくもない。

フラロウス「でーきた。」

薄着のフラロウスはお面を両手で掲げ、自分の絵の出来栄えをまじまじと眺めた。

フラロウス「ルーサー、ルーサー!」

横で寝ているルーサーを揺すって起こす。

ルーサー「……ふわー、おはよう、姉さん。」

フラロウス「これ見て!可愛くない?」

肌着に女物の下着姿のルーサーはまだ寝ぼけている。ぼやける視界が少しづつクリアになっていくにつれて何の装飾もされてなかったシンプルだったお面が笑ってる猫のようになっていることに気がついた。

ルーサー「わー、かわいいー!ねぇ!ねぇ!僕のもやってよ!」

ルーサーはベッドから出ると、無造作に置かれてあった自分のお面をフラロウスに差し出した。

フラロウス「お姉さんに、まっかせなさい!」


夜空は月が出て少し明るい、肌寒いビル風が不可視マントをたなびかせている。高いビルからソープ邸を見下ろす2人の影。笑う猫の仮面が白く際立っていた。

その様子を後ろから見ていたぶちねこのオセは言う。

オセ「変なの。」

オセは率直なお面の感想を言った。しかし、オセには美的感覚は無い。昔、フラロウスと行ったパン屋の細かい装飾がされたセンスいい菓子パンをただの“変なパン”と評するセンスのなさだ。

フラロウス「可愛いじゃない?」

ルーサー「着飾らないとね。」

サンジュ「時間だ、行って来い。」お面から猿の通信が聞こえる。

フラロウス『ルーサー五行の剣、火よ。』

ルーサー『わかったよ。』

ふたりはお面を通して、心で会話した。他の人には聞こえないだろう。古の魔女の確立した通信技術。

コレをどこで猿の亜人が入手したのかは不明であるが。

フラロウスはオセの知らぬが仏ってね。と言う言葉をおもいだした。

ソープ邸はビルの屋上に作られた空中庭園のような場所だった。深夜の繁華街には人がほとんど居ない。少し、騒がしくしても、通報される危険はないだろう。

サンジュ「ソープ邸の電話線はコチラで切った、数分は警察は来ない。」

細剣に炎をまとませて庭に火をつけて回る。犬はすでにあらかた昏迷状態にした。今は情けない鳴き声をあげつつ、その場にうずくまるだけだ。

ルーサー『意外と早く、制圧できたね?ワンワン達。』

フラロウス『夜は外に人が出て居ないからねぇ、楽勝よ!』

コレがもし、人を群れのボスとして統率の取れた犬の群れなら強敵だっただろうが、ボスの居ない組織は弱い。

外の騒ぎに今頃になって人が出てくる。各々、服装がマチマチだ。寝間着のままのもの。厚着をしたもの。パンイチにコートを羽織っただけのもの。最後のは変態さんかな?

フラロウス「雲の剣。」

フラロウスは細剣の炎をやめ、スモッグを展開し、疾風のごとく出てきた警備の者の間をすり抜けた。

ピッ!ピッ!男たちの体を切りつける音がした。

男たちは少し切り傷を負っただけだが、すごく苦しそうにその場でのたうち回っている。

ルーサー『その動きはぼくには出来そうにないね。』

フラロウス『猫型亜人、ミリシャを舐めちゃ困るわ。』

猫型亜人は訓練次第で身体能力は軽く人を超える。


フラロウスとルーサーは別れて家探しを始める。

株式と債権を保管した部屋はどこだろうか?

オセ「それがわかってりゃ世話ねーんだけどな。」

サンジュ「最上階の家だ。下調べするにもセキュリティが厳しすぎた。一つ一つ当たるしか無い。」

文句を言っても始まらない。とにかく、フラロウスは片っ端から部屋をあさっていった。

最後の一つは中から物音が聞こえている。

よく聞くとそれは女の艷やかな喘ぎ声だ。そんなのがリズミカルに聞こえてくる。

フラロウス『んもう、こんな時に何やってんのよ。いやになっちゃう。』

フラロウスはその寝室に踏み込んだ。

ガチャ!

そこは男の体液でドロドロに汚され、気絶した猫型亜人の幼女が床に転がっていた。

ボブテイル。

主人「うわ!貴様、何者だ!?他の奴らは何をしている!」

一瞬固まっていたフラロウスはその言葉で我に返ると、腹の底から怒りが沸き起こってくるのを感じた。

フラロウス「お前ぇぇぇ!」フラロウスは叫んで、女と取っ組み合っていたハゲ親父に飛びかかり、馬乗りで我を忘れて、ボコボコにした。女は怯えて、布団を頭から被ってベッドの隅で震えている。

騒ぎに駆けつけたルーサーもその光景に動揺したがフラロウスを止めに入った。

ルーサー『だめだよ!その人、死んじゃうよ!』

フラロウス「離してよ!コイツは許せない!絶対に!」フラロウスは錯乱して叫んでいる。

コレでは折角のお面の幽世通信、スニーキングの為の心の声での会話も意味を成さない。

サンジュ「やれやれ。」

猿の声が聞こえたかと思うとフラロウスは気絶した。

一体何が?ルーサーが疑問に思っていると外が騒がしくなってきた。

オセ「警察が来た!はえーな!」

サンジュ「仕方ない!株式とかはあきらめる、ルーサー、フラロウスと撤収しろ。」

お面から指示が入る。ルーサーはフラロウスを担いで庭に出た。フラロウスは意外と軽かった。フラロウスは目を覚まして状況を把握する。

オセの怒号が響くが今はそれどころではない。

2人は夜の高層ビル群に消えた。

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