第8話 幻想跋扈の古都《洛陽》 Act4 再会
5年前 第6次上海奪還作戦時────
〖……ザッ…ザッ……各国高官と上海竜種との長きに渡る和平同盟の交渉は決裂。それに伴い各国高官はその場で惨殺され、護衛にあたっていた全ての兵士は処刑されました……ザッ……ザッ……上海市内に軍営していた各国の連合軍は一部を除き、捕獲補食され全滅したもよう……ザッ……ザッ……生き残った各国兵士は速やかに海を渡り、台湾前線基地まで撤退を……〗
「何だ? この軍事放送は? シバさんは?……総隊長はどうなったんだよ」
「落ち着いて。シン君。ここは軍事放送に流れて来た上官命令に従って…」
「これが落ち着いていられるか。あの日本帝国将官のシバさん率いる精鋭部隊が全滅したんだぞ。何で君はそんなに冷静なんだ? 凜々花」
「は、はぁー?! ふ、ふざけるんじゃないわよ。私だって冷静を装ってるだけで前線に行った皆の心配を…」
5年前の上海解放作戦。あの時の事は今でも鮮明に覚えている。当時、日本帝国軍最強部隊だったシバ総隊長を中心に、各国の精鋭軍を合併したアジア大連合軍による中国本土奪還作戦。
全100万人程の規模にも及ぶ人員で、旧中国領・上海へと上陸。数ヶ月にも及ぶ上海竜種との戦闘及び交渉で、人類側に上海領地を返還。旧中国人民の本土帰還が、上海竜種との和平条約により決まるかと思った時、奴等は人類側を裏切った。
上海戦地へと招ねかれた各国の兵士を次々と殺し、アジア大連合軍に再び反旗を翻したんだ。それにより後方で待機していた後続部隊は、混乱の最中であり、同期の凜々花と激しい口論にまで発展した。
パンッ!
「「?!」」
「2人共。静かにして。軍事放送はまだ終わってない。最後まで聞かせて」
「……慧。お前まで」
「あっ! ゴメン。副隊長……」
齢10歳にして、シバさんの直属の部隊零番隊の副隊長を任されてる天才にして俺や凜々花の幼馴染み。シバさん直属の弟子。千機 慧。
〖……ザッ……アジア大連合軍の各国を代表する特記戦力数名の死亡を確認した。インド……マハーラー・シュドラ。タイ……フライト・エルサ。日本……シバ総隊長〗
「「「?!」」」
〖……これに伴い。本作戦は失敗、アジア大連合軍の速やかに旧中国領からの撤退を。尚、日本帝国後方部隊は各国が撤退する時間を稼ぐ為、殿及び、上海竜種、数百万匹の討伐を命じる。これを全力で取り組むべし、これは日本帝国兵士の名誉である……ブツンッ〗
「つっ……ふざけるなよ。殿って……死ねって事か?」
「……嘘。あの日本で一番強かったシバさんが死んじゃった? 嘘?」
俺と凜々花が同様している最中、慧だけは1人冷静に何かを考えていた。
「……殿は私達。3人でやろう」
「は?……慧。お前、いきなり何を言って……」
「……3人?」
「数ヶ月分の物資は置いていってもらって、他の後方部隊の人達は台湾じゃなくて、沖縄前線基地に逃げてもらって。2人は私の戦闘補佐をして、数時間事に武器を補給しに戻って来るからね……それじゃあ。行ってくるね」
慧はそう言うと上海前線の最深部を目指して走り出して行った。
「あっ! 待てどこに行くんだよ」
「……シバさんの仇を取りに行く気なんでしょう。何百万って数の上海竜種を1人で倒しにさぁ。私は上官達にこの事を伝えに行ってくるから。シンは慧ちゃんがいつでも戻って来ても良い様に食事とか武器の準備を始めといてね」
「はぁ?……凜々花。お前まで何を言ってんだ? シバさんでも勝てなかった数百万の上海竜種が、ここに向かって来てるんだぞ」
◇
《アジア大連合軍敗北から2ヶ月後》
「……こちら日本帝国軍所属の千機大尉。上海戦地における。上海竜種の全ての討伐を完了しました。上海魔核領域解放地域への人員を要請します」
〖……ザッ……ザッ……こ、こちら日本帝国軍本部。高円寺だ。生き残っている者がいるのか? 何名だ?〗
「ご報告します。現在、上海解放地域に居る日本帝国軍兵は3名。蒼龍 シン曹長、天理 凜々花准尉、そして。この私、千機 慧の3名のみになります」
〖りょ、了解した。至急、救助……いや応援部隊を派遣する〗
「ありがとうございます。それではこの2ヶ月の間に得た情報を資料にしましたので転送いたします……」
「……慧ちゃん。凄かったね。まさか1人で全部殲滅しちゃうなんてさぁ」
「ああ……それで俺達は生き残れた」
「今回の件で慧ちゃん。時の人になるね」
「ああ……間違いなくな。遠い存在になる……俺が憧れた人。シバさんみたいに遠い存在にな」
………その数年後。俺は日本帝国軍から退役し、慧の前から姿を消した。千機 慧との圧倒的な力の差を2ヶ月もの間、間近で見せられ。自分の中の軍人としてのプライドや自信を失くしてしまったからだ。
◇
「……あれから数年。俺は自分自身を追い込み、塞ぎ込みながらも強くなった。昔の俺とは違うし、慧。お前と一対一なら俺の方が強…」
「わぁ!! シン君。久し振りだね。今でどこに居たの? 軍からいきなり退役して、私、びっくりしたんだけど」
ニギッ!
「お、お前。俺が話している間に間合いを詰めて、両手を握って拘束するとは」
「? 拘束? 何言ってるの?」
……数年振りの千機 慧。メチャクチャ可愛くなってやがる。艶やかな黒髪。少し大人び始めた整った綺麗な顔。胸も5年前前とは比べられない程に成長している。そして、凄まじく強い女の子だ……だが、今は魔核を奪い合う敵同士。戦わなければならない。
「くっ! いつまでも俺の手を握っている。千機 慧。しょ、勝負しろ。魔核をかけた真剣勝負をな!」
「……勝負? よく分からないけど。シン君も、アルク君みたいに敵対するって事? なら仕方ないね。《水晶剣》……生配信の邪魔をするなら戦うしかない」
慧はそう告げると藍色の双剣を持っていたカバンから取り出し、俺と対峙した。




