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シエル警部

富豪「私のコレクションは返ってくるでしょうか?警部。」

窃盗被害に遭った富豪の家は規制線が張られ、鑑識が現場検証している。

応接室は現場から遠い、この部屋の壁の指紋を採取しても無意味だ。

白猫の長毛種の亜人は忌々しく作業を見ていた。

白猫亜人「残念ですが。今頃は、闇ルートで取引されてるでしょう。」

応接室で立ち話しをしてても始まらない。

白猫亜人「現場に行きましょう、アンドルーズさん。」

???「シエル警部!」

2人がコレクションを保管していたという部屋へ行こうとしてた所に、女性の警官が入ってきたものだから、亜人と警官はぶつかってしまった。

シエル「次からは気をつけたまえ。ローラ巡査長。」

青いセミロングの髪を後ろで無造作に留めたローラはシエルの胸毛に顔を埋めてスーハースーハーしている……

シエル「……マックスくんはどうした?」

いつものことと呆れてシエルはそのことには触れず、ローラに尋ねた。

ローラ「し、失礼しました!マックスは外で現場検証をしていて、それで、そのぉ……」

シエル「魔法だろ?」

ローラ「!はい!星は魔法で外に居た警備を一網打尽にした模様でして。」

シエルのヒゲがピクピクしている、魔力に反応するのだ。

シエル「この件は、奥が深そうだ。」

シエルは富豪と共にコレクションのあった部屋に入った。

アンドルーズ「おい!警報装置がそのままじゃないか!?」

富豪は部屋に居た使用人に怒鳴った。

アンドルーズ「すぐに消せ!役立たずは機械だけにしてくれ!」

シエル「いや、このままで。」

富豪が戸惑うのを尻目にシエルは考え事をしだした。

こうなると、シエルはなかなか動かなくなる。ローラはその鼻を亜人に近づけた。

ローラ『こ、これは、警部の健康状態をチェックしてさしあげる必要で神聖な行為!おホォ、たまらん。』クンカ、クンカ

警報装置のレーザー光を掻い潜る高い身体能力、魔法。

シエル「……まるで資料にあった、あの事件を思い出すな。」

驚異的な身体能力と魔法で数々の窃盗を繰り返し、最後まで犯人が捕まることのなかった怪事件。

シエル「事件ファイル、ケースリー。また現れたのか?奴が?」


私服のシエルは街の繁華街にある、川沿いにデッキテラスがあるカフェに急いでいた。

シエル「ごめん。フラウ。待たせたね。」

そこにはすでにチャトラの猫亜人の女性が待っていた。

前髪を垂らして片目のメガネが光る。左耳をケガしたのか、耳先が欠けている。さながら、桜の花びらのようだ。

フラウ「また、書類仕事が終わらなかったの?警察も大変ねぇ?」

フラウは無意識なのだろうが、白いブラウスからのぞく胸の谷間を強調している。シエルもついつい視線が誘導される。

シエルが来たのを見計らっていたかのように彼の飲み物が運ばれてくる。

シエル「ありがとう。」

フラウ「アナタも、何か、いつもと違うのを注文したら?」

フラウがレモネードをストローで飲む。

シエル「僕のはコレでいいのさ。」

カフェに来たらカフェラテ。シエルはこだわる男だった。

フラウ「ねぇ、シエル。私、再就職決まったのよ?コレで貧民街から抜けられるわ。」

シエルは喜んだ。彼ら亜人はそもそも被差別階級だ。人間社会でのし上がるのは至難の業で、シエルも昔を思い出して彼女に親身になって接していた。

そんな彼らが恋中になるのは自然の成り行きだろう。

シエル「おめでとう!今度は続くといいね、そこ!」

フラウ「ちょっと、やめてー、私、今の職場の猿親父の匂いが気になるんだから。」

二人は笑い合った。

シエル「今度、お祝いに行かなきゃ。」

フラウ「ソレよりも、私。賃貸を見に行きたいわ。」

シエルは“よかったら、一緒にすまないか”をグッとこらえた。心の中の天使も悪魔も警部になったのだから行けばいいと言っている。だが、シエルは恋には臆病だった。

フラウ「今度、二人で見に行きましょう。」


フラロウスは少し不機嫌だった。

サンジュからの急な呼び出し。アジトに辛気臭いメンツがそろう。オセはフラロウスの顔を見た。

オセ「どうしたんだよ?浮かねぇ顔だなぁ。」

サンジュ「フラロウス。人間を飼い始めたって?何歳だ?」

フラロウス「知らない。そんな事、どうでもよくない?今度は何を狙うのよ?」

サンジュは新聞から目を離さないのに続けた。

サンジュ「いや、若いなら育てようかと思ってな。」

オセ「やめとけよ、サンジュ。人間だぜ?」

そこで猿は顔を上げた。

サンジュ「これからは、助手が必要になるだろう。警察もバカじゃない、最近は、鼻の利く亜人が警部をやってるそうじゃないか。」

フラロウスは神妙な顔になった。

サンジュ「俺はもう走れない。オセも限界がある。もう一人必要なんだよ。このチームには。」

オセ「まぁ、魔石の首輪なんてそうそう無いしなぁ。」

猫の体は魔力の総量が人のそれと比べて少ない。昔は魔石で魔力の底上げをしていたらしいが、今は魔石なんて出回ってない、滅多にお目にかかれ無い希少鉱物だ。

サンジュ「次の仕事はその子が来てから話す。フラロウス、説得しといてくれ。」

フラロウス「私が?」

オセ「お前の所有物で、お前が一番接してる時間が長いだろー?」

ぐぬぬぬ。


ルーサー「え?ぼくが?」

貧民街のフラロウスのねぐらで片付けをしていた少年に魔法や魔法剣の修行が格安で受けられるけどやる?

と、フラロウスは質問した。窃盗団についてはまだ話せない。そこまで信用してない。

ルーサー「嬉しいなぁ。取り柄ができるのかぁ、ぼくに。やりたい。」

フラロウス「コーチは結構、厳しいし、何か言ってくるかもよ?」フラロウスは彼の気持ちを試した。

ルーサー「それでもやってみたいよ。ぼくを買い取った金額に見合った、立派な男にならなきゃ。」

服も靴も闇市で揃えたし、もう、匂いもしない。残ってるのは、伸ばし過ぎの毛だけ、前髪が長すぎて目が隠れている。

フラロウス「決まりね?今度、連れてってあげるから。」

ルーサー「色々してくれて、ありがとう!お姉さん!」

ルーサーはあの汚い状態から抜け出せて、心底、フラロウスに好意を抱いていた。

純粋な彼を汚れた道に引き戻そうとしている。フラロウスは複雑だった。




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