表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/55

旅に込める思い

なぜだろう。主人公であるロゼットのキャラデザが全くもって思いつかない。人生とは悲しいものですね。

 ロゼットの家で最大級の修羅場が起こっていた時、リシュアは家でくつろいでいた。自分で焼いたカップケーキを食べようとすると、ポストに何かが投函された音がした。不思議に思ってポストを開けてみると、ロゼットからリシュアへの手紙が入っていた。


《親愛なるリシュアへ

 元気にしていますか?一悶着ありましたが、僕も貴方の旅に同行できることになりました。今回はその報告をするために手紙を出させていただいた次第です。僕は貴方に合わせますので、旅に出る際の集合場所と集合時間を教えていただけませんか?

 貴方からの返事をお待ちしています。

ロゼットより》


リシュアがまず思ったことは、返事が来るのが早すぎるということだ。別に一週間後とかでも一向に構わなかったのだが、旅の話をしてから僅か二日で返事が来た。また、「一悶着あった」と書いてあるが、何があったというのだ。まぁそこはあまり触れないでおくとしよう。

 リシュアはすぐに手紙の返事を書き始めた。旅の第一の目的地はここからだと歩いて約一週間かかるので、一人だと少し心細かった。だから、ロゼットが一緒に来れると聞いてかなり嬉しかったのである。

「早くお返事来るといいな♩」

何気に、この時はリシュアが初めて友達に手紙を書いて出した瞬間であった。


 その時、ロゼットは自分の部屋で台所からパクってきたグミを食べていた。それもチョコレートで包まれたものを。ちなみにこれは母が自身のヘソクリで密かに買っていたものだ。

「美味しいな、これ。こんなに美味しいのに独り占めしようとするなんて…」

すると、何かが窓に当たる音が聞こえた。あまりにもうるさいので、ロゼットが気になって窓の方に目をやったその瞬間だ。けたたましく鳴く鳩がロゼットの部屋の窓を勢いよく突き破って入ってきた。その鳩は部屋のカーペットに糞を落とした。挙句の果てにはロゼットの顔をめがけ、咥えている手紙をヨダレとともにペッと吐きつけた。そして、机の上のグミを食べ尽くして去っていった。

「えーっと、取り敢えず手紙読もうかな…」


《親愛なるロゼットへ

 こんにちは、お手紙ありがとうございます。貴方が旅に同行できると聞いてとても嬉しいです!まずは私の故郷であるルペチオ地方に行こうと思っています。集合場所はアステム王国の隣町であるミゲルの街で宜しいでしょうか?私は今ミゲルの街にいます。都合が悪ければ私達の母校の近くのカフェまで行く予定です。

 お返事待っています、お元気で。

リシュアより》


それはリシュアからの手紙だった。アステム王国からミゲルの街に行くための地図も同封されている。それを読んで、ロゼットもまた返事が早すぎることを真っ先に不思議に思った。「お兄ちゃん!?今大きな音がしなかったって…えぇぇぇぇ!」

「シャルまで大声だしてどうしたの!?…えぇぇ、何これ。アンタ、これ私のグミじゃないの!何勝手に全部食べてるのよ!」

鳩が大きな音を出したので、シャルロットも母も驚いて部屋にやってきてしまった。それと同時に、ロゼットが母親のグミを食べていたことまでバレる事となった。

 その後、窓の修理代と母のお詫びのグミ代、汚れたカーペットの弁償代で、ロゼットの貯金は旅に出る前に崩される羽目になったのだった。なんと哀れなのだろうか、見ず知らずの鳩の尻拭いをさせられているこの少年は。なんと滑稽なのだろうか。


 リシュアからの手紙を受け取った後、ロゼットはすぐに旅のための荷造りを始めた。この旅が何日続くかわからないので、食料や財布、衣服などの最低限のものだけ持って荷物を軽くすることにした。荷造りの真っ最中、ロゼットはラヴィに呼び出された。

「ラヴィ、大事な話があるって言ってたけど、何かあったの?」

「別に大したことではないわ。私も少し旅に出ようと思うの。」

かなり重要なことだが、ラヴィーネはさらりと言ってのけた。なんでも、ロゼットとリシュアの旅に同行するということではなく、一人旅をするのだそうだ。いつまでもお世話になるわけにはいかないし、自分なりに世界を見て、魔物から人々を守っていこうと思っている、彼女はそう話していた。

 ラヴィーネは事前に荷造りを済ませていたらしく、ラヴィーネはロゼットにそれを話した後少し後にロゼットの家を出た。ロゼットにとって、ラヴィーネに大した別れの言葉を言えないまま別れてしまったことは、少し悔やまれることだ。

 そして今日、ロゼットはついに旅に出る。ロゼットを見送るため、シャルロットと母が玄関前まで出てくれた。

「お兄ちゃん、怪我しないようにね。家の畑をもっと大きくして待ってるよ。」

「ロゼ、気をつけてね。必ず帰ってくるのよ。」

二人共口では心配しているようだが、心配そうな顔はしていなかった。どうしてか、それは自分のたった一人の兄を、息子を心から信頼しているからに他ならない。二人共、ロゼットのことをよく理解しているし、無茶なことを勢いで言うような人ではない。だから、必ず帰ってくると信じているのだ。

「じゃあ、行ってくるねー!」

ロゼットは地図を片手に、ミゲルの街に向けて歩き出した。ロゼットにとって、人生初の冒険の幕開けである。そしてこれが、後に大きな使命と願いを背負った旅になることは、今のロゼットには知る由もない。


家を出て十数分後のことだ。まだミゲルの街は見えてこない。それほどアウトドアな思考でもなかったため、やはり街と街の境目が長く感じてしまう。しかし、歩みを止めずロゼットはひたすら歩いていた。諦めずに、一生懸命に。

「うーん、地図が読めない…どこ、ここ…」

…前言を撤回しよう。やはりロゼットに今回の長旅は無理だ。そうして、極度の方向音痴という何とも間抜けな理由で、普通歩いて1時間位かかる街に到着するのに、約半日を要した。ロゼットよ!リシュアをどれだけ待たせるつもりだ!

私姉妹共々方向音痴なもので、Googleマップあっても普通に詰みますからね。困ったものです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ