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1.プロローグ

初投稿作品となります。

短編作品ですが、楽しんで頂ければ幸いです。

マークはビルの裏路地から不思議な感覚を覚えた。

何故か、どうしてもその違和感を確認したい衝動に駆られて、感じた方へと向かって行った。


そこには何て事は無い、何処にでもある裏路地の風景が広がっているだけであった。


(気のせいか……。)


そんな事を思いながら立ち去ろうとしたその時だった。

背後から異様な気配を感じ、慌てて振り返った。

するとそこには、等身大で不気味なクラウン人形が設置されていた。

良くある、少し不気味系の特徴あるクラウン顔で、

頬まで裂けた口で異様な笑顔と異様な目つきで

強烈な笑みを浮かべているものだ。


そしてそんなクラウン顔とはまるで似合わない艶めかしい身体付きをしていた。

その身体は妙に肉感的で、艶かしい曲線を描いていた。

しかし、それが不気味なクラウンの顔と不自然に組み合わさっていることで、異様さが際立っていた。


「な…なんだコレ?!」


マークは驚いて不気味なクラウン人形の周りをクルクルと周りながら観察した。

大きな胸、たわわなお尻。

何とも魅力的で思わず生唾を飲む程である。

しかし、顔は不気味なクラウンである。


「一体…何の為に…? 現代アート?」


マークは徐々に警戒心を強め、立ち去ろうとしたその時だった。


「例えば、貴方の欲望を満たす為かしら?」


突如として不気味なクラウン人形がマークに話し掛けてきたのだ。


「うわぉ! おっ驚いた! 喋るのか?!」


「そうよ。どうかしら? 私の自慢のプロポーションは?」


そう言いながら、不気味なクラウン人形は右手は頭の後ろへ、左手は腰に当てて、クネクネと身体をくねらせてアピールして来た。

只事では無い事態にマークは警戒心をより一層強めた。


「悪魔め!」


マークは3歩程下がってそう告げた。

正体とお互いの立場を明確にする為だ。


「ウフフ、悪魔、悪魔か。

でもその悪魔にイケない欲望を抱いたのは、

何処の誰だったかしら?」


不気味なクラウン人形は、右手を額に当てて何かを探す様な仕草をして戯けてみせた。


「なっ何を…?!」


確かにマークは一瞬とは言え、不気味なクラウン人形の艶めかしい身体に欲情したのは事実だ。


不気味な顔に恐怖を感じながらも、身体に目が吸い寄せられる。

拒絶したいのに、視線が勝手に動いてしまう虚しい男の習性か。

或いは本能なのか。

だがそれは、恐怖と興奮が同時に胸を締めつけているようだった。


「ウフフ…。さてさて、冗談はこの位にしてと。

貴方は何をご所望かしら?」


「ご所望?」


「そう。貴方の欲望。

私はそれを叶える為にあるの。

ある者は若かった頃の自分、

ある者は巨万の富、

ある者は私との性交を求めたわ。」


マークは考え込んだ。

この手の話には必ず裏がある。

恐らく今言っていた望みを言えば、ロクな結果には成らないだろう。

そう考えた。


「正解よ。」


マークはドキリとして肩を揺らした。


「欲望を実現させる為には代償が必要なの。

何を失うのかは…後のお楽しみにね。」


マークは様々なリスクを想像した。

不能者、極端な拝金主義、

昔の映画にあった永遠の美しさを実現した姉妹。

その上で、一番リスクが低い望みを思案する。


「さあ、どうしたの?

私を抱きたい?

お金が欲しい?

若いままで居たい?

ウフフ…やっぱり私を抱きたいかなぁ?

さっき、とても熱い視線を私の胸とお尻に送っていたものね?」


そう言いながら、不気味なクラウン人形は自身の胸と腰を両手で撫で回して誘う様な仕草をした。


「そうそう、何もいらないは無しよ?

それこそ悲惨な結果になるわ。

必ず何かを望んだ方が身のためよ。」


「〜〜〜っ!」


マークは次善の策を初手で潰された。

散々考えたが、最も被害が少なそうな欲望を思い付いたので、それを望む事にした。

元より、健康管理で始めたボクササイズと、

趣味のビデオゲーム、そして仕事に追われる日々で、

女性と関わる事が無く、その接し方に悩んでいたのだ。


「待たせたね。決まったよ。」


「ワオ♪

何をご所望かしら?」


「女性との接し方を学びたい。

こればかりは、良くある自己啓発系の本で学ぶより、

実戦形式で学んだ方が良いからね。」


今度はクラウン人形が考え込んだ。

てっきりカネが欲しいとか、ヤラせろとか、

その辺りの欲望と辺りを付けていたからだ。


「ふぅ。分かったわ。

それが貴方の欲望なら。」


クラウン人形は、まぁ大分類で括れば同じ事だと

気を取り直して男の欲望を叶える契約を結んだ。

そして契約の結び方を説明して、取り掛かる。


「私は貴方に女性との接し方を教える。」


クラウン人形がマークへ右手を差し出す。


「私は貴女から女性との接し方を学ぶ。」


マークはクラウン人形の右手に自身の右手を乗せて応えた。

すると、不気味な光が2人を包み込み、やがて消え去った。


「うん。これで契約は成ったわ。

契約が成就されるまで、私は貴方の味方よ。」


「うん、良くわからないけど、兎も角宜しく。」


「えぇ。よろしくね、マーク。」


「所で何処でどうやって学べるのかな?」


「ここでレクチャーするわ。」


そう言うと不気味なクラウン人形は、目の前に楕円形の黒い粒子の様な膜を作り出した。


「さぁ、付いてきて。」


クラウン人形はそれに入ると、フッと消えてしまった。

マークも意を決して後に続いた。

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