第1話 かつて帝国最強は配信者へ
『1999年の7月に空から恐怖の大王が降ってくる』
普通ならこんなふざけた予言。誰も信じず、あー、あの大予言は外れて良かったね。となる筈だった。だけどこの予言は的中した。
空から《魔核》と呼ばれる魔力の隕石が突然、中国、フランス、ロシア、英国、米国の主要都市へと飛来して、各国に甚大の被害をもたらしたとか。そして、世界のあらゆるバランスは失われ、その後は世界各地で絶え間ない悲惨な戦争が繰り広げられたとか。
日本の帝都での士官学校時代の授業内容を思い出しながら、私は揺れる車で戦場に向かっている。
───ノストラダムスの大予言から101年後の世界……《リライト》と呼ばれるようになったこの世界は、魔核と呼ばれる新たなエネルギー資源の奪い合いにより崩壊し、その魔核の超有効性エネルギーを手に入れた国々は、機械、武器、科学、医療っと、あらゆる技術を進歩させた。
そして、生き残った国々の国民は、魔核により発展した技術を使い悠々自適な生活を送っている。
そんな自分達を人類の勝利者と名乗り。魔核飛来戦争に負けた国の人々に武器を持たせ、中国、フランス、ロシア、英国、米国にかつてあった都市へと放ち。デスゲーム……殺し合いをさせ、それを全世界に生中継させているのだった。
そして、私、千機 慧は人類の勝利者側だった。それが何故か今は、言われもない罪を侵したという事で島流しにされ旧イギリス国のロンドン戦地へと向かわせられている。
◇
《旧イギリス国 ロンドン跡地 アド》
「……ザッ…ザッ…こちら。千機 慧……そちら側に何の問題もなければ、疑似魔核配信を開始したい』」
「……ザッ……ザッザッ……了解。お互い全力の配信を尽くそう……そして、貴女の様な帝国最強と合間見える事を嬉しく思う……ザッ…ザッ……バチッ……」
「帝国最強……それは数日前までの話。そして、今は帝国の魔核を盗んだとか、意味の分からない理由で軍に捕まって島流しにあった大罪人」
〖ハ~イ! 慧様。笑顔。笑顔ですよ! そんなふてくされてるお顔で全世界に生中継なんてしたら大炎上しちゃいますからね~〗
私の専属A.I.《人口知能》のアイが液晶デバイスから飛び出してそう告げる。
「アイ……分かってるよ。配信が始まれば直ぐに切り替えるから。心配しないで」
〖慧様は帝国が誇る最強の軍人にして、人気配信者なんですから外面は気をつけて下さいね~、ではでは戦場生配信始まり、始まりです~〗
アイのその言葉を切っ掛けに私は配信者として気持ちを切り替える。
「相変わらずの毒舌A.I.……んー……アー、テス、テス、帝国の元最強! こちら千機 慧。今日も命懸けで戦場から生配信しま~す! 今日も厳しくも楽しく疑似魔核配信を盛り上げたいと思います~」
〖ウヒョ~(゜∀゜) 俺達の慧様の配信始まった〗
〖可愛い~! 新しい慧様グッズ絶対に買います!〗
〖美少女配信者来た~!!〗
なんてコメントが私の液晶デバイスには映る。
「応援ありがとう。登録者の皆~! 今日も元気に敵を昏睡させちゃいます~」
甘ったる声で私は何を言っているだろうか? 羞恥心のあまり自分で自分を殺したくなる。
……でも仕方ない。仕方がない事なんだ。これも私が自由を得る為に化せられた試練なんだ。
帝国側が私に化した釈放ノルマ、登録者数1000万人を得る為。
そう。これは私が自由を得る為の戦場配信なんだから。
新しく新作を投稿しました。今回は最強系配信者です。
よろしくお願いいたします。
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